2008年09月29日

神の島は宝島

21世紀の今日になっても、人が立ち入ることを禁じられた「神の島」。
そこでは数千年前以上から祭祀が執り行われ、人々の祈りがいまも息づいています。



宗像大社・古代祭祀の原風景 正木晃 著

玄界灘の荒波に浮かぶ、福岡県沖ノ島
全島が宗像大社の神域であり、島への立ち入りは厳しく制限され、上陸する際には海中で禊を行わなければなりません。しかも女人禁制です。
宗像大社は沖津宮・中津宮・辺津宮の三社から成り、それぞれ田心姫・湍津姫・市杵島姫という女神を祀っています(宗像三女神)。三社のうち、沖ノ島にあるのが沖津宮です。
海洋豪族・宗像氏は、航海の安全を祈願するとともに、海上交易を支配していました。天武天皇の妃を輩出した宗像(胸形君)徳善の陵墓と考えられている宮地嶽古墳は、石室の規模、副葬品の豪華さともに天皇陵クラスです。

沖ノ島は宝の島でもあります。
鏡・刀剣・金細工など、国宝なんと8万点。質・量ともに、畿内政権の巨大古墳の副葬品を凌駕します。出土品のなかには遥かペルシアに由来するガラス製品も含まれており、「海の正倉院」と呼ばれる由縁です。
これほどの豪奢な品々が盗掘に遭うことなく今日まで遺されてきたのは、沖ノ島が神の島として畏怖されてきた証に他なりません。

著者の正木晃氏は歴史学者でも考古学者でも神道研究者でもなく、密教の研究者というのが本書の面白いところ。作家・夢枕獏氏との対談も掲載されており、沖ノ島の魅力と神秘を、学問の壁を超えて縦横無尽に語りつくしています。

9月26日、宗像・沖ノ島と関連遺産群は、新たに世界遺産の国内候補に登録されました。
縄文時代からの祭祀の痕跡が、タイムカプセルのように今も残る沖ノ島。貴重な遺跡と亜熱帯植物の原生林が護られてきたのは、人の立ち入りが禁じられてきたからこそ。
世界遺産になっても、絶対に観光地化して欲しくありません。

宗像大社公式ホームページ

(9月28日読了)


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2008年09月25日

新型プリウス・スクープ写真【走行テスト】

【次期プリウス】最新スクープはこちら



不純文學交遊録は、次期(3代目)プリウスの最新情報を日本の自動車雑誌よりも早く、海外サイトから紹介しています。

これまでスクープされた次期プリウスのテストカーは、すべて新デザインの17インチホイールを履いていました。今度は15インチホイールでの登場です。
2010 Toyota Prius spotted by phone! (auto123.com)

相変わらず厳重に擬装されていますが、リアのエクストラウインドゥとインテリア形状から、次期型プリウスだとわかります。ボディカラーはシルバーのようです。
新デザインの15インチホイールは、二股になった5本スポーク。市販時には現行型と同様、これに樹脂製のリングが被さるのでしょう。
気になったのは、このテストカーにはEMV(エレクトロマルチビジョン)が無いこと。以前紹介した17インチ仕様のテストカーでは液晶画面があった位置に、音楽CD用のスロットらしきものがあります。
現行型ではナビゲーションの有無に関わらず、EMVは標準装備。そうなると新型のエネルギーモニターはメーターパネルに内蔵?それともEMVが付いて無いのはこのテストカーだけ?

