2008年10月27日

心霊探偵コナン

名探偵シャーロック・ホームズの生みの親、アーサー・コナン・ドイル卿。
彼はホームズのように科学的・合理的な人物かと思いきや、実は高名な心霊主義者でした。少女が撮った妖精の写真の真偽をめぐって騒動となったコティングリー妖精事件で、ドイルは写真が本物だと信じていたのです。
ヴィクトリア朝(1837年〜1901年)のイギリスは、第一回万国博覧会の開催やダーウィンによる進化論の発表など科学技術が進展する一方で、心霊主義がブームとなっていました。

さて、今回の交遊は・・・
20世紀初頭のロンドンとニューヨークを舞台に、心霊主義者コナン・ドイルが大活躍する物語です。他に登場人物は、脱出王ハリィ・フーディーニ、作家のハワード・フィリップス・ラヴクラフト、ブードゥの女王マリー・ラヴォー、魔術師アイレスター・クロウリーなど。オカルティズムに詳しい人なら涎を垂らさんばかりの豪華キャストです。



神秘結社アルカーヌム トマス・ウィーラー 著

1919年、ロンドン。
大英博物館から駆け出してきた大柄な老人が、T型フォードに跳ねられて死亡しました。老人の名はコンスタンティン・デュヴァル。各国の王侯にも影響力を及ぼす偉大なる神秘主義者です。彼は秘密結社「アルカーヌム」を組織しており、コナン・ドイルもその一員でした。
デュヴァルの死に不審を抱いたドイルは、大英博物館に乗り込みます。博物館の奥にあるデュヴァルの隠し部屋、そこにはありとあらゆるオカルトの秘宝が収められていました。しかし一ヶ所、ガラスが割られている場所があります。

無くなっていたのは旧約聖書の偽典「エノクの書」でした。敵の目的は何なのか。エノクの書の秘密を探るべく、ドイルはニューヨークへ渡ります。
ドイルが訪ねたのは、若き悪魔学者にして作家のH.P.ラヴクラフト。やはりアルカーヌムのメンバーです。しかしラヴクラフトは、ニューヨークを震撼させている連続猟奇殺人事件の容疑者として囚われの身となっていました。
ドイルは無事ラヴクラフトを救出できるのか。
デュヴァルからエノクの書を奪ったのは何者か。
そしてエノクの書に隠された「神のあやまち」とは…
実在の人物たちが、ニューヨークを舞台に決死の冒険を繰り広げます。怒涛のアクションと精緻な時代考証に彩られた、伝奇ホラー活劇です。

本作は、訳者あとがきを先に読むことをオススメします。
冒頭でT型フォードが登場しますが、ドライバーは急ブレーキを掛けようとして3つのペダルを踏んでいます。なんだかおかしな描写のようですが、訳者によるとT型フォードは3つのペダルを同時に踏むことで最大の制動力が得られるのです。
登場人物と時代背景を理解することで、本作をより一層楽しむことができます。

著者トマス・ウィーラーは、ハリウッドの人気脚本家。これが小説デビュー作で、映画化が決定しています。
登場人物の名前が覚えにくいとか情景を想像しにくいとかで海外作品を敬遠していた人(私のこと)でも、すぐに引き込まれる魅力的な作品です。
秋の夜長のお供にどうぞ。でも夢見が悪いかもしれません…(笑)

(10月27日読了)


posted by 【電脳呆人】不純総合研究所 at 23:41| Comment(4) | TrackBack(1) | 文学・小説交遊会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年10月20日

教科書は変わる

髪を振り乱し馬に跨った勇猛な足利尊氏像。有名なこの絵のモデルは、近年では尊氏の執事であった高師直だとする説が有力です。
国宝で肖像画の傑作と名高い源頼朝像にも、尊氏の弟・足利直義ではないかとの新説が出されています。
大きく変わりつつある歴史の常識。高校の日本史の参考書が大幅改訂されたことも話題となりました(池田信夫blog 変わる日本史の常識)。

私たちが学んだ日本史で最も大きな見直しが迫られているのは、645年の大化の改新でしょう。
天皇をないがしろにして専横の限りを尽くした逆臣・蘇我入鹿を、中大兄皇子(後の天智天皇)・中臣鎌足(後の藤原鎌足)らが暗殺し、律令国家の基礎を築いたとされる出来事です。
現在では蘇我入鹿暗殺事件を乙巳の変、翌年からの政治改革を大化の改新と呼ぶようになっています。



