2006年10月29日

格差社会の処方箋

格差社会と呼ばれるようになった、わが日本。
所得配分の不平等の度合いを示すジニ係数が上昇したと話題になり、最近では、働けども豊かになれないワーキング・プアなんて言葉も目にするようになりました。
所得格差が、より高収入を得る者が増えた上離れに起因するのなら問題はありません。しかし、貧困層の増加=底抜けが起きているなら、社会的影響は深刻です。
フリーター・ニートに代表される低収入の若者、経済苦を理由とする自殺者の増加、離別母子家庭の増大…底抜けは、確かに起きているのです。


新平等社会



山田 昌弘著



現代の格差問題が難しいのは、自由で民主的な社会において「望ましい」とされていることから格差が生じているからです。
経済活動、職業選択、家族形態の自由化。
IT化、グローバル化、知識産業化によってもたらされたニューエコノミー
ニューエコノミーにおいて、仕事は二極分化されます。創造力・想像力や知識・美的センスが要求される、少数の仕事。そしてIT化・オートメーション化で定型化された、大量の仕事。後者はマニュアル通りにできる仕事なので、高度な熟練の必要がなく、派遣労働に置き換えることが可能です。
では、格差はニューエコノミーの進展の帰結として放置しても良いのでしょうか?

山田は、格差問題は環境問題と同じだと言います。どちらも市場原理における外部不経済と捉えるのです。
経済活動を市場原理だけに任せれば、資源の枯渇や廃棄物の増加という外部不経済が生じ、持続可能な発展が阻害されます。同じように、市場原理が格差を生み出すのは仕方がないが、放置すれば社会不安が増大したり人々の働く意欲が低下したりして、社会の持続可能性が損なわれます。

本書には、数々の格差社会の処方箋が提示されています。
累進課税を過去の水準に戻すのも、そのひとつです。累進税率が高いと、高額所得者が海外に逃げ出すとの反論がありますが、ならば文部科学省の出番だと山田は言います。
高額所得者が儲かるのは、日本国内に優れた労働者とセンス良くお金を使う消費者がいるおかげ。そして日本に生まれて、良い教育を受けられたおかげです。
税金逃れのために海外へ移住するのは、日本社会に対するを恩を忘れています。高額所得者に、日本人としての教育が必要であると。
他にも、寄付を促進するための税制改正、年金マイレージ制度、地域で環境保護や福祉の仕事に従事する共生事業の創設などが提案されています。

後半では、日本社会に格差がどのように現れているのか(仕事格差・結婚格差・家族格差・教育格差)、具体的に示されています。

(10月29日読了)

【不純文學交遊録・過去記事】
希望があるなら、まだいい…


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2006年10月22日

日本は核武装せよ

世界を震撼させた、10月9日の北朝鮮による地下核実験発表。
北朝鮮への制裁をめぐって、国際社会は現在も活発な論議が続いています。
国内では、中川昭一・自民党政調会長の核武装発言(10月20日)が、大きな反響を呼びました。

「日本核武装」の論点



中西 輝政編著 / 日下 公人〔ほか著〕



本書の序文が書かれたのは本年7月。
現在に至る状況を予見していたかのような、出版タイミング。
論者は、中西輝政・日下公人・平松茂雄・櫻井よしこ・西岡力・伊藤貫・兵頭二十八です。

中国は既に米国の主要都市を核ミサイルの射程内に捉えており、北朝鮮のミサイルも米国本土に届く能力を有している可能性が高い。米国は自国の安全を軽視してまで、有事に日本を守ってくれるはずはない。もはや「アメリカの核の傘」は無効である…これが論者に共通した認識です。

