2006年11月20日

よ〜く考えよう、石油は大事だよ♪

最近一番気になったニュース…
それは11月4、5日にアフリカ48ヶ国の首脳が北京に大集結した中国・アフリカ協力フォーラム(中国・アフリカサミット)です。
拡大を続ける中国経済。それに伴い急増する石油などのエネルギー消費。中国は着実に資源購入先の多角化を目指しています。
このままでは地球は中国に食い尽くされてしまう…というのは考え過ぎでしょうが、同じく資源輸入大国である日本に先を見すえた戦略はあるのかと、非常に憂慮させられたニュースでした。

現代文明は石油に大きく依存していますが、産油国の多くが政情不安なのが現状です。



世界の石油貯蔵庫、中東ペルシア湾。
核開発問題でアメリカの次なる標的とされているイランは、中東ではサウジアラビアに次ぐ産油国ですが、なんとガソリンは輸入に頼っています。近代文明を否定したイスラム革命と、イラン・イラク戦争での製油所空爆被害で、石油精製能力は停滞したままです。
未だ内戦状態のイラク。フセイン政権の崩壊で、抑圧されていたクルド人が台頭しました。しかしクルド人の独立志向は、国内にクルド民族問題を抱えるトルコに不安をもたらします。
世界一の産油国・サウジアラビアは、国民の王政への信頼維持に苦心しています。9.11テロ以降、アメリカの「サウジ離れ」も顕著になってきました(代わって中国が接近しているようです)。
経済基盤を石油に依存する中東湾岸諸国ですが、貿易や金融など石油以外の産業振興に力を入れている、UAE(アラブ首長国連邦)のドバイのような国もあります。

中東情勢が不安定なため、注目されるのがアフリカ諸国です。
かつてテロ支援国家と名指しされたリビアは今や親欧米路線を強め、アルジェリア、ナイジェリアも不安定要因はありますが欧米諸国の関心を集めています。
最初に述べたように、アフリカとの関係強化に熱心なのが中国です。中国は欧米諸国とは違い、外交になんら条件をつけません。ダルフール紛争での大虐殺を非難されるスーダンや圧政国家と悪評高いジンバブエなどから資源を輸入し、経済支援をしています。
中国の進出が、アフリカの新たな火種とならねば良いのですが…

もうひとつ忘れてはならないのが、中央アジアのイスラム諸国です。カザフスタンは豊富な資源を背景に、中央アジアの大国となりつつあります。他にもアゼルバイジャン・ウズベキスタンなどの有力な産油国がありますが、中央アジア諸国の懸念は、一党独裁国家が多く民衆の不満がイスラム過激派の運動を誘発することでしょう。
また本書には、ロシアの重要性も説かれています。ロシアの石油を日本や中国へ供給するパイプライン網に北朝鮮も加えることで、東アジアの安定度が高まるのだと言います。

石油をキーワードに世界を見れば、世界の火種がどこにあるのかが見えてきます(イスラム世界が主題の本なので、中南米にはほとんど触れられていませんが…)。
世界地図を眺めながら読みましょう。

(11月20日読了)


管理人のひとりごと


posted by 【電脳呆人】不純総合研究所 at 22:21| Comment(10) | TrackBack(0) | 政治・経済交遊会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年11月16日

純ちゃんの不純な素顔

2006年9月、自由民主党総裁任期満了とともに内閣総理大臣を退任した、小泉純一郎氏。
自民党総裁就任時に「自民党をぶっ壊す」と宣言、自らの方針に反対する者を抵抗勢力と呼び、郵政民営化法案に反対した議員の選挙区に「刺客」を送り込むなど、従来にない政治手法で日本政治史に大きなインパクトを残しました。

小泉純一郎とはいかなる人物で、小泉政権とは一体なんだったのか?
小泉氏と同じ1961年に慶應義塾大学経済学部に入学し、クラスは同じK組だったという正真正銘の同級生であり、しかも政治家としても非常に近い位置にいた人物がいます。
経済人類学者で元衆議院議員の栗本慎一郎氏です。


