2007年06月30日

Xシリーズ、開幕。

某大学工学部助教授として、大学や研究所を舞台にしたクールで理知的なミステリィ作品で注目を集めた森博嗣氏(現在は大学を退官)。異色の作家を数多く輩出してきた講談社メフィスト賞の第一回受賞者であります。
講談社ノベルスからは、犀川創平(S)と西之園萌絵(M)の師弟コンビによるS&Mシリーズ、瀬在丸紅子(Veniko)とおかしな仲間たちが繰り広げるVシリーズ、タイトルにギリシャ文字が入ったGシリーズ(現在も続行中)を刊行してきました。

そして、また新たなシリーズがスタートします。
第一弾は『イナイ×イナイ Peekaboo』。新シリーズはタイトルにXが入るのでXシリーズと呼ばれます(次回作の予定は『キラレ×キラレ』)。

なお、私がシリーズ全巻を読破したのはS&Mシリーズだけです…(苦笑)



イナイ×イナイ

都心の一等地に佇立する広大な佐竹家。
当主・佐竹重蔵が亡くなり、美術鑑定業の椙田泰男は遺品の整理を依頼されていました。
ある日、椙田事務所に重蔵の先妻の娘・千鶴が訪れます。
「私の兄を探して欲しいのです」
千鶴には双子の妹・千春のほかに生後8ヶ月で亡くなった兄・鎮夫がいたのですが、実は鎮夫は今も生きており、屋敷の母屋の地下牢に閉じ込められているのだと言うのです。
いくら広大な屋敷とはいえ、そんなことがありうるのでしょうか。
(ちょっと高田崇史氏の『毒草師』みたいな設定…)

千鶴が事務所を訪れたとき、椙田泰男は不在でした。
調査を引き受けたのは、事務所に出入りしている美大生の真鍋瞬市と、最近助手として雇われた元・社長秘書の小川令子。二人のにわか探偵が、美術品の調査を名目に佐竹屋敷に乗り込みます。
屋敷にはもう一人、探偵を名乗る男・鷹知祐一朗が来ていました。鷹知は佐竹家の親戚で、千春から依頼を受けたのだと言います。はたして彼は敵か味方か?

作中では一番頼りなさそうな美大生の真鍋が、論理的な推理を展開します。

(6月28日読了)

森博嗣の浮遊工作室


posted by 【電脳呆人】不純総合研究所 at 00:33| Comment(0) | TrackBack(0) | 文学・小説交遊会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年06月26日

新型プリウス、発売延期。

【次期プリウス】最新スクープはこちら

不純文學交遊録の検索ワードで非常に多いのが「プリウス」。しかも新型(3代目)の情報を求めて訪れているようです。
ご来訪者のみなさま、スミマセン…記事が古いままでした。
最近、新型プリウスをめぐって重大な報道がいくつかありましたので、まとめてみます。

このところ騒がしいのが日刊工業新聞です。

まずは5月28日の一面トップ記事。
「来年発売予定の次期プリウスへのリチウムイオン電池搭載を断念」
相次ぐパソコン用リチウムイオン電池の発火事故を受け、安全性に不安の残るリチウムイオン電池の採用を見送ったとのことです。
しかしながら、トヨタはハイブリッド車へのリチウムイオン電池搭載に向け、厳しい安全検証を繰り返しているはず。電機メーカー各社も、自動車用リチウムイオン電池の生産に大規模な設備投資をしています。
また限定100台とはいえ、日産自動車が2000年に発売したティーノ・ハイブリッドはリチウムイオン電池を搭載していました。

これは好調な現行プリウスの販売に水を差さないためのガセネタか…とウラを読んでいたところ、6月15日に衝撃的な記事が。
トヨタ自動車、新「プリウス」の発売を半年間延期
2008年10月に予定されていたプリウスのフルモデルチェンジが、2009年春に延期されたと報じられたのです。
当初計画されていたリチウムイオン電池の採用が、従来のニッケル水素電池を継続することになり、車体設計の変更が生じたとのこと。
リチウムイオン電池と同等の性能をニッケル水素電池で実現しようとすると、バッテリーサイズを大きくせざるをえません。そうなるとトランクスペース等に影響が出てきます。

さらに追い討ちをかけるような記事が、6月18日
ホンダ、新型HVへのリチウムイオン電池採用を先送り
ホンダが2009年に発売を予定している新型ハイブリッド専用車(おそらくフィットクラスの小型車)も、リチウムイオン電池の採用を見送ったのです。

これで3代目プリウスのリチウムイオン電池不採用は確実…
プリウスにはハイブリッド車を普及させる使命がありますから、安全性のみならずコストの問題も大きかったと思われます。
ただ「プリウス=先駆け」を名乗るからには、実験的な新技術を果敢に採用してもらいたいものです。




