2006年05月15日

ミスター円の食文化外交

イギリスが大英帝国として世界に君臨できたのは、産業革命のおかげである…もちろん間違いではありませんが、産業革命とともに「食」の市場を制したことが大英帝国覇権の基盤であったこともまた重要です。先進国は必ずしも工業一辺倒ではありません。アメリカ・フランスは、今も農業大国であります。

大航海時代、まず世界に打って出たのはスペイン・ポルトガルでした。そのスペイン「無敵艦隊」を打ち破り、代わって七つの海を制したのがイギリスです。
しかし、イギリスの覇権はスペインとの海戦の勝利だけでもたらされたのではありません。スペイン・ポルトガルが現地人の殺戮を伴う収奪的な植民地経営を行ったのに対し、イギリスは綿花や羊毛や小麦などの産業の育成に成功しました。
イギリス植民地から独立したアメリカは、農業大国として世界経済に頭角を現します。

食を資源として世界市場を制したイギリス・アメリカに対し、食を文化として育てた国がフランスで、シラク大統領はイギリス人を指して「食い物の不味い国の人間は信用できない」とまで言いました。榊原は大蔵省(現・財務省)時代、フランスの食文化外交に倣い、来日した各国の蔵相をもてなすのに工夫したそうです。
フランスを超える食文化大国として紹介されるのが、中国です。食材の多様性に加え、医薬同源の思想を榊原は評価しています。

食の近代化・グローバル化は、食卓に世界中の多彩な食材をもたらす一方、ファストフード産業の世界侵略やBSE(狂牛病)の脅威を招きました。スローフード運動・世界的な健康志向の高まりを踏まえ、本書は日本食礼賛で締めくくられます。
ミスター円」の書く本なので、アグリビジネスの生々しい世界が語られるのかと思っていました…。
(5月14日読了)


posted by 【電脳呆人】不純総合研究所 at 02:43| Comment(0) | TrackBack(3) | 政治・経済交遊会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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