2009年02月23日

メフィスト賞の傾向と対策

メフィスト賞は、数々の人気作家・異色作家を生み出してきました。
第一回受賞者で理系作家の代表格である森博嗣氏、小説の常識を逸脱した奇抜な作風の清涼院流水氏、セカイ系と呼ばれる西尾維新氏…
純文学系の賞(三島由紀夫賞)を獲得した舞城王太郎氏や佐藤友哉氏も、メフィスト賞の出身です。

講談社ノベルス『忍び寄る闇の奇譚』は、メフィスト道場と銘打って、3つのテーマで人気作家が競作しています。
カバー折り返しにはメフィスト賞の応募要項も書かれていて、メフィスト賞を目指す方への「傾向と対策」になるかも?



忍び寄る闇の奇譚

Round1・ボクのSF
はやみねかおる 『少年探偵WHO 透明人間事件』
コンビニエンスストアに現れた透明人間による強盗事件。警察とWHO少年は、とある玩具メーカーに乗り込みます。
初野晴 『トワイライト・ミュージアム』
大伯父の遺産である奇妙な博物館を相続した少年が、脳死になった少女を救出する物語。

Round2・フェティシズム・ホラー
西澤保彦 『シュガー・エンドレス』
甘味にとりつかれた男の話。序盤の文章がまどろっこしいのが難点。
真梨幸子 『ネイルアート』
インターネット掲示板の管理人を任された女性ライターが、ネット上の壮絶な遣り取りに翻弄されます。
いずれの結末も、ホラーとは恐怖ではなく「ホラ話」なんだと納得します(笑)

Round3・都市伝説
村崎友 『紅い壁』
夏休みの合宿所で起きた、女子高校生の変死事件。美術教師の失踪は、彼女の呪いなのか…
北山猛邦 『恋煩い』
少女たちのあいだで話題の、恋の願いを叶えるおまじない。それを実行してみると…

今回のお気に入りは、北山猛邦氏の作品でした。
彼は「物理の北山」の異名をとるほど、機械的な物理トリックを得意としています。物理トリックに特化した作品は、小説を読むというよりは問題を解いているようで、余り好きになれないのですが、北山氏の『『クロック城』殺人事件』はゴシックな雰囲気にあふれていて、満足できる読後感でした。『恋煩い』は、彼お得意の物理トリックではなく、意外なストーリー展開で読ませてくれます。
はやみねかおる氏の『少年探偵WHO』も、ミステリならではの仕掛けが充実していて楽しめました。

(2月22日読了)


posted by 【電脳呆人】不純総合研究所 at 20:30| Comment(0) | TrackBack(1) | 文学・小説交遊会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年02月16日

農政に「NO」を!(後編)

「農業に経済の論理を持ち込むべきではない」とか「一生懸命お米を作るお百姓さんは美しい」などと、情に訴える農業聖域論にはウンザリします。
農業は自由化すべきだと考えていた私が共感できたのは、20年ほど前に出会った叶芳和氏の著作です。残念ながら、最近目にした彼の名前は選挙の落選結果でした(笑)。脳衰症…じゃなかった、農水省を飛び出した山下一仁氏には、是非とも期待しています。



農協の大罪 山下一仁

ウルグアイ・ラウンドの農産物自由化交渉に対し、農協はコメの自由化によって、日本の文化や生態系が破壊されるとのキャンペーンを張りました。
確かに水田には、水資源の涵養や洪水の防止といった、経済的な指標では計れない重要な機能があります。しかしながら、日本の風土を守るべき水田の減反を推し進めてきたのは、他ならぬ農協なのです。
また、農協が保護してきた兼業農家は、農業に手間暇をかけないために、大量の農薬や化学肥料を使用しています。実は大規模な農家ほど、環境負荷は低いのです。

農業の担い手は農家でなくて構いません。農業を企業化し、大規模化・高効率化を進めるべきです。
「農業はキツイ、ダサイ」では、農家に後継者がいなくなります。一方で農家の出身でなくても、農業に就きたい人はいます。日本の農業を持続させるためにも、農業を企業化すべきなのです。
たとえ安全で低コストであっても、大規模な機械化された農場で、サラリーマンによって生産されたコメや野菜なんて認めないと言う貴方。そんな貴方は、昔ながらの手作業で丹精込めて作った、高級ブランド作物をどうぞ。
農業の工業化を推し進める一方で、顔の見える農業も維持すべきです。職人的なカリスマ農家は、農作業神事の伝承やグリーンツーリズムといった、農業の文化的側面をも担います。こういった農家の保護・育成には、補助金を投じても良いでしょう。
どちらも受け容れられないと言う方は、どこでどう作られたのか判らない輸入作物を食べてください(笑)

私は決して食糧安全保障だの、食糧自給率向上だのを掲げるつもりはありません。
農業にまつわる規制や利権を撤廃し、農業をやりたい人や企業が、やりたいように出来る環境をつくる。その結果、農業が活性化すれば良いのです。

(2月10日読了)

【不純文學交遊録・過去記事】
農政に「NO」を!(前編)
ラベル:農業
posted by 【電脳呆人】不純総合研究所 at 02:35| Comment(0) | TrackBack(0) | 政治・経済交遊会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年02月15日

農政に「NO」を!(前編)

相次ぐ食品擬装に毒入りギョーザ事件、世界経済を襲った食糧・原材料価格の高騰…私たちの食への不安はつのるばかりです。
しかし我が国の食糧自給率は、わずか40%(カロリーベース)。
こんな日本に誰がした?



