2006年07月30日

三種の神器

高田崇史の『QED』シリーズ第11弾。
今回迫る歴史の謎は、日本の秘宝中の秘法・皇位継承の証である三種の神器です。


QED神器封殺



高田 崇史著



舞台は和歌山県。前作 QED-ventus-熊野の残照で訪れた地です。
桑原崇(通称タタル)と棚旗奈々は、学校薬剤師会の旅行で一緒になった神山禮子(みわやま・れいこ)が体調を崩したため、和歌山滞在を延長します。

そのころ和歌山では、病院オーナーが自宅マンションで惨殺されるという事件が発生。被害者・熱田光明は、自らが蒐集していた日本刀で頭と右手首が切断されていました。
この事件を取材している奈々の妹・沙織と、タタルの同級生・小松崎も、和歌山入りします。
取材によると、殺害された熱田は日本刀をコレクションするだけでなく、草薙剣のような古代の刀剣を復元を試みていたようです。そこからタタルによる「三種の神器」談義が始まります。

タタルによれば、三種の神器とは…
八咫鏡(やたのかがみ)
鏡は太陽であり、蛇の眼またはとぐろを巻いた蛇の姿でもある。
祭祀・宗教のシンボルで、天照大神を象徴している。
咫とは古代の単位で16〜18センチ。八咫鏡は円周が140センチ以上(直径なら40センチ以上)もある大鏡だと思われる。
天叢雲剣(あめのむらくものつるぎ)
別名・草薙剣。剣の形状は、蛇の姿そのものである。
剣はもちろん武力を象徴し、素戔嗚尊を表している。
八尺瓊勾玉(やさかにのまがたま)
瓊とは、赤色の美しい玉のことで、勾玉の形状は胎児を象ったもの。
豊穣・医療の神、大国主命を意味する。

また、これらの神宝は被征服民から奪い取ったものです。
神社には禁足地というものがありますが、禁足とは「立入禁止」ではなく「外出禁止」を意味します。つまり禁足地には、征服者側から見れば出てきてほしくない神様、祟り神が祀られているのです。
伊弊諾尊は、日本の国生みの神様であるにもかかわらず皇室には祀られておらず、日本最古の怨霊なんだとか…

旅の途中、禮子の幼なじみで熱田家と親交のある御名形史紋(みなかた・しもん)と出会います。彼は毒草師を名乗る、タタルに負けず劣らずマニアックな青年です。タタルと史紋は、周囲が着いて行けない神社談義を繰り広げます。

病院オーナー殺害事件が解決しないうちに、今度は病院の事務長が毒殺される事件が発生。しかし、毒物を混入した形跡は全く見つからず…これらの事件の犯人については、ミステリなのでここでは書きません。
本書の結末は、袋とじになっています。
ただし、殺人事件の解決編ではありません。三種の神器と神社をめぐる、不思議な法則が書かれています。
読んでからのお楽しみ!

(7月29日読了)


posted by 【電脳呆人】不純総合研究所 at 18:16| Comment(9) | TrackBack(0) | 文学・小説交遊会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年07月17日

生命の神秘

1994年、タイトルなし、横書き、写真入りという不思議な作品が芥川賞候補となりました。『平成3年5月2日,後天性免疫不全症候群にて急逝された明寺伸彦博士,並びに,』です(『平成3年…』はタイトルではなく、実は作品冒頭の一文であります)。
内容はAIDSについてではなく、北海道に棲むハネネズミという架空の生物の研究者たちの物語なのですが、研究レポートのような体裁で、不思議なリアリティがありました。
作者・石黒達昌は、ガン研究に取り組む現役の医師でもあります。

冬至草



石黒 達昌著



本書には、医学や生命に題材を採った6篇が収められています。

『希望ホヤ』
弁護士のダンは、娘のリンダが神経芽細胞腫という難病に冒され、余命いくばくもないことを知らされました。
リンダは、絵本で読んだ「希望の浜」へ行きたいと言い出ます。希望の浜のレストランには「希望ホヤ」という不思議なメニューがあり、ダンはこの生物に娘の命を救うヒントがあると直感します…

『冬至草』
放射能を帯びた新種の植物・冬至草。しかも人間の血を養分として発光するという、異様な生態が明らかに…

『月の…』
天体望遠鏡で月を見ていた「私」は、落雷のような閃光を感じ、以来、右手の上に月が見えるようになりました。
夜空の月は「私」の目には見えず、そのかわり誰にも見えない右手の月があります。「私」は、おかしくなってしまったのか…

『デ・ムーア事件』
「火の玉を見た」と訴える患者が、ほどなくガンで亡くなるという不思議な症例。
その背後には、ジェーン・デ・ムーアという名の技師が実験室で生み出したウイルスが関与しているらしい…

