2008年02月18日

妖怪の正体とは

妖怪といえば何を思い浮かべますか?
鬼や河童や天狗など、日本の昔話に登場する怪物たちでしょうか。それともアニメ『ゲゲゲの鬼太郎』に登場する「子泣き爺」や「砂かけ婆」でしょうか。
あるいは妖怪の名をタイトルに掲げる、京極夏彦氏のミステリ小説群を挙げる方もいらっしゃるかもしれません。

京極夏彦氏は小説の執筆のみならず、水木しげる氏・荒俣宏氏と世界妖怪協会を旗揚げし、小松和彦氏が主宰する国際日本文化研究センターの研究会にも参加しています。



妖怪の理 妖怪の檻

妖怪とは、実はよくわからない存在なのだそうです。
「あやしい」という漢字を二つ重ねた「妖怪」は、もともと鬼や河童などの具体的な怪物を指す言葉ではありませんでした。妖怪という語は、不可思議な現象全般を含んでいたのです。
明治時代の妖怪博士・井上円了が否定した「妖怪」も、前近代的な迷信一般のことであって、現代の私たちが思い浮かべる妖怪とは違っていたようです。
「妖怪は同じ場所に出る」「幽霊は人に憑いて出る」という民俗学の父・柳田國男の定義も、妖怪を捉えきれていません。人に取り憑く「キツネ憑き」があれば、特定の場所に現れる「地縛霊」もあります。
本書は「妖怪という言葉について」の章だけで、200ページに達します!

小さい頃に読んだ、水木しげる氏の『妖怪なんでも入門』(現在は『妖怪大百科』として復刊)。夜眠れなくなるほど怖かった一方で「どうせ妖怪なんて水木しげるの創作だろう。マンガだ、コドモダマシだ!」と思っていました。
ところが後年、小松和彦氏の著作に出会ったことで、妖怪とは現代の作家の創作ではなく民俗学的な由緒があるのだと知りました(もちろん、水木氏や江戸時代の絵師・鳥山石燕が創作した妖怪もありますが)。

それでも「言い伝え」だけの存在だった妖怪に目に見える姿を与えたのは水木氏であり、私たちが思い浮かべる妖怪の姿は、やはり『ゲゲゲの鬼太郎』に登場する妖怪たちなのです。
例えばアニメでおなじみの妖怪「塗り壁」とは、夜歩いていると急に行く先が壁になって進めなくなる、九州地方に伝わる怪異現象のことです。出典である柳田國男の『妖怪名彙』には、コンクリートの壁のような姿をした化け物が現れるとはどこにも書いてありません。
デザイナーとしての顔も持つ京極氏。「妖怪の形について」の考察も面白いです。

500ページを超す大著ですが、最終章の講演録を読めば本書の要点はほぼつかめます(これって一種のネタバレ?)。

(2月17日読了)

【不純文學交遊録・過去記事】
妖怪は、境界に棲む。
邪魅ハ魑魅乃類なり 妖邪の悪気なるべし

【関連サイト】
怪異・妖怪伝承データベース(国際日本文化研究センター)


ラベル:京極夏彦
posted by 【電脳呆人】不純総合研究所 at 20:17| Comment(0) | TrackBack(0) | 歴史・民俗交遊会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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