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posted by 【電脳呆人】不純総合研究所 at 23:16| Comment(4) | TrackBack(0) | 不純自動車交遊会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年06月18日

昔、毒ありけり

昔、男ありけり…
この一文から始まる歌物語が『伊勢物語』。
主人公の「男」は、平安時代のちょいワルオヤジ(?)在原業平がモデルとされています。火遊びが過ぎて東国へ追放になったとの逸話があるほどです。
今回は『伊勢物語』にまつわるミステリ小説です。



毒草師



毒草師

東京は隅田川近くの南業平にある旧家、鬼田山(きたやま)家。
鬼田山家の先々代当主・俊春は、この辺りには業平様の怨念が棲みついており、日が暮れると一つ目の鬼が現れる…と言い聞かされて育ちました。
ある日幼い俊春は、夕暮れの川沿いの道で一匹の子山羊と出会います。その子山羊の顔の中央には、大きな目がひとつ。こいつがあの一つ目の鬼なのか…驚いた俊春は、落ちていた棒切れで子山羊を撲殺しました。
成人した俊春は、千葉の豪農の娘・香苗と結婚します。しかし最初に身ごもった子供は死産でした。そして、その子の顔の中央には目がひとつしかなかったのです。
業平様の祟りか…
以後、鬼田山家では「一つ目の鬼を見た」と言い残して、屋敷の離れに内側から鍵をかけて閉じこもる人間が相次ぎます。そして誰もが密室状態の離れから、忽然と姿を消してしまうのでした。まるで『伊勢物語』の「鬼一口」の場面のように…
『伊勢物語』第六段
求愛していた姫君をなんとか連れ出した「男」は、降りしきる雨のなか姫君を荒れ果てた蔵の中に押し入れます。「男」は外で夜明けを待ちますが、蔵の中へ入ってみると姫君の姿はありません。
鬼に一口で食べられてしまった…

鬼田山家の人々はなぜ密室から消えたのか?
そして一つ目の鬼の正体とは?
事件の謎を解くのは『QED』シリーズに登場する無表情な長髪の男、御名形史紋(みなかた・しもん)です。自ら毒草師を名乗るだけに、本作ではある毒物が事件の重要な鍵となります。

この先ネタバレはありません
但し、本作品に対する管理人の個人的な評価を記しています。未読の方はご注意ください。

管理人のひとりごと
posted by 【電脳呆人】不純総合研究所 at 18:20| Comment(2) | TrackBack(0) | 文学・小説交遊会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年06月10日

消えた(消された?)神様

御三家、三役、三冠王…など、世の中には三つの代表的なものを並び称する言葉が数多くあります。
日本の神話にも、三貴子と呼ばれる三人の神様がいらっしゃいます。アマテラス(天照大神)、ツクヨミ(月讀命)、スサノオ(須佐之男命)です。
アマテラスは皇室の祖神として名高い太陽の女神。弟のスサノオはヤマタノオロチ退治で知られる勇猛な神様です。しかしアマテラスのもう一人の弟・ツクヨミは、夜の世界を統べる月の神という以外に、その事績が全くと言っていいほど記されていないのです。
ツクヨミを祭神とする神社の数は極めて少なく、当然ながらツクヨミをテーマとした研究書や論文もほとんどありません。

日本神話最大の謎ともいえるツクヨミについて以前からもっと知りたいと思っていたのですが、待望の著作が最近出版されました。



ツクヨミー秘された神

著者の戸矢学氏は國學院大學文学部神道学科を卒業した、神道・陰陽道の研究家です。
戸矢氏は神話の三貴子が、皇位継承のレガリアである三種の神器に相当するといいます。
八咫鏡(やたのかがみ)=アマテラス
八尺瓊勾玉(やさかにのまがたま)=ツクヨミ
天叢雲剣(あめのむらくものつるぎ)=スサノオ
そして鏡は伊勢神宮、剣は熱田神宮に奉納されており、宮中にある鏡と剣はレプリカであるのに対し、勾玉だけは正真正銘オリジナルが宮中に祀られています。
ツクヨミを象徴する勾玉のみ実物が宮中にある…つまり戸矢氏は、ツクヨミが存在感のないどうでもいい神様どころか、皇室にとって最も重要な神様であると考えているのです。

月の引力は潮汐をもたらし、月の運行は時に日食を起こします。ツクヨミ=月を読むとは天文・占星の術に他なりません。それは単なる占いではなく、気象を予測したり地の利を読んだりする古代人の科学でした。
歴史上、天文・占星の術を得意としたと伝わる天皇がいらっしゃいます。天武天皇です。天武天皇は古代史最大の内戦・壬申の乱を制して即位。古事記日本書紀の編纂を命じ、天皇の称号を最初に用いたとされます。天皇という王権は、ここに確立したといえるでしょう。
ツクヨミとは天武天皇(の神格化)だったのです。