「大化改新」隠された真相 谷口雅一 著

奈良県明日香村の甘樫丘東麓遺跡は、蘇我入鹿の邸宅跡だと考えられています。
甘樫丘の入鹿邸と蘇我氏の氏寺・飛鳥寺そして蘇我馬子の邸宅は、天皇の宮殿を取り囲むように防衛する要塞だった…最新の発掘成果をもとに大化の改新を捉え直す番組が、NHKスペシャルで放映されました。本書はその書籍化であり、著者は番組のディレクターです。

大化の改新は本当にあったのか、異論は古くから出されていました。
改新の詔には地方行政単位として「郡」という語が出てきます。しかし「郡」が用いられたのは後世の大宝律令以降であり、当時の表記は「評」でした。
日本書紀は漢字で書かれていますが、漢文の原音に忠実な部分と、明らかに原音を知らない者が書いた部分とがあります(森博達氏の説)。
原音と異なる表記の部分は、後世の加筆・潤色による疑いがあり、劇的な入鹿暗殺シーンがまさにそうなのです。
(長槍を構えて待機していた中大兄皇子が、なぜか入鹿に剣で斬りつけています)

「韓人、鞍作臣(入鹿)を殺しつ」(『日本書紀』古人大兄皇子の弁)
韓人とは、韓すなわち百済を支持する人物・中大兄皇子を指すというのが本書の解釈です。
百済は古くから日本の友好国であり、中大兄皇子は滅亡した百済の王子・豊璋を日本に匿い、百済再興を支援するために白村江で唐・新羅連合軍と戦います。
(中大兄皇子が、そこまで百済に肩入れする理由はなに?)
7世紀の大陸には隋・唐という強大な統一王朝が誕生し、朝鮮半島にも圧力を及ぼしていました。緊迫する大陸情勢を探るために蘇我氏政権が送ったのが遣隋使・遣唐使であり、要塞のような飛鳥の都は隋・唐の侵略に備えて築かれたと考えられます。
全方位外交を目指す開明派の蘇我入鹿と、百済との同盟を重視する保守派の中大兄皇子。クーデターの背景には外交政策の違いがあったようです。
(白村江で日本・百済連合軍は大敗。「大化の改新」とは「大過の反動」だった?)

本書の結末では、歴史教育において大化の改新が重要視されてきた理由を推理しています。

(10月20日読了)

【不純文學交遊録・過去記事】
黒幕は誰だ?
posted by 【電脳呆人】不純総合研究所 at 16:36| Comment(2) | TrackBack(1) | 歴史・民俗交遊会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年10月16日

【完全版】新型プリウス・スクープ写真

【次期プリウス】最新スクープはこちら


3代目プリウス





お待たせしました!
これが次期型(3代目)プリウスです。


BREAKING NEWS! 2010 Prius Photos posted on PriusChat First! Confirmed real!
PRIUSCHAT.COMより)
全体像の他、フロントのアップ、インテリア、メーター、オーバーヘッドコンソール(ルームランプ周辺)の5枚の写真が掲載されています。
“PRIUSCHAT”って、日本でいうプリウスマニアみたいなものでしょうか?

自動車雑誌の予想イラストには、フロントバンパー左右に巨大なエアインテークが描かれていましたが、そこにあったのはやはりライトでした。上段がウインカー、下段がフォグランプです。
ただし、バンパー左右が大きく張り出しているのは正解。ヘッドライト上縁に切り込みが入っているのも正解です。
自動車雑誌のイラストレーターさん、結構精度は高いですね。
サイドビューは上下に2本、シャープなキャラクターラインが走っているのが特徴。
アルミホイールのデザインから、写真のモデルはツーリング仕様と思われます。
詳細なスペックは、2009年1月のデトロイトモーターで明らかになるでしょう。



【不純文學交遊録・過去記事】
新型プリウス・スクープ写真【走行テスト】
新型プリウス・スクープ写真【インテリア】
新型プリウス・スクープ写真【エクステリア】
新型プリウス・スクープ写真【2008年7月】
新型プリウス・スクープ写真【2007年9月】
新型プリウス、発売延期。
posted by 【電脳呆人】不純総合研究所 at 23:55| Comment(4) | TrackBack(0) | 不純自動車交遊会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年10月14日

昔話は「心のアリバイ」

「昔、昔、あるところに…」
昔話には、子供にはとても聞かせられない恐ろしい背景が隠されています。
(例えばカチカチ山には、子供向けバージョンと残酷バージョンがあります)

歴史上の人物や事件に意表をついた新解釈を加えたミステリ(バカミス?)を多く発表している鯨統一郎氏には、女子大生がグリム童話になぞらえて難事件のアリバイ崩しを展開する『九つの殺人メルヘン』という作品がありました。続編は日本の昔話です。