こちらのボディカラーは、ホワイト。
スライドショーでは、さまざまな角度から見ることができます。
Spy Shots: 2010 Toyota Prius (RoadandTrack)

もう一台、15インチホイール仕様のテストカーの写真があります。
2010 Toyota Prius spy shots Sept08 (MOTOR AUTHORITY)

ホイールの色はシルバーで、市販時はこちらでしょう。
写真が不鮮明なので、最初は現行型の15インチホイール(6本スポーク)のリングを外したものかと思ったのですが、よく見ると5本スポークで、やはり二股になっています。

これまで新型プリウスのスクープ写真を数々見てきましたが、自動車雑誌の予想イラストのような、フロントバンパー左右の巨大なエアインテークは無さそうです…

【不純文學交遊録・過去記事】
新型プリウス・スクープ写真【インテリア】
新型プリウス・スクープ写真【エクステリア】
新型プリウス・スクープ写真【2008年7月】
新型プリウス・スクープ写真【2007年9月】
新型プリウス、発売延期。
posted by 【電脳呆人】不純総合研究所 at 22:41| Comment(2) | TrackBack(0) | 不純自動車交遊会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年09月24日

人間と動物の境界

人間とチンパンジーの遺伝子は、98%が共通だと言われています。
人間と類人猿が遺伝子的に近いばかりか、言語を解するボノボ、道具を使って餌を採るチンパンジー、イモを洗うニホンザルなどが報告されています。知性や文化の存在が、人間と他の動物を区別する明確な基準とは言い難くなってきました。

科学技術は、あらかじめ優秀な遺伝子を持ったデザイナー・ベビーや、クローン人間の誕生を可能にしようとしています。
あるいはコンピュータやロボットの進歩は、人間のような感情を持った機械を生み出すかもしれません。果たして「彼ら」を人間と呼ぶべきなのでしょうか。
もっと身近な例を挙げれば、中絶された胎児は人間なのかという問題もあります。

人間とそうでない者との境界は、どこにあるのでしょうか。



人間の境界はどこにあるのだろう? フェリペ・フェルナンデス=アルメスト 著

ふと目に入ったタイトルが気になった一冊。

人間(=主として西欧人)が、類人猿や異民族をどのように捉え、人間の境界をどう考えてきたのか、その歴史が綴られています。
本書の読みどころは、西欧人の「未開人」に対する認識でしょう。そこには差別的なものばかりではなく、文明に侵されていない純粋な存在としての憧れもあったようです。しかし西欧人中心の好奇な視線は否定できず、おぞましく残酷な事例は少なくありません。人種差別という世界史の暗黒面を、克明に描いています。

最終章では遺伝子工学とロボティクスによる人間の未来像について語られますが、著者独自の意見らしきものはなく、期待はずれでした。
結局、人間の境界を定義することは難しいというのが結論のようです。

訳者は、動物行動学の著訳書を数多く出している長谷川眞理子氏。
あとがきで長谷川氏は、著者の視点は人間と動物を論理で分けようとする西欧的なもので、日本人のような生き物への共感がないと指摘しています。
それはもっともなのですが、水子供養を日本人の生命観の表れとして挙げるのはどうかなと。水子供養の歴史って、結構浅いと思うのですが。

(9月23日読了)

【不純文學交遊録・過去記事】
赤ちゃん売ります
ヒトがモノになる…
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2008年09月15日

隠された「ニッポン」

私たちのすむこの国は、日本と書いてニッポン(またはニホン)と読みます。
古代支那の歴史書は、日本を倭国と呼んでいました。日本の国号が使われるようになったのは、7世紀だと考えられています。
日本にはヒノモトという読み方もあります。日本の二文字に隠された、日本国成立の歴史とは…今回は民俗学・地名学の大家、谷川健一氏の一冊です。



隠された物部王国「日本」 谷川健一 著

大和朝廷のはじまりを告げる、神武東征神話。イワレヒコ(神武天皇)が大和に入った時、そこは既に同じ天孫族であるニギハヤヒが支配していました。
ニギハヤヒは物部氏の祖神。つまり記紀は、神武天皇以前は物部氏が大和の支配者だったことを認めているのです。

谷川氏は、日本列島の統一に中国・朝鮮半島の動乱が影響していると指摘します。
2世紀の朝鮮半島の動乱が九州に「倭国大乱」をもたらし、百余国あったクニが三十余りの邪馬台国連合を形成し、女王・卑弥呼を共立しました。この時、九州を出て大和に進出した集団が物部氏だというのです。
そして高句麗・新羅・百済の三国が鼎立した4世紀初頭、これに呼応した邪馬台国連合の再編が神武東征神話に反映されていると谷川氏は考えます。