(↑なんとこの本、企画・構成はキツネ目の男こと宮崎学氏です)

大学時代の小泉氏は、とにかく存在感の薄い人間だったそうです。
小泉氏の言動は、短い単語を繰り出すワンフレーズ・ポリティクスなんて呼ばれましたが、あれは故意にやっているのではなく、そもそも語彙が少ない、コミュニケーション能力に欠陥があると栗本氏は評しています。
また、小泉氏には周囲の人間を「敵か味方か」で分類する傾向が強いようで、それを端的に表しているのが「抵抗勢力」や「刺客」という言葉です。
前半は小泉氏個人の暴露本的な内容となっています。詳細は割愛しますので、興味のある方は本書を手にとってみてください。

私が興味を持ったのは、小泉政権の陰のご主人様「国際資金資本」についての章です。
国際資金資本とは栗本氏の造語で、なぜ「国際金融資本」と呼ばないかというと、金融業を営まず、ただ単に大量の資金を持った勢力だからです。具体的にはロスチャイルド家とつながりの深いシフをはじめとするユダヤ系資本を指しています。
端的に言うと、小泉政権とは日本経済の豊かさの象徴であった大多数の中流層を搾取し、国際資金資本勢力に売り払ったのだと指摘します。
なんだか陰謀論めいていますが、今後の書物との交遊のなかで検証する機会があることでしょう。

今後の政局のキーパーソンについて。
栗本氏が最も注目するのが福田康夫氏です。福田氏がこのたびの自民党総裁選に出馬しなかったのは、深い思慮があってのことと見ています。そして、強い信念と国家観を持つと評する小沢一郎氏です。
さらに栗本氏は、国際資金資本勢力をバックにした小泉再登板構想がありうると見ています。

栗本氏の政局を占うキーワードは「福田氏VS国際資金資本勢力」です。

(11月14日読了)
posted by 【電脳呆人】不純総合研究所 at 00:35| Comment(2) | TrackBack(1) | 政治・経済交遊会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年11月13日

ヴィンチ村のレオナルドさんは世界を操る陰謀家?

万能の天才と称えられる芸術家にして科学者、レオナルド・ダ・ヴィンチ
ルーブル美術館にある一幅の女性像「ラ・ジョコンダ」(通称モナ・リザ)は、世界一の名画の名を欲しいままにしています。
レオナルドは寡作で、未完のまま投げ出された作品も多く、有名な「最後の晩餐」は壁画には向かないテンペラ技法を用いたため、完成直後から剥落。職業画家としての評価には疑問符を付けざるを得ない点もあります。
レオナルドが世界史に名を残す天才であることを、私は全く否定しません。ただ、あまりにも神格化・超人化されてはいないでしょうか。



映画化された世界的ベストセラー小説『ダ・ヴィンチ・コード』の影響か、今や世界史を裏で操る陰謀家とされてしまったヴィンチ村のレオナルドさん。彼はいかにして秘密結社のリーダーとされたのでしょうか。
なお竹下節子の本を手に取った理由は、現代新書の『ジャンヌ・ダルク超異端の聖女 』がたいへん面白かったからです。

レオナルドは政治的にも宗教的にも中立的立場でした。さらに寡作であり、私生活については語らず、想像の余地が入りやすい。つまりどんな色にも染めやすい人物だったのです。
本書はレオナルド個人の伝記のみならず、ヨーロッパにオカルティズム(神秘主義)とエゾテリズム(秘教主義)が育まれた土壌について多くの頁が割かれています。フリーメーソン薔薇十字団などのオカルト・サークルは、当時の貴族階級の知的なお遊びでした。たびたび陰謀史観の主役となるテンプル騎士団も、日本でいう平家落人伝説のようなものです。

