2009年09月25日

底抜けニッポン(後編)

安全保障とは、なにも軍事に限ったことではありません。資源の安全保障、食糧の安全保障、技術の安全保障、文化の安全保障、どれも極めて重要です。
宮台真司氏は、国土の回復による生活世界の再構築を提唱しています。その鍵となるのが農業です。



日本の難点
宮台真司 著

日本は水田を減反しながら、コメの高関税を維持するためにミニマムアクセス米を輸入するという、矛盾した愚策を続けています。欧米諸国は関税ではなく、農家への直接支払いで国内農業を保護する政策に転換しました。
ただし、農家への直接支払いは一律ではなく、農業で自立できる「農家らしい農家」が優先になります。これまで「農家らしくない農家」を保護してきた、農協・農林族議員・農林官僚による「農政トライアングル」を打破せねばなりません。
宮台氏は国土保全によるパトリ(郷土)の回復が、日本の「底抜け」をカバーすると考えているようです。

他にも宮台氏は、次のような提言を掲げています。
・「小さな政府」と「大きな社会」による本来の意味での新自由主義
(いわゆるネオリベは「小さな政府」と「小さな社会」の組み合わせ)
・「軽武装×対米依存」から「重武装×対米中立」への転換
・性表現は規制からゾーニングへ
これらは、ほんの一部です。興味のある方は、ぜひ本書をお読みください。
衆院選で大きく議席を減らした自民党は、二大政党の一翼として、国民に民主党とは異なる選択肢を示すことが求められますが、本書にはそのヒントがあると思います。

宮台氏のエリート主義(あるいは自慢話?)は、エリートならざる凡人には鼻に付くことも確かですが、彼の主張には同意できる部分が多いので、本書に対する私の評価は甘めかもしれません。

発足したばかりの鳩山政権は、閣僚人事で早くも躓いています。
首相会見の記者クラブ開放を阻止した平野博文官房長官は、重大な公約違反。
テレビ受けのいい原口一博総務大臣は、最大の既得権益集団・マスメディア寄り。
亀井静香金融担当大臣の起用に至っては、ブラックジョークとしか思えません。
底抜け国家・ニッポンの行く末は大丈夫でしょうか…

(9月22日読了)

【不純文學交遊録・過去記事】
底抜けニッポン(前編)
底抜けニッポン(中編)
おやめになったらどうするの?
日本のメディアは“杉林”
M2+K、沖縄を語る。
波状攻撃三連射
本当の“リベラリズム”
助教授の生き様


ラベル:農業
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2009年09月23日

底抜けニッポン(中編)

政権交代が実現し、9月16日に発足した鳩山内閣。
22日の国連気候変動首脳会合で、鳩山由紀夫総理大臣は、日本が温室効果ガスを2020年までに1990年比25%削減することを表明しました。
(京都議定書での削減目標は、2012年までに1990年比-6%)



日本の難点
宮台真司 著

京都議定書が基準とする1990年は、冷戦終結によって東西ヨーロッパが統合され、EUのエネルギー効率が著しく低下しています。EUは実質的な削減努力をすることなく、目標達成が可能です。
(京都議定書での削減目標は、2012年までに1990年比-8%)
鳩山総理がハトならぬ、世界のカモにされなければ良いのですが…

宮台真司氏は、環境問題とは政治問題であると断言します。
政治的なゲームでは「何が真実か」よりも「何が真実という話になっているか」の方がはるかに重要です。地球温暖化が科学的に正しいかどうかは、重要ではありません。
温暖化対策という新しい政治ゲームは、既に始まっており、当面は続きます。今さら「削減目標がアンフェアである」とか「温暖化の主因はCO2ではない」と叫んでも、負け犬の遠吠えに過ぎません。新しいゲームで先行者の利を得ることが賢明であると、宮台氏は説きます。

化石燃料の省エネでは世界に先行した日本ですが、風力・太陽光など、再生可能エネルギーの分野では遅れをとったことも事実です。京都議定書の削減目標は、再生可能エネルギーの利用度が高い国に有利となっています。
宮台氏が言うように、環境問題とは科学でも倫理でもなく、政治です。日本には新しいゲームのルールで、勝ち残れる戦略が求められます。
(個人的には、地球温暖化の科学的真偽にも、大いに興味がありますが)