かように重要なツクヨミの神話が、なぜ全く残っていないのでしょうか。
ツクヨミを抹殺したのは誰か…戸矢氏は桓武天皇だとします。桓武天皇の父・光仁天皇は、天武天皇の兄・天智天皇の孫です。奈良時代は天武天皇の子孫が皇位を継承し、天智系の光仁天皇は政争に巻き込まれないよう酒浸りの日々を送っていました。ところがアルコール中毒を装っていた不遇の老皇族に、皇位が転がり込んできたのです。
父の後を継いだ桓武天皇は、守旧派の勢力が強い平城京を棄て、平安京に遷都します。そして仇である天武天皇の事績を可能な限り削除したのだと戸矢氏はいいます。
確かに天武天皇の前半生は謎に包まれており、乙巳の変(大化の改新)のエピソードにも登場しません。但し、天武天皇を天智天皇の弟ではないとか皇位簒奪者であるとかの説を、戸矢氏は否定しています。

もともと記紀に描かれていたはずのツクヨミ神話がどのような物語だったのか、本書で明らかになったわけではありません。
先行する研究や資料がほとんどないだけに、ツクヨミ神話は私たちの想像力を刺激します(戸矢氏自身、まずは長編小説として構想していたそうです)。
なお本書はツクヨミのみならず、神道全般について新たな知見をもたらしてくれる極めて興味深い論考です。

(6月10日読了)
posted by 【電脳呆人】不純総合研究所 at 21:52| Comment(6) | TrackBack(0) | 歴史・民俗交遊会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年06月03日

ふたたび、あかきゆめみし…

ひょろりとした長身に、黒いスーツとサングラス。
若いのか老けているのか、よくわからない容貌。
瀟洒な洋館に、本の山に埋もれてひとり暮らし。
ソファーで本を読んでいるか眠っているかの毎日で、いつもお腹を空かせており大食漢。
全く常識がないが、かつては大学で論理学を教えていたという。
名刺には「名探偵」の三文字。
彼の名は、夢水清志郎

はやみねかおる氏の児童向けミステリ『夢水清志郎事件ノート』シリーズ(講談社青い鳥文庫)をご存知でしょうか。児童向けとあって殺人事件は一切起こりませんが、大人の読者をも唸らせる本格ミステリです。また、夢水名探偵の「食う・寝る・読む」の生活は、本好きにとって垂涎の的であります(笑)
はやみね氏は小学校の教諭で、本嫌いの子どもたちに本を読ませようと、自らも小説を書き始めたのがデビューのきっかけです。現在は専業作家となっています。
これまで数多くのジュヴナイル作品を手掛けてきたはやみね氏が、初めて大人向けのミステリを発表しました。名義も漢字の勇嶺薫に変えて。なお、勇嶺薫は本名ではありません。「幽霊がおる」をもじったペンネームです。



赤い夢の迷宮

(以下、ネタバレはございません)

ゴッチウガッコユーレイCちゃん魔女ココアそしてぼくの男女7人は、小学校時代の遊び仲間。ちなみに先に名前を挙げた3人とぼくが男性、あとの3人が女性です。
ぼくたち7人は、OGと呼ばれる近所の不思議な男性の家によく出入りしていました。
OGとは「大柳の爺さん」の意味です。彼は地元の大資産家の息子らしいが実家から勘当されているようで、ひとり暮らしで無職の彼に学校の先生や親たちは近づかないよう注意します。若白髪のせいで子どもたちからは「じい」と呼ばれていましたが、実際の年齢は40代くらいでしょうか。
ぼくたちの住む街の北側にある三角山は非常に険しく、時には登山者が道に迷います。そして三角山にはお化け屋敷と呼ばれる大柳家の別荘がありました。

あれから25年。30代になったぼくたちの元へ、OGからの招待状が届きます。
実家の兄弟たちがみな亡くなったため、OGはいまや地元で知らぬ者はいない大柳グループの総帥です。大柳ビルに招かれたぼくたちはヘリコプターに乗せられて、かつてお化け屋敷と呼ばれていた大柳家の別荘へと向かいます。
その日は台風が接近中。しかも険しい山あいに位置する別荘では、携帯電話は圏外です。
陸の孤島となった別荘で、ぼくたちを待ち受けていたものは…

はやみね氏は、自らの作品が赤い夢から紡ぎ出されていると語っています。
さあ、漢字の勇嶺氏が描く、ほの冥いミステリの世界へ…

(6月3日読了)
posted by 【電脳呆人】不純総合研究所 at 20:22| Comment(0) | TrackBack(0) | 文学・小説交遊会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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