谷川氏は物部氏の勢力が四国にあったことに触れていますが、九州から大和へ入る過程でどのような土地と部族を併合していったのかは、具体的に書かれていません。神武東征についてもそうです(物部氏も神武天皇も、最初から船で一直線に大和を目指したのでしょうか?)。
もっとも、これは多くの日本史の本について言えることですが。

本書には白鳥伝説、大嘗祭の秘密、南島の信仰など、谷川民俗学のエッセンスが散りばめられています。
九州から東遷した物部氏と天皇家、そして大和の先住民たる蝦夷。日本の重層的な成り立ちを感じる一冊です。

(9月15日読了)


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posted by 【電脳呆人】不純総合研究所 at 20:10| Comment(41) | TrackBack(0) | 歴史・民俗交遊会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年09月14日

噂・うわさ・ウワサ

打ち切られたテレビ番組、未完のまま放置された建造物、それらの背後にうごめく陰謀…都市伝説と称される様々な噂話は、インターネットの普及によって瞬時に全国へと広がります。
「ネット上の情報を鵜呑みにするな、絶対に裏を取れ」
新聞社出身のジャーナリストが、まことしやかに語られる都市伝説の背景に迫ります。



封印されたミッキーマウス 安藤健二 著

タイトルの「封印されたミッキーマウス」とは、1987年に滋賀県の小学校の卒業制作で描かれたミッキーマウスの絵が、ウォルト・ディズニー・プロダクションの抗議によって消されてしまったという実際にあった事件のことです。
著者・安藤健二氏は大津市まで足を運び、当時の卒業生や担任の教師に取材しています。

著作権のもつれで封印された漫画雑誌やテレビ番組、一時マスコミを騒がせた有名人のその後については、正直言って「しょうもない」ネタでした。
しかし我慢して読み続けていくと、興味深い話題が出てきます。
秀逸なのは、タイタニック号沈没事件から生還した日本人(ミュージシャン・細野晴臣氏の祖父)が、当時「卑怯者」呼ばわりされた理由を追った話。意外な真相に驚きます。

前述の「タイタニック号」と「佐世保女児殺害事件」は、当初一冊の本にするつもりだったのですが、出版社からは「地雷の上を裸足で歩くようなもの」「そんな結論では本にできない」と了解が得られなかったのだとか。
出版業界には、まだまだタブーがあるのですね…

(9月14日読了)
posted by 【電脳呆人】不純総合研究所 at 23:34| Comment(0) | TrackBack(0) | 芸術・娯楽交遊会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年09月08日

太陽の道

古代の遺跡や聖地とされる場所は、ある一定の法則に従って配置されていると言われます。ヤマトの古墳や神社はほぼ一直線上に並んでおり、その線を延長すると、東は伊勢の斎宮から西は淡路島の伊勢までを結ぶ北緯34度32分のラインが浮かび上がるという…これを太陽の道と名付けたのが、古美術写真家の小川光三氏です。
小川氏の説を基にした番組は、1980年にNHK特集で放映されました。本書は30年に及ぶ氏の研究をまとめたものです。



ヤマト古代祭祀の謎 小川光三 著

日本の太陽信仰の成立には、稲作があるといいます。
稲は本来、日本には自生していない亜熱帯の植物です。稲を北限で栽培する日本では、稲作は春から秋の間の一定の期間内に行われなければなりません。
春分になると田起こしを始め、秋分になると収穫する。春分‐夏至‐秋分‐冬至という太陽の運行を知ることが、日本の太陽信仰のベースです。太陽の動きを読んで農業を指導する人を「日知り」と呼び、これが聖(ひじり)の語源です。