中国・ロシアそして北朝鮮。日本は核保有国に、ぐるりと取り囲まれています。周辺国が「言うことを聞かないと核ミサイルを落とすぞ」とブラフをかけるだけで、核の抑止力という対抗カードを持たない日本は、恫喝に屈する他ありません。
鉄砲玉で鉄砲玉を撃ち落すようなMD(ミサイル防衛)システムに、核ミサイルの脅威は防げません。効果がないくせに極めて高価です。
さらに中国の積極的な宇宙開発は、宇宙空間でアメリカの人工衛星を攻撃し、MDシステムを無力化することを目論んでいます。

世界で唯一の被爆国・日本。
瞬時かつ無差別に大量の貴い人命を奪い、生き残った被爆者にも重い後遺症を残す核兵器は、廃絶されてしかるべきです。
しかしながら、核の脅威を防ぎ得るのは核の抑止力しかないのが、残念ながら今の世界の実状です。核ミサイルを100%迎撃できる、レーザー兵器でも実用化されれば別ですが。
また通常兵器を増強したり、MDシステムを導入するよりも、核ミサイルを持つことの方が低コストであると思われます。
日本の核武装に対するアメリカの誤解を防ぐには、核のボタンをアメリカと共有するという選択肢もあるでしょう。
日本には技術力も資源(プルトニウム)もあります。一番の問題はスパイ対策でしょうね。

以下、管理人のひとりごと。
日本は過去のあやまちで、周辺諸国に多大なる損害をもたらしました。
日本は絶対に戦争はしません(私には安倍晋三首相の「美しい国」というフレーズが「戦争ができる国」に聞こえてしまいます…)。
軍隊も持ちません(国境の警備とテロに対処するために最低限必要な自衛力と、国際貢献部隊を持つことは可)。
日本人は民主的で平和を愛する国民です。
しかし日本の領土(領海・領空)を侵す国の頭上には、いつでも核ミサイルを落とすことができますよ…そんな日本に私は棲みたい。

(10月22日読了)

【不純文學交遊録・過去記事】緊急事態!
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2006年10月20日

石塔は語る

タイトルから、非常に不純な妄想をしてしまいました(笑)
石工の職能集団…これはもしや、日本のフリーメーソンか?



平安時代末の源平の合戦で、大仏でおなじみ東大寺は、平重衡の攻撃で焼失しました。
東大寺復興の際、中国・宋から招かれた石工に伊行末(い・ぎょうまつ)がいます。彼の子孫は大和を中心に優れた石造物を残し、その一門は伊派と呼ばれました。また、その分派は鎌倉や箱根で活躍し、こちらは大蔵派と呼ばれました。
そして彼らの活躍した期間は、鎌倉時代のわずか百年ほどの間で、その後は彼らを超える名工は現れていないとのことです。

というわけで、私が妄想したような内容の本ではありません。テーマが石だけに、おカタい内容です(笑)

私には中世寺院の石塔のことなど全く判りませんし、関心もありませんが、歴史的・宗教的背景については興味深く読めました。
より関心をお持ちの方は、越天楽さんを訪れることをお薦めいたします。

本書を含む 日本史リブレットシリーズは、100ページほどのコンパクトな冊子です。しかも古代から現代にいたるまで様々なテーマを揃えているようですので、他の本も手にとってみたいと思います。

(10月19日読了)
posted by 【電脳呆人】不純総合研究所 at 22:38| Comment(0) | TrackBack(0) | 歴史・民俗交遊会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年10月15日

スーパースターBest20

久しぶりの宇宙ネタです。
このたび交遊したのは『ミステリアスな宇宙』…なんとまあ、ありきたりなタイトル(苦笑)。



万人向けの初歩的宇宙入門書だろうと思って目次を見ると、オリオン星雲おうし座分子雲…といったユニークな天体の名前がズラリ。意外と面白そう。
この本は、世界中の天文学者が注目する代表的な天体20を解説したものです。文字通り、宇宙のスーパースター達ですね。