ただ、日本がいくら削減しても、アメリカ・EU・中国・インド・ロシア等が「実質的な削減」をし、地球全体の温室効果ガスが減らなくては意味がありません。
結局、日本だけが排出権を買わされて終わり…とならなければ良いのですが。
(その頃には、地球が寒冷期サイクルに入っているかも?)
民主党が、高速道路無料化やガソリンの暫定税率廃止といった、温室効果ガス削減とは矛盾した政策も掲げているのも懸念材料です。ガソリン税を廃止する代わりに環境税を導入し、太陽光発電の補助金の財源にすると言うのなら分かりますが。

鳩山総理は「主要国の参加による意欲的な目標の合意」を削減の条件としていますから、日本が世界のカモにならないことを信じたい…

(つづく)
ラベル:地球温暖化
posted by 【電脳呆人】不純総合研究所 at 17:08| Comment(8) | TrackBack(0) | 社会・思想交遊会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年09月22日

底抜けニッポン(前編)

9.11テロや世界金融危機を経て混迷する現代社会を、宮台真司氏は「社会の底が抜けた」と表現します。
もともと社会には、社会はこうあるべきという「底」などないのですが、社会の底抜けをやり過ごすメカニズムが壊れ、誰もが社会の底抜けに気付いてしまったのが、ポストモダン社会です。



日本の難点
宮台真司 著

毎年秋になると、文藝春秋から『日本の論点』という分厚い本が出版されます。政治・経済から芸能・スポーツに至るまで、ひとつのテーマに意見の異なる論者が寄稿して、現代日本の抱える諸問題を網羅する体裁となっています。
本書は、宮台氏が一人で日本の諸問題を網羅した、ミヤダイ版『日本の論点』です。以下のような構成となっています。

第一章 コミュニケーション論・メディア論
第二章 若者論・教育論
第三章 幸福論
第四章 米国論
第五章 日本論

タイトル通り、日本が抱える諸問題に対して、宮台氏が自分なりの解答を提示しています。ただ、そういう読み方だけでは「この意見には賛成だけど、あの意見には反対だ」とか「ミヤダイって右翼か?」で終わってしまうでしょう。
むしろ私は日本の諸問題を通した、ミヤダイ流社会システム論の入門書として読みました。民主主義とは何かとか、共同体とは何かとか、そういうことを考えるきっかけになる本です。若者論やサブカルチャー分野の著作で知られる宮台氏ですが、本来の専攻は権力論なのです。

民主主義では選挙で代表を選び、モノゴトを国会の多数で決定します。
人は、誰かによって都合よく創られた疑いのある、非中立的な世界や社会を、受け入れられません。多数決には、特定の誰かが決めたという選択帰属をキャンセルする「奪人称化機能」があると、宮台氏は説きます。
近代社会において多数決は、世界を創造した超越神や、建国神話の英雄に代わるものです。選挙や多数決による政治的決定は、素朴に「みんなで決めたことは正しい」からではないのです。

意外にも宮台氏は、本書が新書デビュー作。
専門用語(ミヤダイ語?)が多く、新書にしては取っ付きにくい印象ですが、もともと新書とは教養書であって、お手軽ハウツー本ではないのですから、これでいいのでは。

(つづく)
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2009年09月21日

新型プリウス不純化計画 Vol.2

ZVW30型プリウスの不純化計画。今回装着したのは、トヨタおよびレクサス車のドレスアップパーツメーカー、LX-MODEのアイテムです。

【LX-MODEカラードライセンスフレーム】
プリウスのナンバープレートベースは、素地の黒。これに色を塗っただけかと思ったら、ナンバープレートの下まで覆う形状で、フロントビューの印象を変えてくれます。私はディーラー付属品のナンバーフレームを付けていないので、丁度いいアイテムです。
純正のベースと交換するのですが、裏側がスカスカで、フィット感はいまひとつ。純正ベースの取り付け穴に合わせたツメが付いていれば、もっとしっかり位置決めできるのですが。
バンパーと色が合わないのは、材質が違うので仕方ないか…



【LX-MODEカラードトランクスポイラー】
カラードトランクスポイラーは、標準装備のリヤスポイラーと同じ、艶ありブラック。
私のプリウスはボディ同色のリヤスポイラーに交換してあるので、これにブラックのトランクスポイラーが付けば、リヤビューのアクセントになると考えたのですが…
実物はグニャグニャのゴムみたいな素材で、かなり幻滅。まるでカー用品店に売っている汎用スポイラーです。というか、そのものでした。梱包していた箱を裏返したらAkea AUTO PARTS(汎用スポイラーのメーカー)の文字が。プリウスのリヤスポイラー形状に合わせた専用品だと思っていたのに、騙された気分です。箱を裏返しているのにも、悪意を感じます。
LX-MODEのエンブレムが付属していますが、取って付けたようで、バッタもんみたい。せめてエンブレムを貼る場所が凹んでいれば…
というわけで、トランクスポイラーは買って大いに後悔しています。モデリスタのエアロに比べると余りにみすぼらしく、一日で剥がしてしまいました。



