2007年03月21日

富士山大噴火

講談社のメフィスト賞といえば、受賞作のほとんどが講談社ノベルスから出ていますが、石黒耀氏の死都日本は、ハードカバーで刊行された重厚な作品でした。

『死都日本』は、九州の霧島火山が大噴火し日本のほぼ全土が壊滅的被害に見舞われるというクライシス・ノベルです。該博な火山学の知識に裏付けられたリアルな噴火シーンに圧倒され、ゾクゾクしながら読んだ記憶があります。
日本火山学会・日本地震学会からの評価も高い石黒氏が、ついに日本一の山・富士山の大噴火を描きます。


昼は雲の柱



石黒 耀著



山野承一郎は、富士山を研究する地質学者。
ある日、御殿場市の富士山東麓で開発事業を行っている富成興産社長・富成建男から、造成中の現場へ呼び出されます。造成現場で古墳のような横穴が見つかり、富成は幼なじみの山野に調査を依頼したのでした。
富成がユンボで石棺をこじ開けると、そこには古代人のミイラが。もしかして、秦の始皇帝の命令で不老不死の妙薬を求めて富士山へやって来た、徐福の墓なのか?
そのころ富士山では、人体には感じられない低周波地震が頻発するようになっていました。そして、地鳴りとともに富士山頂に青白い発光現象が…

小説なのでネタバレになることは書けませんが、デビュー作『死都日本』同様、溶岩や火砕流のシミュレーションが非常にリアルで、緊迫感が味わえます。
大災害時のマスコミ報道や地域防災のあり方についても考えさせてくれる一冊です。

山野の生家は小さいながらも由緒の古い神社で、山野は火山学の見地から神話を読み解く研究もしているとの設定です。山野の娘で歴史マニアの真紀、真紀に思いを寄せる富成の息子・亮輔らとともに、天孫降臨神話の謎に迫ります。荒唐無稽な神話の場面が、実は火山の噴火に伴う現象を正確に描写しているのだと。
この“火山神伝説”を、石黒氏は壮大なスケールで構想しており、続編が予定されているようです。

分厚いので(500ページ弱)何日かに分けて読もうと思っていたのですが、ページをめくるが手が止まらず、5時間程で一気読みしました。

(3月21日読了)


posted by 【電脳呆人】不純総合研究所 at 22:15| Comment(4) | TrackBack(3) | 文学・小説交遊会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年03月20日

天皇陵、発掘。

3月1日、大阪府高槻市にある今城塚古墳から強固な石組み遺構が見つかったと発表されました。
今城塚古墳は第26代継体天皇の陵墓であるとする説が有力であり、発掘結果からも今城塚が大王陵クラスであることが裏付けられました。

今城塚古墳は被葬者の権勢の強さを示す、巨大な埴輪が大量に発掘されたことで知られています。平成15年8月には、壮大な埴輪の配列をCGで再現した番組がNHKスペシャルで放映されました。
この番組の単行本が、平成16年7月に発行されています。今城塚古墳とはいかなる遺跡で被葬者とされる継体天皇とその時代背景はどうだったのか、あらためて探ってみましょう。



大王陵発掘!巨大はにわと継体天皇の謎

宮内庁指定の天皇陵(および陵墓参考地)は、一般人が入ることはおろか、学術研究も許されておりません。ところが今城塚古墳は、なぜか陵墓指定から外れています。しかも王朝交代説もある継体天皇のものとされる古墳が綿密に調査できるわけですから、その価値は計り知れません。
宮内庁が管理する継体天皇陵は、大阪府茨木市にある太田茶臼山古墳です。ではなぜ太田茶臼山ではなく、今城塚が真の継体陵であると言えるのか…それは築造年代がはっきりしているからです。出土した埴輪の分析から、太田茶臼山古墳は5世紀中頃、今城塚古墳は6世紀前半の築造であると判明しました。そうなると前者は、507年に即位した継体天皇の陵墓ではありえません。

今城塚古墳最大の特色である、大量の埴輪。一般に埴輪は墳丘に並べて置かれています。しかし今城塚では墳丘の外の堤にわざわざ舞台を築いて、外部に見せつけるように埴輪を配置しているのです。
実は同じような見せ方をした古墳が、もうひとつあります。福岡県の岩戸山古墳です。こちらは土製の埴輪ではなく石人・石馬像ですが、やはり舞台を築いて並べています。岩戸山古墳の被葬者は筑紫国造磐井と考えられており、継体王権に反旗を翻した磐井の乱の首謀者です。まさに覇権を競ったライバル同士が、古墳でも張り合っているようですね。