レオナルドの絵に隠されているという異教的モチーフ。
しかし実際のキリスト教は、古代ギリシャ・エジプトなどの多神教的な要素を取り込んで発展してきました。レオナルドの絵に異教の要素が秘められているというのなら、同時代の他の芸術作品にも、それは見出せることでしょう。
キリスト教は女性原理を抑圧してきたとされる一方で、女神信仰を習合してもきました。マグダラのマリア信仰は民衆に人気があり、レオナルドが暗示的に描く必要などなかったのです。

では、なぜ『ダヴィンチ・コード』は「異端」をテーマとしたのでしょうか。
先住民を排斥し、文化的な「更地」としたうえに建国されたアメリカ。そこには異教との習合はありません。新大陸のピューリタンがヨーロッパの教会を見たら、その異教ぶりに驚愕する…『ダヴィンチ・コード』は、アメリカだからこそ生まれたエンターテイメントだったのでしょう。

私は『ダヴィンチ・コード』批判はいたしません。小説が歴史的事実と違っていても一向に構わないからです。ただ、多角的に歴史を見る眼を養うことは必要です。
世界史を教えない日本の教育って、大丈夫?

(11月12日読了)

【不純文學交遊録・過去記事】
モナリザ・コード
posted by 【電脳呆人】不純総合研究所 at 01:08| Comment(14) | TrackBack(0) | 芸術・娯楽交遊会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年11月06日

旧暦10月・出雲は神在月

旧暦10月は神無月。日本中の神様が、みな出雲大社へお集まりになられます。
一方、神様が大集合する出雲だけは神在月(神有月)。今年(平成18年)は11月30日に、日本中の神様をお迎えする神迎祭が行われるそうです。

出雲といえば神話の国。ヤマタノオロチや因幡の白兎が有名ですね。
豊富な神話に彩られながら、それに見合った考古学的遺物が乏しく、かつては「出雲は虚構」だとされていたようです。しかし現在では、荒神谷遺跡加茂岩倉遺跡での大量の青銅器の発見、さらに出雲大社では3本の木材を束ねた巨大な柱が発掘され、神話のスケールに劣らない勢力の存在が想起できるようになりました。


古代出雲



前田 晴人著



前田晴人は 桃太郎と邪馬台国で、邪馬台国のライバル狗奴国は吉備である(邪馬台国は大和)との新説を主張していました。

日本神話には、神様が海に突き立てた矛の滴から陸地が生まれたという国生み神話がありますが、出雲神話には国引き神話があります。周囲の土地を引っ張ってきて、出雲国が出来あがったというものです。
国引きを行ったのは八束水臣津野命(やつかみずおみづぬのみこと)という名の神様です。前田説では国引き神話を、出雲国の首長・出雲国造の支配拡大を正当化したものだとします。

出雲国造は、新たに任命されると朝廷に神賀詞奏上を行います。出雲国造の神賀詞奏上を、出雲の大和に対する服従の儀式だとする通説に、前田は異議を唱えます。出雲国造はむしろ朝廷と密接な関係にあり、天皇家の長久をことほぎ、大穴持命大国主命)の鎮祭を執り行う特命を託されていたとするのです。
出雲国造は天皇家と同じく天つ神である天穂日命を祖とし、その系譜は現在に至るまで84代を数えます(ちなみに天穂日命は、地上を平定するために天から遣わされたが、逆に大国主命に懐柔されてしまったとされる神様です)。
出雲国造は代替わりの際に神火相続式を行い、古伝新嘗祭を毎年行います。皇室の大嘗祭・新嘗祭と同じようなものです。皇室と出雲国造は、まるでコインの表と裏のようですね。

