2007年05月04日

第3のシナリオ

2008年は、北京でオリンピックが開催されます。
急速な経済発展を続ける中国に、より多くの注目が集まることでしょう。
経済的にも軍事的にも、アメリカに比肩しうる超大国への道を歩む中国。現在のアメリカは中国をどう見ているのでしょうか。

今後の中国はどこへ向かっていくのか、アメリカには大きく二つの見方があるといいます。
ひとつは、中国における経済の自由化は、政治や言論面での自由化を促すであろうというものです。
一方、経済発展の恩恵を受けているのは沿岸の大都市だけであり、内陸部は依然として貧しい暮らしを強いられています。拡大する貧富の差や政治的抑圧に人民が蜂起し、中国は統一を維持できずに崩壊・分裂するというのが、もうひとつのシナリオです。



危険な幻想

著者である『ロサンゼルス・タイムズ』の外交記者ジェームス・マン氏は、第3のシナリオを提示します。それは中国が経済成長を続けても政治的にはなにも変わらず、一党独裁体制が続くというものです。たとえ政権党の名が共産党ではなくなっても。
中国では経済発展の恩恵を受けた中産階級が形成されつつあり、自由に目覚めた彼らが共産党支配に対抗し民主主義を実現するのではないか…このような見方にもマン氏は異を唱えます。むしろ彼らは民主主義を否定すると。
中国の富裕層は人口比ではわずかです。中国政府は都市部を優遇し、農村地域の近代化は遅れています。全国的な選挙が行われるなら、少数の都市富裕層と大多数の地方農民とではおのずと違った投票行動をとります。そうなると中国の中産階級たちは、民主化よりも現状維持を望むというのです。
崩壊・分裂のシナリオに対しても、これまで中国が内戦や分裂を経ても再び政治的統一を回復してきた歴史を踏まえて、懐疑的です。

本書のテーマは「アメリカ政府の中国観」であって、中国の現状分析ではありません。
拡大する中国市場は、アメリカ経済界にとっても大きな魅力です。ことあるごとに人権外交を振りかざすアメリカですが、中国に対してはビジネスの論理が優先してきました。そのためアメリカには、中国はいずれ民主化するだろうという「気休めのシナリオ」が蔓延してきたと、マン氏は指摘します。
ただ、終始同じような主張が繰り返されているので、ちょっと退屈になる本です(笑)
巻末の訳者による座談会が、本書の内容を上手くまとめています。

(5月3日読了)


posted by 【電脳呆人】不純総合研究所 at 00:50| Comment(0) | TrackBack(0) | 政治・経済交遊会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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