2009年08月15日

チャップリンは知っていた(前編)

80年代のトレンディドラマを思わせる物語が、最後の2行で驚愕の真相に至る…『イニシエーション・ラブ』が評判となった、乾くるみ氏。
今回は乾氏の短編集『六つの手掛り』との交遊ですが…



六つの手掛り

トンデモ不純ミステリ愛好家としては、やはりメフィスト賞を受賞したデビュー作『Jの神話』を忘れることはできません。
新作を読む前のイニシエーション(通過儀礼)として、振り返っておきましょう。



Jの神話

妊娠していた女子高生が失血死し胎児が消えた、塔から投身自殺した少女…名門全寮制女子校で相次ぐ不可解な死。カバー裏の紹介文から、既に黒々とした闇が漂っています。
『Jの神話』を読み終えて思い出したのは、瀬名秀明氏の『パラサイト・イブ』でした。

高度な科学的知識の裏付けで、評価の高い『パラサイト・イヴ』。ただ、何十億年もの間生きてきたミトコンドリアが、なぜ現代の一青年科学者に狙いを定めたのか、あまりにも唐突で腑に落ちない読後感でした。その理由なき唐突さが、ホラー小説らしさとも言えますが。
ホラー小説では、山中に殺人鬼が現れたり、何気なく観たビデオテープが死を招いたりと、不特定の人を何の因果もなくパニックが襲う作品が多くあります。それに対して、特定の場所や人に祟るのが「怪談」でしょうか。

一方の『Jの神話』は、科学的にはトンデモ全開ですが、なぜこんな怪(珍)事件が起こったのかという因果関係は、『パラサイト・イヴ』よりもずっとスッキリしています。そこがホラーとミステリの違いでしょう。
『パラサイト・イヴ』でのミトコンドリアにあたるのが、『Jの神話』の“J”です。こう書けば、私が両作品に共通性があるという意図がお解かりになるかと思います。ネタバレになるので“J”の正体は明かせませんが。
女性視点の『パラサイト・イヴ』と言ったところでしょうか。ちなみに乾くるみ氏は、男性でございます。

小森健太朗氏は「『Jの神話』は不当に評価されており、文庫版になるときは是非とも解説を書きたい」と発言し、実際に書いています。

(つづく)

【不純文學交遊録・過去記事】
名探偵「星の君」


posted by 【電脳呆人】不純総合研究所 at 20:43| Comment(0) | TrackBack(0) | 文学・小説交遊会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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