2008年03月10日

人魚の歌は死の調べ

燃え盛る炎のなかでヴァイオリンを奏でる17、8歳の少年。傍らに佇む二人の人魚。幼い記憶は夢か現実か…



人魚と提琴

人魚、提琴(ヴァイオリン)、そして玩具館。なにやら古風で幻想的なタイトルに惹かれて手に取った講談社ノベルスの一冊。
著者は石神茉莉氏。見慣れない名前なのでメフィスト賞を受賞した新人かと思いきや、1999年に雑誌『幻想文学』でデビューした作家です。ただ、長編作品は本書が初めてとなります。カバー裏面の推薦文は、現代怪談集『新耳袋』シリーズで知られる木原浩勝氏が書いています。

冒頭のヴァイオリンを奏でる少年と人魚の光景は、22歳の北原涼子の幼い記憶です。
5歳のころまで山奥の村で暮らしていた涼子は、そこで人魚を見たといいます。海ではなく、山村の土蔵のなかで。村では春と秋に人魚のお祭りがあり、そこで人魚は吉凶を占う予言をしていたのだそうです。しかし17年前の秋祭りで山火事が発生して、集落は全滅。人魚のお祭りはそれが最後となりました。
火傷を負った涼子は、福井県小浜市の病院で保護されました。小浜市といえばアメリカ大統領選挙の民主党候補者バラク・オバマ氏…いや、人魚の肉を食べて永遠の生命を得たという八百比丘尼の伝説で知られています。
実は涼子は2歳のとき、母親がちょっと目を離した隙に神隠しに遭ったように行方不明となっていたのです。そして5歳で両親と再会するまで、小浜の山奥で暮らしていたのでした。

涼子が訪れた玩具館「三隣亡」は、かつて商店街だった廃墟のなかにあります。
玩具館とはいうものの、懐かしのおもちゃ屋さんや駄菓子屋さんといった風情ではなく、古今東西の呪物や屍体写真集が所狭しと並ぶ、一種のホラーショップです。異世界への入り口のような店を経営するのは、10代の少女のように見える年齢不詳の美珠と、白衣を羽織った無口で無愛想な兄の
玩具館で涼子の目に留まった、無気味でリアルな人魚の絵。憑かれたように涼子は、幼い頃の不思議な記憶を語りはじめます。
そして、人魚を伴ってヴァイオリンを奏でていた少年「ミナモリさん」の正体とは…

この先、ネタバレはございません。
(ただし管理人の個人的な読後感が記してあります)

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posted by 【電脳呆人】不純総合研究所 at 00:31| Comment(0) | TrackBack(0) | 文学・小説交遊会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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