『目をとじるまでの短い間』
終末医療の現場を描いた、石黒達昌3度目の芥川賞候補作。

『アブサルティに関する評伝』
科学論文捏造問題をテーマにした作品。

いずれも不思議な架空の生物が登場したり、医療の現場が舞台になっていたりと、理科系テイストに溢れています。
私のお気に入りは『希望ホヤ』と『デ・ムーア事件』です。

(7月17日読了)
posted by 【電脳呆人】不純総合研究所 at 18:35| Comment(0) | TrackBack(0) | 文学・小説交遊会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年07月10日

女帝・かぐや姫

スラリとした長身の優美な仏様、国宝・法隆寺百済観音像
図書館で「百済観音のモデルは誰なのか」というタイトルがふと目に入り、手にとってみました。
また新手の聖徳太子論が出たのか…と。

カラーの口絵を開いてみると、百済観音の写真に続いて、有名な聖徳太子画像、そしてなぜか竹取物語絵巻が…?

本書では百済観音のモデル候補として、5人の人物の名が挙げられています。
推古天皇厩戸皇子(聖徳太子)、竹田皇子(推古天皇の子)、斉明天皇天智天皇です。

そして百済観音像の特徴として、普通の仏像は光輪が後頭部か背中に直接取り付けられているのに対し、背後の支柱に取り付けられていることを指摘しています。
しかも、この支柱が竹を模していることから、光り輝く竹=竹取物語と関連があるというのです。なんとも唐突な…
さらに竹取物語の作者は紫式部であるとの、大胆仮説が飛び出します。
紫式部の源氏物語には、竹取物語を「物語の出で来はじめの祖」と評した一文があり、一般には竹取物語が源氏物語に先行する文学作品であるとされているのですが…

竹取物語では、かぐや姫の前に五人の求婚者が現れます。五人の名前は白鳳時代に実在した人物に由来するといわれています。

石作皇子=丹比嶋
車持皇子=藤原不比等
阿倍御主人=阿倍御主人(全く同姓同名!)
大伴御行=大伴御行(これまた同姓同名!)
石上麿足=石上(物部)麻呂

倉西説では、竹取物語の登場人物の描き方に彼ら個人のみならず、それぞれ皇族・藤原氏・阿倍氏・大伴氏・物部氏の氏族全体の来歴や事績が隠されているというのです。その隠された歴史とは、大和朝廷における仏教受容史でもあると。
さらに、かぐや姫にも実在のモデルがいたといいます。それはなんと持統天皇です。

春過ぎて 夏来にけらし白妙の 衣ほすてふ 天の香具山

有名な小倉百人一首が思い出されます。なんとも出来すぎ!

さて、肝心の百済観音のモデルとは…?
聖徳太子ではありません。それは百済救済のための白村江の戦いで知られる、中大兄皇子こと天智天皇でした(ちなみに持統天皇の父であります)。
それよりも、古代日本の仏教受容をめぐる争いの方が、複雑ですが楽しく読めました。
特に物部氏の奉じる神道が、男性をシャーマンとする出雲神道であるという説が面白いです。

(7月9日読了)
posted by 【電脳呆人】不純総合研究所 at 20:20| Comment(35) | TrackBack(0) | 歴史・民俗交遊会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

まだ何かあるのだろうか…

東京の地下には、知られざる空間が広がっている。
地下鉄網は戦前すでに整備されており、現在の地下鉄や地下施設は戦前からあるものを再利用しただけである。その事実をなぜか政府や都は、ひた隠しにする…
秋庭俊の帝都東京シリーズ、またまた出てしまいました。



池袋サンシャインシティの地下駐車場のさらに下には、公式には存在しないことになっている、豊島変電所が存在する。
高輪の高野山東京別院地下にも、高輪変電所が存在する。こちらは別に秘密ではないが、お寺の地下をどうやって掘ったのか…?
豊島区役所の冷暖房は、500メートル離れたサンシャインシティの冷暖房施設でまかなっている。わざわざ500メートルもの洞道を掘ったのか、もともとトンネルがあったのか…?
新宿プリンスホテルの地下駐車場は、アドホック地下駐車場とつながっている。
…などなど、奇妙な帝都・東京の地下事情。
複雑怪奇な東京地下鉄誕生の歴史を、解き明かしてゆくのですが、その経緯には軍部の思惑が絡んでいるというものです。
最新版の結論は、東京は五角形の要塞都市である!

秋庭は国民の税金が、公に出来ないものに使われていることを批判しています。
でも、私はむしろ安心しました。おそらく都心の地下には、有事の際に要人がスムーズに移動するための道路があるのでしょう(あって欲しい)。万が一のテロに備えるには、それを明かすことはできません。日本が普通の国ならば。

(7月10日読了)





posted by 【電脳呆人】不純総合研究所 at 19:14| Comment(4) | TrackBack(1) | 社会・思想交遊会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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