農協の大罪 山下一仁

こんな本を待っていました!
日本の農業をダメにした農協農林族議員農林官僚。「農政トライアングル」の大罪が、いま暴かれます。

コメには輸入禁止に等しい、778%もの高関税が課されています。
WTO(世界貿易機関)はコメの高い関税を認める代わりに、日本が低関税で一定量のコメを輸入(ミニマムアクセス)することを求めています。汚染米の不正転売事件の背景にあったのが、このミニマムアクセス米でした。
農業協同組合(農協)が高い関税を維持したいのは、コメの高い国内価格を維持したいからです。コメが高く売れれば、農家に高い肥料や農薬が売れます。
高い米価を支えているのはコメの供給制限、つまり減反です。政府は減反した農家に対して、補助金を出しています。補助金の原資は私たちが納めた税金であり、消費者は税金を払って高いコメを買わされているのです。

コメの内外価格差が縮小した現在、778%もの関税は必要ありません。関税を引き下げて減反をやめれば、コメの価格は大きく下がります。そうなれば日本のコメにも競争力が生まれます。
平時にはコメを輸出し、緊急時に備えて自給率を高める…本書は、自由貿易と食糧安全保障は両立するとの主張です。
日本の農業のGDPは4.7兆円(2006年)ですが、これは農業保護額とほぼ同じ。つまり保護がなければ、日本の農業のGDPはゼロ%なのです。
無駄な農業補助金をやめれば、財政支出は削減され、食料品の価格も下がり、農業が活性化します。これぞ景気対策ではありませんか!

以上は、ほんの序の口。
金融や保険の分野においても、わが国トップレベルの巨大企業体である農協。その真の姿を明らかにする、中身の濃い新書です。

つづく
ラベル:農業
posted by 【電脳呆人】不純総合研究所 at 23:59| Comment(0) | TrackBack(2) | 政治・経済交遊会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年02月03日

不思議の国・ロシア

賄賂、暗殺、不正選挙…まるでスパイ小説のような世界が現実に繰り広げられている国、それはロシア連邦です。



ロシアはどこに行くのか 中村逸郎

2007年12月の下院選挙では、ウラジーミル・プーチン大統領(当時)を比例代表名簿の筆頭に掲げた政党、統一ロシアが大勝。そして2008年3月の大統領選挙では、プーチンが後継指名したドミトリー・メドヴェージェフ第一副首相(当時)が、これまた圧倒的な勝利で第3代大統領に選出されました。
これらの選挙結果の背景には、やはり不正があったようです。本書には、実際に区議会議員から不正投票を指示された、区役所職員が登場します。
不正投票は行政ぐるみ。メドヴェージェフの得票率が90%に達した区では、不正を疑われることを恐れ、区長が得票率を80%に下げるよう支持を出しました。
一方、野党候補の得票を下回った村では、政府に水道を止められたとか…

メドヴェージェフ大統領とプーチン首相の、二頭立て馬車で引っ張るロシアの政治体制を、中村逸郎氏は「タンデム型デモクラシー」と呼んでいます。
しかし相変わらず存在感を示しているのは、大統領職を退いたプーチンです。
北京オリンピックに沸く2008年8月、ロシア軍のグルジア攻撃に世界は震撼しました。欧米諸国の批判に対し、メドヴェージェフは「新しい冷戦を恐れない」と、強硬な態度に出ます。
ところが、この発言はプーチンの不興を買ったようです。
強い指導者像を打ち出したメドヴェージェフに対し、プーチンはメドヴェージェフが実質的な最高権力者の座を奪おうとしていると受け取ったのです。その後、メドヴェージェフの外交姿勢は軟化しました。

プーチン政権を批判し続けたアンナ・ポリトコフスカヤアレクサンドル・リトビネンコの死は、未だ深い闇に包まれています。
謎の多いこの国から、今後も目を離すことができません。

(2月1日読了)

【不純文學交遊録・過去記事】
新たな冷戦
ロシアより“哀”をこめて
リトビネンコ氏は、なぜ殺された?
パイプラインの国際政治学
あかきゆめみし
posted by 【電脳呆人】不純総合研究所 at 22:49| Comment(6) | TrackBack(1) | 政治・経済交遊会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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