初期ヤマト王朝が生まれた三輪山。北麓には纏向(まきむく)遺跡と箸墓古墳があり、ここが邪馬台国だったとする説があります。
それに対し小川氏は、邪馬台国は二世紀から存在していたが、纏向が「ヤマト」と呼ばれるようになったのは三世紀後半であって、それまでこの地は「出雲」だったと言うのです。
大和盆地東部の都祁(つげ)には、大和地方で唯一「ヤマト」の地名を残す小山戸(おやまと)があり、小川氏はここが邪馬台国であったと考えています。弥生時代の大和盆地は底湿地で、多くの人が住めるようになったのは、古墳時代に入って灌漑農業が行われてからだそうです。それまでは都祁のような高原台地の方が、居住に適していました。
出雲神を祀る三輪山が本来の「出雲」であって、出雲大社のある「出雲国」は考古学的には後進地域であり、天孫族から三輪山麓を追われた出雲族が移り住んだ場所に過ぎない…邪馬台国も出雲国も実は大和盆地のなかの狭い地域にあったとなると、なんだかスケールの小さな話ですね。

前方後円墳は、古代支那の数学書『周髀算経』に基づいて設計されていると小川氏は言います。
古墳の周濠は灌漑用水に使われたとして、古墳が単なる権力者の墓ではなく、稲作とともに生まれた施設だとの指摘は興味深いものでした。

(9月7日読了)
posted by 【電脳呆人】不純総合研究所 at 19:24| Comment(8) | TrackBack(0) | 歴史・民俗交遊会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年09月07日

新たな冷戦

北京オリンピックが開幕した2008年8月8日、グルジア共和国は同国からの分離独立を図る南オセチア自治州に武力侵攻、これに対しロシア連邦が軍事介入しました。
ロシアは南オセチア自治州とアブハジア自治共和国の独立を承認し、グルジアはロシアとの外交関係断絶を表明。事態は混迷を深めています。

スターリンの出身国として知られるグルジア。ソビエト社会主義共和国連邦の崩壊によって独立し、親欧米路線を強めています。
旧東欧諸国が次々とNATO(北大西洋条約機構)に加盟し、ポーランドにはアメリカのMD(ミサイル防衛システム)が導入されました。欧米諸国の包囲網に警戒を強めるロシア。これは新たな冷戦の幕開けなのでしょうか。



ロシア語られない戦争 常岡浩介 著

ロシアとグルジアの対立は、チェチェン紛争とも無関係ではありません。
グルジアはチェチェン紛争に中立的な立場をとっていますが、チェチェン独立派がグルジア国内を移動することを事実上黙認しています。
チェチェン人はイスラム神秘主義(スーフィ)を信奉する、カフカース地方(黒海とカスピ海に挟まれた地域)の先住民族。チェチェン独立派は、自らを聖戦士(ムジャヘッド)と呼んでいます。

日本で報道されるチェチェン紛争はロシア側の主張ばかりであるとして、チェチェン・ゲリラに従軍取材したのは、ジャーナリストの常岡浩介氏。
数々の戦地を訪れてきた常岡氏にとっても、チェチェンでの取材は生死の淵をさまよう苛酷なものでした。三週間も食糧補給がなく、極限の飢えと渇きのなかでカフカス山脈を行軍。その間、仲間たちは敵弾で次々と命を落とします。
生き残った者も、その後の戦闘やロシア軍の掃討作戦によって「殉教」したそうです。

本書は終始チェチェン人側の立場から書かれており、著者自身、この本一冊でロシアについての理解を完結すべきではないと語っています。それでもロシアの民族紛争の実態に迫った、貴重な記録であることに変わりはありません。
巻末には、2006年11月にロンドンで放射性物質ポロにウムを盛られて暗殺されたアレクサンドル・リトビネンコ氏のインタビューを掲載。FSB(旧KGB)の不気味さが印象に残ります…

(9月1日読了)

【不純文學交遊録・過去記事】
リトビネンコ氏は、なぜ殺された?
ロシアより“哀”をこめて
posted by 【電脳呆人】不純総合研究所 at 23:05| Comment(0) | TrackBack(0) | 政治・経済交遊会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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