浦島太郎の真相 鯨統一郎 著

日本酒をワイングラスに注いで出す嫌味なバー「森へ抜ける道」。
常連客は、元刑事で探偵事務所を営む工藤とフリーライターの山内。
それにバーのマスター・島を加えた3人は、42歳の厄年トリオ(ただし前作での年齢)。
そして週に一度現れて、ひとりでグラスを傾けるのは大学でメルヘンを研究している清楚なお嬢様、桜川東子(本作では大学院生)。

工藤が抱える不可解な事件。それらはいずれも容疑者に犯行へと至る動機が見当たりません。桜川東子は犯人が秘める「心のアリバイ」を崩します。
アリバイ崩しのヒントとなるのは、いつも日本の昔話。
「浦島太郎」「桃太郎」「カチカチ山」「さるかに合戦」「一寸法師」「舌切り雀」「こぶとり爺」「花咲爺」の8つ物語に隠された、登場人物の心の闇を暴きます。
ウソだとわかっていながら、ついつい信じてしまいたくなる鯨統一郎氏の新解釈です。

厄年トリオの酒の肴は、いつも懐かしの映画やアニメなど文字通り「昔話」ばかり。
1970年代に青春時代を過ごした人は、思わずニヤリとする内容でしょう。
もちろん、わからない世代の方でも十分楽しめます。

(10月13日読了)

【不純文學交遊録・過去記事】
♪ずいずいずっころば〜し



九つの殺人メルヘン
posted by 【電脳呆人】不純総合研究所 at 19:45| Comment(0) | TrackBack(1) | 文学・小説交遊会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年10月13日

地球温暖化リテラシー

今年のノーベル賞は、日本人が4人受賞しました。
物理学賞には素粒子理論(対称性の破れ)で南部陽一郎小林誠益川敏英の三氏、化学賞には緑色蛍光タンパク質を発見した下村脩氏が選ばれています。
長らく品切れになっていた受賞者の著書にも問い合わせが相次ぎ、重版が決定したようです。
昨年は、平和賞にアル・ゴア元アメリカ副大統領とIPCC(気候変動に関する政府間パネル)が受賞したことで話題になりました。しかし彼らの受賞理由となった地球温暖化論に対しては、様々な異論が出されています。

メディアリテラシーという言葉があります。リテラシーとは読み書き能力の意味で、メディアを使いこなす能力と解釈されます。
地球温暖化論は、私たちのメディアリテラシー(さらには科学リテラシーと政治リテラシー)が試される格好のテーマではないでしょうか。



地球温暖化論のウソとワナ 伊藤公紀 渡辺正 著

本書を読んでまず驚かされるのは、気温測定がいかに杜撰であるかです。
日本国内の観測サイトで信頼できるデータが得られるのは、3ヶ所しかありません。

二酸化炭素の増加が地球の気温を上昇させるのはホントです。
そして20世紀後半以降の二酸化炭素の増加の多くは、人為的要因でしょう。
ただし最大の温室効果ガスは水蒸気であり、地球が温暖なのは大部分(90%以上)が水蒸気のおかげなのです。二酸化炭素が現在の2倍になったときの気温上昇値(気候感度)は、1.6℃だといいます。

地球の気候を変動させる要因は、温室効果ガスだけではありません。
二酸化炭素を吸収するはずの緑地が増えると、気温が上昇します。これは緑色のアルベド(反射率)が地面よりも低く、太陽光を吸収するからです。
雲は太陽光を反射し、雲の増加は気温を低下させます。雲の発生には宇宙線が影響しており、宇宙線の強弱は太陽磁気によって変化します。
大気中のエアロゾル(微粒子)もまた、気温低下の要因です。着色エアロゾルは逆に、気温を上昇させます。
気候変動の要因は他にも太陽の活動、火山活動、北極振動、ミランコビッチ・サイクルなど数多くあります。気候はあまりにも複雑であり、IPCCのコンピュータ・シミュレーションでは再現できません。科学には限界があるのです。

温室効果ガスの削減目標を定めた京都議定書は、EU(ヨーロッパ連合)に有利な1990年を基準に定められています。大量排出国が批准しなかったり、発展途上国に削減目標がなかったりと、結局は日本だけが実質的な削減義務を負う不平等条約です。
排出権取引とは、排出量を超過した国が達成した国から排出権を買うだけで、実質的に二酸化炭素が削減されるわけではありません。
サブプライムローン崩壊に端を発した世界的な金融不安と同様、近い将来、科学的根拠のない排出権取引が崩壊して世界経済を混乱に陥れるかもしれません。

地球温暖化論のウソ(科学的な誤り)については伊藤氏が、ワナ(政治的な思惑)の部分を渡辺氏が執筆しています。
ウソとワナという扇動的なタイトルが付いていますが、本書の内容は極めて冷静です。
データが豊富で、地球科学に関心を持つ全ての方にオススメできます。
ただ、誤字が多数見受けられるのが残念。