今城塚古墳から出土した埴輪には、当時の人々の服装や建築の様式までもが精緻に写し取られています。
武人の鎧は小さな鉄片を綴じ合わせており、これは騎乗に適した形状です。
継体天皇といえば、大和からの即位の要請を一旦は固辞し、懇意にしていた河内馬飼首荒籠から大和の政情を把握したうえで即位に応じたとされています。継体王権の成立には、河内の騎馬交易集団が大きく関わっているようです。
樟葉宮(大阪府枚方市)で継体天皇が即位し、今年でちょうど1500年。物言わぬ埴輪たちが、古代のありのままの姿を語り始めています。

(3月19日読了)
ラベル:古墳
posted by 【電脳呆人】不純総合研究所 at 00:07| Comment(6) | TrackBack(1) | 歴史・民俗交遊会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年03月19日

カッパなにさま?カッパさま!

日本で最もメジャーな妖怪といえば、河童ですね。河童の主な特徴は…

・頭に皿があり、皿の水が乾くと死んでしまう
・背中には亀のような甲羅
・手足に水かきがある
・人や馬を川に引きずり込んで、尻子玉を抜く
・キュウリが好物
・鉄(金属)を嫌う

馬を襲った河童の腕を刀で斬った男が、河童に腕を返してやると、河童はお礼にどんな怪我でも治す薬草をくれた…なんていう昔話を聞いたことがある人も多いでしょう。
河童の伝承は日本各地にありますが、その呼び名もカッパ、ガワッパ、ガワタロ、エンコウ、ミズチ、ヒョウスベ…などさまざまです。
河童とはどのようにして生まれた妖怪で、なぜこんなにも多くの呼び名があるのでしょうか。


QED河童伝説



高田 崇史著


高田崇史氏の歴史ミステリ、QEDシリーズの最新刊です。
このシリーズは事件の解決そのもの以上に、歴史に秘められた呪術的な側面や、歴史の表舞台から消し去られた敗者たちの真の姿を描き出す推理が魅力となっています。

河童が棲むという伝説のある川で、ストーカー癖のある男性の絞殺体が発見されます。男性の遺体は、なぜか左手首が切り落とされていました。彼はどうやら、大学病院に勤務する薬剤師の女性をストーキングしていたようです。
被害者の兄は、製薬会社のMR(医薬品情報提供者、要するに病院・医師への薬のセールス)で、大学病院への新薬の売り込みに懸命になっていました。事件の背景には、製薬会社同士の激しいシェア争いがあるのでしょうか…
※当blogでは、事件の真相には触れません!

本作で事件とともに解明される、河童の正体。高田氏はメールマガジン『講談社ミステリの館2007年2月号』で、河童は「今までのテーマのさらにど真ん中」であると語っています。
これまでもQEDシリーズでは、河童とは川辺に暮らす民「河衆」のことであるとしてきました。そして河童や鬼や天狗と呼ばれ妖怪とされた者たちは、王権によって征服された古代の製鉄民であったのです。
河童は冬になると山に入って山童(やまわろ)になるとの伝承にも、河童が秋から冬にかけては砂鉄採集に従事し、春になると砂鉄の水洗作業で流出した粘土質の土地で耕作をしたことを指すのだといいます。これは「田の神は春に山から下りてきて、秋に山に戻る」という言い伝えとも一致しますね。
では本来製鉄民であるはずの河童が、金物を嫌うのはなぜ?
河童の好物がキュウリなのはなぜ?
河童伝説の裏側には、これでもかとばかりに古代の製鉄(タタラ製鉄)との関わりが隠されています。
神社巡りと墓参りが趣味という変な薬剤師、タタルこと桑原崇の推理に耳を傾けましょう。
あとは本書を読んでのお楽しみ!