本書の結論は、大国主命は出雲の土着神ではなく、ヤマト朝廷が外部から持ち込んだ神であるとします(出雲本来の神は八束水臣津野命だとする)。
出雲神話は出雲に生まれたのではなく、ヤマト朝廷によって政策的に作られたというのでしょうか。古代出雲にロマンを感じる人(古代史ファンの大多数?)にとっては、夢を壊すような本かも…
大国主命が出雲の神様でないのなら、元はどこの神様だったのでしょう。著者のあとがきは残念ながら「別の機会に論じる」とのことです。

(11月6日読了)

【管理人のひとりごと】出雲国造の神賀詞奏上が、ヤマトへの服従の誓いではなく、朝廷側の立場で大国主命を祀っているとの主張は理解できました。しかし、それは「祟り神・大国主命を無事に抑え込んでますよ」との報告のようにも受け取れるのですが…
それから国引き神話も、実際に出雲では干潟や低湿地を干拓して農地を拡げたのかも…
posted by 【電脳呆人】不純総合研究所 at 17:49| Comment(8) | TrackBack(0) | 歴史・民俗交遊会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年11月05日

小さな小さな地球の覇者

カイアシ類という、聞き馴れない名前の生き物がいます。
漢字で書くと橈脚類。「橈=ボートを漕ぐオール」のような脚の生き物という意味です。
カイアシ類は甲殻類、つまりエビやカニの仲間です。その多くは1〜2oの大きさで、大きなものでも1cm程度。いわゆる動物プランクトンと呼ばれる生き物です。



カイアシ類は最もバイオマス(生物量)の多い生き物のひとつで、プランクトンの7〜8割を占めます。その生息域は熱帯から極地、水深10,000mの深海からヒマラヤの氷河まで、地球上のあらゆる水域に及びます(一部陸上種もあり)。
生命の本質は、子孫を殖やし生息領域を拡げる「はびこる」ことにあります。カイアシ類は、まさに生態系の小さな覇者です。人類のように複雑・高度化を目指す進化をタテの進化とするならば、小さくシンプルな体で多様化し生息範囲を拡げるカイアシ類の進化を、著者は水平進化と呼びます。

第一章ではカイアシ類を中心に、生命の進化全般について語られます。
エディアカラ生物群やカンブリア紀大爆発の生き物たち、最近話題の光スイッチ説(初期の生物が視覚を獲得したことで爆発的進化の引き金になったとする)も、わかりやすく解説されています。
生物の分布と大陸移動の関係(キーポイントは、かつてユーラシア大陸とインド亜大陸の間に存在したテーチス海)も、非常に面白いです。

第二章には、カイアシ類の実に多様な生態が紹介されています。動植物プランクトンなど微小な粒子を食する者がいれば、稚魚や他のカイアシ類を襲う肉食の者もいます。さらには巨大な眼を持つ深海性の者や、驚くことにヘビそっくりの毒牙を持つ者までいるのです。

第三章は、魚や貝など他の動物に寄生するカイアシ類の生態です。一方で、珪藻類や渦鞭毛藻類(赤潮の原因)などの植物に寄生されるカイアシ類もいます。

最後の第四章は、海洋生態系と地球環境問題です。外来種による在来種の駆逐、地球温暖化による環境変化が、生物多様性を失うことへの懸念が表明されています。
アジアで汲み上げられた船舶のバラスト水が、北米の海で排出され、在来のカイアシ類がアジア産に置き換わってしまった実例も紹介されています。

人類が宇宙へ飛ぶ時代になっても、まだまだ解明されていないことが多い、海。海洋生態系の多様性の喪失が、海のエネルギー循環に大きな変動をもたらす可能性は否定できません。
著者の研究対象への愛着のあまり、筆がすべっていると感じられる表現も多々ありますが、カイアシ類という微小生物を通して、生命の進化と生物の多様性について思考をめぐらすことができる良書であると思います。

(11月3日読了)

【不純文學交遊録・過去記事】
タフな奴ら。
posted by 【電脳呆人】不純総合研究所 at 00:27| Comment(0) | TrackBack(0) | 自然科学交遊会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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