(10月12日読了)

【不純文學交遊録・過去記事】
マルクスさんとマルサスさん
地球寒冷化に備えよ!
温暖化詐欺にご用心!(前編)
温暖化詐欺にご用心!(後編)
地球温暖化は繰り返す(前編)
地球温暖化は繰り返す(後編)
マイナス6%の覚悟
地球の現代史・不確かな真実V
不確かな真実U
不確かな真実
悲観も楽観も、いけません。


※注意事項
ラベル:地球温暖化
posted by 【電脳呆人】不純総合研究所 at 19:38| Comment(23) | TrackBack(2) | 自然科学交遊会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年10月06日

マルクスさんとマルサスさん

フリーター・派遣社員などの不安定な雇用状態にある人のことを、最近はプレカリアートと呼ぶそうです。
※プレカリアート=プレカリオ(不安定な)+プロレタリアート(労働者)

格差社会が論じられるなか、プロレタリア文学の旗手・小林多喜二の『蟹工船』がブームになり、日本共産党の党員数が増加しています。
ちなみに『蟹工船』が発表されたのは、世界恐慌が始まった1929年です。そして2008年、世界経済はアメリカ発の金融危機に揺れています。
格差社会で復活したマルクス。原材料・食糧価格の高騰で、今度はマルサスが復活するのでしょうか?



科学者の9割は「地球温暖化」CO2犯人説はウソだと知っている 丸山茂徳 著

現在、地球が温暖化傾向にあることは事実です。
しかしながら、地球温暖化CO2主因説を否定する科学者は少なくありません。
プルームテクトニクス(マントルの対流運動による地球内部の変動)を提唱した世界的な地質学者・丸山茂徳氏は、地球惑星科学連合学会のシンポジウムで、地球温暖化に関するアンケートをとりました。その結果、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)が主張するように、21世紀の地球が一方的に温暖化すると答えた科学者はわずかに1割。2割の科学者は21世紀は寒冷化すると予測しています(残りの7割はわからないと回答)。

地球温暖化の要因は、影響の大きい順に
@ 太陽の活動度
A 地球磁場
B 火山の噴火
C ミランコビッチ・サイクル(地球の公転周期と歳差運動)
D 温室効果ガス
温暖化のメカニズムについては前著『『地球温暖化』論に騙されるな!』を踏襲していますが、本書の方が図表が多くて解りやすいでしょう。
もちろん二酸化炭素の増加は温暖化の要因ですが、本書によると二酸化炭素が1ppm増えることによる気温の上昇は0.004℃でしかありません(現在の二酸化炭素濃度は0.038%=380ppm)。ただ、0.004℃の根拠については詳しい説明が欲しいところ。

実はこの本、タイトルに反して地球温暖化について書かれたのは第一章のみ。大部分は、丸山氏が最も懸念する人類の危機に充てられています。それは人口増加です。
1798年、トマス・マルサスは『人口論』で「人口は幾何級数的に増加するが、生活物資は算術級数にしか増加しない」と主張しました。
21世紀の現在、地球の人口は60億を超えました。このまま人口が増え続ければ、やがて石油の増産が追いつかなくなります(ローマクラブの予測では2020年)。
過去の人類の歴史は、資源・食糧の不足によって文明が衰退し、戦争を引き起こしてきました。丸山氏は太平洋戦争の原因も、政治家の責任や軍部の暴走ではなく、日本の人口増加にあるといいます。

いま必要なのは人口抑制策であり、そのためには世界統一政府が必要であると唱える丸山氏。アメリカを理想とし、軍事力を背景に全世界を民主主義化することを是とします。自らの理想社会を描こうとする余り、暴走。
生物が環境に適応するには多様性が必要ですが、一定の割合で犯罪者が存在することは「人間という生物の多様性のなせる業であり、健全な社会の証」という発言も。
まあ、学問の健全な発展には思想の多様性は保たれるべきですから…(笑)
「毒書」好きの方は大いに楽しめます。

(10月6日読了)

【不純文學交遊録・過去記事】
地球寒冷化に備えよ!
温暖化詐欺にご用心!(前編)
温暖化詐欺にご用心!(後編)
地球温暖化は繰り返す(前編)
地球温暖化は繰り返す(後編)
悪魔は目を覚ますのか?
マイナス6%の覚悟
地球の現代史・不確かな真実V
不確かな真実U
不確かな真実
悲観も楽観も、いけません。
ラベル:地球温暖化
posted by 【電脳呆人】不純総合研究所 at 23:34| Comment(39) | TrackBack(0) | 自然科学交遊会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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