高田崇史公認ファンサイト club TAKATAKAT

(3月18日読了)
posted by 【電脳呆人】不純総合研究所 at 00:54| Comment(35) | TrackBack(1) | 文学・小説交遊会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年03月09日

続報・・・新型プリウス?「ハイブリッドX」

【次期プリウス】最新スクープはこちら

3月6日、ジュネーブモーターショーが開幕(18日まで)。
デザインの一部のみが公開されていたトヨタのコンセプトカー・ハイブリッドX、その全貌がついに明らかとなりました。
トヨタ自動車 AUTO SHOWS INFORMATION

サイズは全長4500o 全幅1850o 全高1440o ホイールベース2800o。現行プリウス(全長4445o 全幅1725o 全高1490o ホイールベース2700o)と全幅以外はほぼ同クラスで、4ドア+リヤハッチという基本スタイルからも、次期プリウスのデザインスタディではないかと見られています。デザインを手掛けたのは、フランスにあるトヨタ・ヨーロッパ・デザイン開発(EDスクエア)です。
現行プリウスは、2003年4月にニューヨーク国際オートショーで初めて公開され、北米を中心に人気車種となっています。ハイブリッドXが欧州でデザインされジュネーブショーで初公開された背景には、今後は欧州市場での名声を確実にしようとの狙いがあるのでしょう。
メカニズムも現行プリウスをベースにしているとのことですが、これが次期プリウスのコンセプトカーなのかどうかは、トヨタ首脳は明言を避けているようです。
【ジュネーブモーターショー07】次期プリウスか、明言は避ける

それならば、ハイブリッドXの姿から新型プリウスのデザインがどうなるのか、不純な妄想をしてみましょう!
当blogでは以前、WORLD CAR FANSに掲載された次期プリウスの予想イラストを紹介しました。
SPY IMAGE; Next Gen Toyota Prius

予想イラストのウィンドウのグラフィック、ハイブリッドXのサイドビューとかなり似ていませんか?
現行プリウスはリヤクォーターガラスが三角形ですが、ハイブリッドXと「WORLD CAR FANS」のイラストでは四角形になっています。このイラスト、結構当たっているのかも…
現行プリウスは、真横からのシルエットが富士山のような三角形を描くスタイルにこだわったために、屋根が急傾斜で後席の頭上空間の不足が指摘されています。
新型ではルーフの傾斜をゆるやかにして、後席の居住性を改善してくるでしょう。特徴的な上下二分割のリヤウィンドウも、現行型は上がメイン・下がサブですが、新型ではハイブリッドXのようにスポイラーから下がメインになりそうです。
ガラス張りのルーフやセンターピラーレスの観音開きドアは、コンセプトカーならではの演出で、市販車に採用されることはないでしょう。燃費向上には軽量化が一番ですから、わざわざ重量が大幅アップするようなことはしないでしょうから。LEDヘッドライトは採用されるかもしれません。
↓ハイブリッドXのより詳細な画像は、こちらでご覧いただけます。
AutoblogGreen

ハイブリッドX以外にも、私がジュネーブモーターショーで注目しているのは、ホンダのハイブリッドスポーツカー(CR-Xの再来?)、そしてスバルの水平対向ディーゼルエンジンです。
クライスラーがどこのメーカーの傘下に入るのかも気になりますね。



ディーゼルこそが、地球を救う



小川 英之著 / 清水 和夫著 / 金谷 年展著


posted by 【電脳呆人】不純総合研究所 at 02:49| Comment(8) | TrackBack(4) | 不純自動車交遊会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年03月08日

おやめになったらどうするの?

昨年は皇室に、悠仁親王殿下がご誕生されました。
皇太子殿下、文仁新王殿下に次ぐ皇位継承者となり、女性天皇・女系天皇を認めようとする皇室典範改正論議は、ひとまずお預けとなりました。
女性天皇女系天皇の違い、当blogへお越しのみなさんは、もちろん理解しておられますよね。

今回は皇位継承問題、天皇と憲法、皇室報道などに関する刺激的な議論がまとめられた一冊です。



天皇と日本のナショナリズム

とりわけ、宮台氏と横田氏による天皇と憲法をめぐる議論が興味深かったので、ご紹介いたします。
日本国憲法の第一条で「日本国の統合の象徴」と謳われる、天皇。
日本には天皇という“王様”がいらっしゃいますが、では日本は立憲君主制国家なのでしょうか?

