2008年04月27日

GOTH(ゴス)の魅惑

ファッション用語としてすっかり定着した、ゴスロリ(ゴシック・ロリータ)。
ゴシックとは本来、中世ヨーロッパの建築・美術様式のことです。

ゴシック(Gothic)の語源は、ローマ帝国に侵入したゴート(Goths)族に由来します。ゴシックには野蛮で残酷という意味が込められており、中世美術を粗野なものと蔑んでそう呼んだのです。
かつて中世は、暗黒の時代とされてきました。そこから明るさよりも暗さ、現代よりも過去、怪奇的なものや頽廃的なものを求める感受性がゴシックと呼ばれます。
明日は今日よりも幸せであるとか、人間はみな平等であるとかの近代的・民主主義価値観が信じられなくなったとき、ゴシックはその魅力を発揮するのです。



ゴシックハート

高原英理氏は、ゴシックを読み解くキーワードとして「人外」(にんがい)を挙げています。
ここでいう人外とは、人でなしの極悪人という意味ではなく、人の世界の外に目を向けてしまう異端者のことで、誤って地上に生を受けた思いの強い人ほど共感する言葉であると言います。

ゴシック小説の代表作、メアリー・シェリーの『フランケンシュタイン』。
科学者ヴィクター・フランケンシュタインによって、複数の死体をつなぎ合わせて創造された怪物は、醜い容貌のために捨てられてしまいます。独学で人並み以上の知性と感情を身につけた怪物ですが、最後まで人間社会に受け入れられることなく北極の海に消えます。この怪物が置かれた境遇こそが「人外」です。
なお、フランケンシュタインとは怪物を創造した科学者の名であり、人外である怪物には名前すら与えられていません。

『フランケンシュタイン』が生まれたのは、イギリスの詩人ジョージ・ゴードン・バイロンの別荘で、バイロンと彼の友人たちは怪奇小説の競作に興じました。
ここで生まれたもうひとつの作品が、バイロンの侍医であるジョン・ポリドリによって書かれた『吸血鬼』です。不死身の貴公子である吸血鬼もまた、人間を超越した存在=人外として描かれています。

本書は他にも残酷・猟奇・異形・両性具有・人形などをキーワードに、小説や漫画や映画などを通して、高原氏のゴシックへの愛が語られています。
高原氏の語る人外の境地には魅せられた私ですが、しかし身体の損壊(残酷・猟奇)は、たとえ想像の世界であっても、とても受け入れられません…

(4月21日読了)

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posted by 【電脳呆人】不純総合研究所 at 21:13| Comment(2) | TrackBack(0) | 文学・小説交遊会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年04月21日

恐竜はなぜ鳥になった?

鳥類は恐竜から進化したとする説が、現在では有力です。
羽毛を持った恐竜の化石も発見され、恐竜と鳥類の近縁性はますます強まっています。

鳥類の特徴は羽毛の存在だけでなく、呼吸器官にもあります。
鳥類の骨は中空構造になっており、骨の空洞を利用した気嚢という呼吸システムを持っています。気嚢による高い呼吸効率は、大空への飛翔を可能にしました。
最近の研究では、恐竜も気嚢システムを持っていたと考えられています。
では、空を飛ばない恐竜がなぜ気嚢システムを持っていたのか…?



恐竜はなぜ鳥に進化したのか

恐竜誕生前夜、地球は史上最大規模の大量絶滅に遭遇しました。
全生物の90%が絶滅したというペルム紀大絶滅。今から約2億5千万年前のことです。ペルム紀と次の三畳紀とのあいだはP‐T境界と呼ばれ、古生代と中生代を隔てる地球史の大きな節目となっています。
石炭紀からペルム紀にかけての地球の大気は、35%もの高酸素濃度でした(現在は約21%)。生物はこぞって大型化し、翼長70cmもの巨大トンボ・メガネウラが空を飛んでいました。
しかしペルム紀末期、地球の酸素は急激な減少に転じます。この時代、地球の陸地はひとつの超大陸パンゲアを形成し、急激な環境変化が生物を大量絶滅に追いやったと考えられています(白亜紀末のような天体衝突ではないようです)。

それからしばらくは酸素の減少が続き、恐竜が出現した三畳紀は最も酸素が薄い時代でした。地表の酸素が、数千メートルの高山並みしかありません。
そんな息苦しい環境に適応したのが、恐竜が獲得した気嚢システムだったのです。その後、大気中の酸素は増加を続け、恐竜は多様化・巨大化し地球の覇者となります。
恐竜の時代に幕を下ろしたのは、白亜紀末の6500万年前に起こった天体衝突でした。白亜紀と第三紀の境目はK‐T境界と呼ばれ、中生代と新生代を区分しています。