まずはオリオン星雲から。星雲の種類について、いきなり結構専門的な用語が出てきます。星雲(そして星団)のことをMナントカという番号で呼ぶことをご存知の方も多いと思いますが、このMはメシエの頭文字です。
メシエというのは人名ですが、ここでは一切解説なし。メシエについて語られるのは第17章かに星雲の項です。ちょっと不親切ではないですか?
ちなみにM1はかに星雲で、ウルトラマンの故郷M78星雲はオリオン座にあります。

20の天体の中には、私たちにとって非常に身近な太陽火星もあります。これらを最初に持ってきた方が、掴みとしてはいいと思うんですが…
最後の天体が宇宙背景放射というのは良いのですが、そこまで話を持っていく順番に難あり。

構成に文句を付けましたが、内容は良い本です。
例えば太陽についての章。太陽が一秒間に放出するエネルギーは、現在世界中で発電されている電気エネルギーの7000万年分(!)太陽が地球に与える影響がいかに大きいか、すごくよくわかる解説ですね。

宇宙は、新たな発見や事実の解明があるたびに、また新たな謎が生まれるのだそうです。ますます興味が尽きません。
あとがきでは、冥王星が惑星の定義から外れた、プラハの国際天文連合総会についても触れられています。

(10月15日読了)

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2006年10月09日

邪魅ハ魑魅乃類なり 妖邪の悪気なるべし

数々の難読漢字。
辞書のような、あの厚み。
読書の秋にふさわしい一冊…とは言っても、わが不純文學交遊界に読書の秋なんて言葉は存在しません。読書の365日です。実際には毎日は読んでいませんが(笑)


邪魅の雫



京極 夏彦著





邪魅の雫スペシャル映像

京極夏彦著作一覧

この先、ネタバレはございません
ただ、読了するまで一切の予備知識を入れたくない方は、ご注意ください。
続きを読む
ラベル:京極夏彦
posted by 【電脳呆人】不純総合研究所 at 22:25| Comment(0) | TrackBack(0) | 文学・小説交遊会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年10月01日

ダーウィンが来た!

生命の神秘に魅せられる人なら興味をもたずにいられない人物、進化論の提唱者チャールズ・ダーウィン



新書ながら、鮮やかなカラー写真の表紙が目を引きます。
ダーウィンの生涯をたどる旅、案内人は生物学者の長谷川眞理子です。
19世紀のイギリス。ダーウィンの生家は、イギリス上流社会のなかでも裕福でした。
ダーウィンは、生家の財産で一生働かずに研究を続けることができるか計算していました。
研究には自由な時間も必要。ダーウィンは結婚すべきか否か、その利点と欠点を書き連ねた表を作っていたそうです。
ちなみにダーウィンの妻・エマは、あのショパンから直接ピアノのレッスンを受けていました。
19世紀イギリス貴族の、優雅な生活が伝わってきます。

博物学は貴族の学問。
大英博物館の収蔵品は、植民地からの略奪品とも言えます。当時はまだ、奴隷制度もありました。
しかし、ダーウィン一家は自由思想の持ち主であり、彼自身奴隷制度に反対で、奴隷たちとも対等に付き合っていました。
人間と他の生物とを連続したものと見る進化論は、彼が育った自由な思想的風土から生まれたものだったのです。

ダーウィンといえば、やはり進化論の着想を得た軍艦ビーグル号での航海が思い出されます。旅のハイライトは、なんといってもガラパゴス諸島
巨大なゾウガメウミイグアナリクイグアナ、多種多様なクチバシをもったフィンチが有名です。9月24日放送のNHKの番組「ダーウィンが来た!」では、カツオドリの血を吸うバンパイア・フィンチが登場して、びっくりしました。
カラー新書ですから、ガラパゴスの珍しい動物たちの数々の写真を期待…しましたが、図鑑ではありませんので、動物たちの写真はそれほど多くはありません。
まあ、ビーグル号の航海はダーウィン73年の生涯のうち、5年ですから…

(9月26日読了)


posted by 【電脳呆人】不純総合研究所 at 14:46| Comment(0) | TrackBack(0) | 自然科学交遊会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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