(キング)と天皇(エンペラー)の大きな違いは、君主が俗人であるか否かにあります。
キングは世俗の統治者であり(実際の政治は閣僚が統治するとしても)、その権力は憲法によって国民から付託されたとのカタチをとるのが、立憲君主制です。
エンペラーとは、聖性を帯びた君主です。
(管理人注;宗教的存在と言った方が解りやすいでしょうか?)
聖性は、憲法の約束事の内側に囲い込むことができず、立憲君主制が成り立ちません。
大日本帝国憲法で統帥権を持っていた戦前の天皇は、立憲君主と言えなくもありませんが、国民の象徴との規定しかない日本国憲法においては、立憲君主制はありえないのです。

憲法とは、国民から統治権力へ対する命令であり、政府が国民に対して守る約束事です。
(ですから「憲法には国民の権利ばかり書いてあって、義務が書かれていないのはオカシイ」と言う人は、オカシイことになります。政府から国民への命令は、法律です)
天皇は象徴ですから、統治権力ではありません。
そうなると、日本国憲法に記された天皇の国事行為とは、憲法によって定められた天皇の権限や義務ではないことになります。
宮台氏は、国事行為とは内閣が天皇にお願いしてもよい公務のことであり、天皇は国事行為を放棄してもよいと言っています。

天皇のご公務は、大変です。
法律や条約が公布される際に捺される御璽は、純金製で4.5キロもあります。
外国の要人や大使との謁見に、祝賀行事へのご出席、さらに皇室に代々伝わる祭祀(最も重要!)も執り行わねばなりません。
それから、過熱するマスコミ報道へのご対処も大変でしょう…
宮台氏は、天皇が退位されたり、皇族方がみな皇位継承を拒否されて天皇が空位になっても、日本国憲法はどうすることもできないのだと言います。
わたしたちは、天皇陛下や皇族方に過大なご負担を掛けてはいないでしょうか?
私は天皇が、日本の歴史・文化の継承者として、人類の平和と繁栄・文明と自然の調和を祈るシャーマンとして、千代に八千代に続いてゆくことを願います。

(3月6日読了)
posted by 【電脳呆人】不純総合研究所 at 00:38| Comment(0) | TrackBack(0) | 政治・経済交遊会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年03月04日

お金に国境はない!

あなたが1,000ドルの外貨預金をしたとします。
その1,000ドルは一体どこにあるのでしょう?

あなたが預金した1,000ドルは、日本には存在しません。アメリカにあります。
米ドルを扱う日本の銀行は、アメリカの銀行に口座を持っています。このアメリカ側の銀行をコレスポンデント銀行コルレス銀行)、そこにある日本の銀行の口座をコレスポンデント口座コルレス口座)と呼ぶそうです。
※コレスポンデント=中継地

日本とアメリカを往き来するのはデータだけで、円は日本から、ドルはアメリカから動いてはいません。
世界各国の中央銀行が保有してるドル建て外貨準備高はすべてニューヨークのコルレス銀行に預けられており、アメリカ政府が自国の銀行に対しコルレス口座の凍結を命じれば、世界中のすべてのドル預金を差し押さえることができるのです。

アメリカは、マカオのバンコ・デルタ・アジアにある北朝鮮資金を凍結する、金融制裁を発動しました。
なぜアメリカは、外国の銀行にある資金を一方的に凍結できるのか。その秘密がコルレス銀行(コルレス口座)にあったのです。
また、国際的な金融取引はすべてSWIFT(The Society for Worldwide Interbank Financial Telecommunication=国際銀行間通信協会)に記録されています。
いわゆる“テロとの戦い”で、アメリカ政府はSWIFTに情報提供を申し入れ、テロ資金の流れを解明したのです。

世界を震撼させた、2006年の北朝鮮によるミサイル発射実験および核実験。
アメリカによる金融制裁は、北朝鮮に決定的なダメージを与えており、だからこそ金正日にはアメリカ本土を攻撃できる核ミサイルが必要なのだと、橘氏は言います。

本書には、2006年のライブドア事件や1998年のカシオ事件など、マネーロンダリングに関する数々のエピソードが克明に語られています。
国際金融のカラクリがわかる、目からウロコの一冊です。
脱税目的であったり、テロ資金であったり、犯罪で得た利益であったりと、匿名でやりとりせねばならないお金が世の中にはあるのですね。
最も匿名性が高いのは、もちろん今も昔も現金です。

世界にはタックスヘイブンと呼ばれる、税金のかからない国や地域があります。
富裕層は税金を払いたくなければ、いつでも日本から出て行くことが可能です。
相続税の引き上げなどの増税は、仕事や家庭を抱えて日本で生きていくことしかできない中間層を痛めつけるだけだ。それは控えめに言ってもかなり暗い社会に違いない…橘氏は、あとがきでこう書いています。

(2月26日読了)
posted by 【電脳呆人】不純総合研究所 at 17:20| Comment(4) | TrackBack(2) | 政治・経済交遊会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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