悠久の生命の歴史を、酸素濃度の推移から描いたピーター・D・ウォード氏。
生命は酸素なしでは生きてゆけません。生命の大量絶滅は、ことごとく酸素濃度が急落した時期と一致しています。そして低酸素環境に適応した新しいボディ・プランをもつ生物が出現し、酸素量の回復にしたがって生物は多様性を拡大させていったのです。
生命の進化は自然淘汰による漸進的な変化の累積によると考えられていますが、生命の歴史は時として飛躍的な発展を見せます。
科学者たちのあいだで対立的に捉えられてきた「小さな進化」と「大きな進化」を、ウォード氏は「酸素濃度への適合」として一元的に説明することに成功していると、訳者・垂水雄二氏は本書を大絶賛しています。
地球の生命史を大きく見直す一冊です。

(4月20日読了)

【不純文學交遊録・過去記事】
スーパーサウルスは存在し得ない?!
スーパーサウルスは存在し得ない?!…U

科学書に膨大な参考文献リストは付き物ですが、本書の参考文献はすべて文藝春秋のホームページに掲載されています。
http://www.bunshun.co.jp/book/kyouryu/
ラベル:恐竜
posted by 【電脳呆人】不純総合研究所 at 01:36| Comment(2) | TrackBack(0) | 自然科学交遊会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年04月06日

その道路、必要ですか?

2008年4月1日、長年続いてきた揮発油税・自動車取得税などの暫定税率が期限切れとなりました。ガソリンの価格は揮発油税と地方道路税をあわせて、1リットルあたり約25円引き下げられたことになります。
原油高をはじめとする、物価上昇に直面している国民生活にとって歓迎すべき事態ですが、一方で地方自治体の首長からは「必要な道路が造れない」と暫定税率復活を強く求める声が上がっています。



この高速はいらない。

日本中で計画されている高速道路、果たしてそれらは必要な道路なのか。ちょっと古い本(2002年刊)ですが、気になったので読んでみました。
著者・清水草一(またの名をMJブロンディ)氏は、自動車雑誌を中心に活躍しているライターです。『港区ではベンツがカローラの6倍売れている』、『フェラーリがローンで買えるのは、世界で唯一日本だけ!!』などユニークなタイトルの著作で知られ、道路問題にも積極的に取り組んでいます。

清水氏は、全国各地の高速道路計画地の既存道路を実走して、その区間の高速道路の必要性を検証しました。
高速道路の必要度は、1.渋滞緩和効果、2.時間短縮効果、3.ネットワーク効果(他の路線と接続効果)、4.地域振興効果として採点しています。その地域に有力な産業や魅力的な観光地がなければ、高速道路はかえって人口を吸い出す結果ともなりかねません。
また、道路建設費が料金収入でペイするかどうかは、コストパフォーマンス指数として評価しています。ただ、道路は公共財ですから、必要度が高ければ収入は多くなくとも建設は進めるべきです。

まず検証されるのは北海道。高速並みのペースでスムーズに流れる立派な国道があるのに、並行して高速道路を建設しても、わずかな時間短縮のために料金を払うドライバーはいません。
「北海道には、これ以上高速道路はいらない」と主張する清水氏は、80〜90km/hの最高速度を許容する快速国道を提案しています。既存の国道の歩車道分離を徹底し、中央分離帯を整備して、高速道路並みに流れるようにするのです。一方、住宅地や商業地を通過する部分は、制限速度を抑えて取り締まりも強化し、安全を確保します。本書にはこの快速国道が、高速道路の必要度が低い地域の代替案としてたびたび登場します。

日本で最も道路整備が遅れているという、東国原英夫知事の宮崎県はどうでしょうか。
本来は直線的に建設されるべき高速道路ですが、鹿児島市と宮崎市を結ぶ東九州自動車道のルートは、地形に関係なく不自然に遠回りしているのです。「わが町にも高速を」の声に応えようと、それぞれの地方都市を通過させた「いらない高速道路の見本」だと清水氏は酷評しています。

清水氏が最も整備が必要だと訴えるのは、慢性的な渋滞に悩まされる首都高速道路です。建設コストは莫大ですが、それでも最優先で取り組むべしと。
ただし、首都圏の慢性的な渋滞を根本的に解決するには、東京一極集中の見直しが求められるでしょう。清水氏は理想的な道路環境にあるとして、名古屋への遷都論に触れています(皇居は東京に残し、政治は名古屋、経済と文化は東京と首都機能を分業)。

本書で論じられる日本全国の高速道路。その評価が妥当かどうかは、地元の読者ひとりひとりに判断していただきたいと思います。

(4月1日読了)

【関連サイト】清水草一オフィシャルサイト
posted by 【電脳呆人】不純総合研究所 at 23:40| Comment(6) | TrackBack(1) | 政治・経済交遊会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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