2008年05月04日

生物界という密室(クローズド・パラダイス)

本格ミステリを打ち倒そうとする生意気な新人が現れた…有栖川有栖氏の推薦文が目を惹く、メフィスト賞受賞作。
ずっと気になっていたのですが、主人公が美少年双子探偵(これって美少年萌えのやおい小説?)、そして珍妙なペンネーム(汁しるもの?)のせいで手に取ることを敬遠していました。
ちらっとめくってみた最終ページの参考文献には、進化論や生物学の本。もしかしたら面白いのかも…ようやく読む決意をしたのです。

『パラダイス・クローズド THANATOS(タナトス)』
著者は汀こるもの氏。
プロフィールには熱帯魚の飼育暦が並んでいます。



パラダイス・クローズド

黒服をまとい遺体の前で般若心経を唱える、17歳の立花美樹(よしき)。彼の行く先々では、なぜか死亡事故・自殺・殺人事件が起こります。あまりにもその頻度が多いため、彼はインターネット上で死神(またの名をタナトスきゅん)と呼ばれる有名人です。
そんな兄のせいでたびたび死に遭遇し、事故や事件の証人として裁判所に出廷しているうちに、高校生名探偵となってしまった双子の弟・立花真樹(まさき)。捜査一課・交通課・地裁の常連の彼は、どんなに無残な遺体であっても平然と向き合います。

小笠原諸島の無人島を買い取って別荘を建てた、人気ミステリ作家の大倉阿鈴(あべる)。彼は豪邸「水鱗館」へ作家仲間を集めたパーティに、特別ゲストとして本物の死神・立花美樹を招きたいと言います。
人の死とストーカー被害を避けるため引きこもり生活を続ける美樹が、なぜパーティに出かける気になったのか。それは大倉邸に立派なモナコ水槽があったからです。
もちろん弟の真樹も一緒。そして二人のボディガードとして巡査部長・高槻彰彦が同行します。

モナコ水槽とは、嫌気性細菌が水質を浄化することで長期間換水を不要とする、自然の物質循環サイクルを再現した水槽です。
美樹の趣味は熱帯魚飼育。大倉自慢のモナコ水槽の前で、美樹は生命の歴史を長々と語り始めます。嫌気性生物の世界だった原始地球、光合成を行うシアノバクテリアによって生まれた酸素、ミトコンドリア共生説…
自然界の循環を閉じ込めたモナコ水槽は、いわば密室。美樹の語りは、もちろん単なる薀蓄ではなく、この物語の世界観のベースとなっています。

さて水鱗館の主・大倉は、自室で頭を銃弾に撃ち抜かれた遺体で発見されます。水鱗館の部屋はすべて内側にしか鍵がなく、現場は密室でした。
本土から遠く離れた孤島に電話機はなく、携帯電話は圏外。唯一の通信手段であるインターネットも、大倉のパソコンまでもが銃弾に破壊されてしまい使えません。
まさに本格ミステリの舞台が整いました。

この先、未読の方はご注意


posted by 【電脳呆人】不純総合研究所 at 23:12| Comment(0) | TrackBack(0) | 文学・小説交遊会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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