トヨタディーラーで販売し、レクサス車用アイテムも多数揃えるLX-MODEなので期待していたのですが、たいしたクオリティではないのが率直な印象です。

【不純文學交遊録・過去記事】
新型プリウス不純化計画
新型プリウスと交遊開始



プリウス&インサイトドレスアップガイド
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2009年09月20日

あなたが王になれるとしたら…

かつて商店街だった廃墟のなかに佇む、古今東西のホラーアイテムを集めた玩具館「三隣亡」。経営するのは年齢不詳の美女・美珠と、ゾンビマニアである兄の
前作『人魚と提琴』から一年余り、石神茉莉氏の玩具館奇譚がシリーズ化されました!



謝肉祭の王
石神茉莉 著

悪魔メフィストフェレスと契約し、魂を渡すことで己の欲望を満たそうとした、ファウスト博士の伝説。ゲーテ、手塚治虫など、多くの作家を魅了し続けてきました。
本作も、その系譜に位置する物語でしょう。一年間、王となれる仮面があったら、あなたは被りますか?

デビュー当初は女子高生作家として注目を集めたものの、ヒット作に恵まれずにいるシングルマザーの林千晶。友人の作家・矢川ルイジから譲り受けた謎の仮面を持って、三隣亡を訪れます。
「この仮面を被ると一年間、王となれる。だが翌年の謝肉祭の日には、処刑される運命が待っている」
仮面を千晶に譲った直後、ルイジは失踪しました。寡作だったルイジが、にわかに流行作家となり、その後失踪したのは、この仮面のせいなのか。
千晶は、恐る恐る仮面を被ります。

これまでになく筆がはかどる千晶。作品は映画化され、千晶自身もマスコミへの露出が増えました。
しかし、映画で主役を演じた新進女優が、物語のラストシーンにシンクロしたかのような投身自殺。さらに連載ホラー小説のモデルにした家族が、物語の進行を後追いするように不幸に見舞われます。
千晶の紡ぎ出した恐怖の物語が、次々と現実化してゆく…作家としての成功と引き換えに、最後は千晶自身の命が奪われてしまうのでしょうか。
美珠は、仮面の呪いを解くことができるのか…

本作最大の謎は、いつまでも歳をとらない「三隣亡」のオーナー・美珠です。
果たして彼女は、この世の者なのか…

(9月7日読了)

【不純文學交遊録・過去記事】
人魚の歌は死の調べ
posted by 【電脳呆人】不純総合研究所 at 20:45| Comment(0) | TrackBack(0) | 文学・小説交遊会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年09月06日

歴史を動かした茶会

織田信長明智光秀の謀反に倒れた本能寺の変については、歴史学者から小説家に至るまで、さまざまな推理がなされてきました。
光秀の単独犯行説では、信長に対する私怨によるもの、あるいは天下獲りの野望があったとするもの。黒幕がいたとする説では、朝廷(正親町天皇あるいは近衛前久)、足利義昭豊臣秀吉徳川家康などの名が挙がっています。



織田信長最後の茶会
小島毅 著

しかし、これまでの論者たちの視点は日本国内に留まっていると批判するのが、東洋思想が専門の小島毅氏です。
信長といえば南蛮趣味が強調されますが、実は渡来文化全般、とりわけ中華文化に関心が強く、南蛮文化も唐様(中華文化)の一種として取り入れたのだといいます。信長の旗印は永楽通宝であり、室町時代は勘合貿易をはじめとする東アジアの経済交流が盛んな時期でした。

私は本能寺の変の背景に、暦の問題があったと考えています。
当時、京都で朝廷が作成する暦と、東国で使われている暦は異なっていました。信長は朝廷に、暦を変えるよう圧力を掛けています。しかし、朝廷の年中行事を定める暦に干渉することは、天皇の大権を侵すことです。有職故実に通じた光秀が、信長の越権行為に対する義憤から暗殺を決行したのか、それとも朝廷側に黒幕がいたのかは判りませんが…
本書は、暦について詳細に論じています。つまり小島氏も背景に暦の問題があると考えているのですが、光秀の動機や共謀者の有無については答えていません。

変の前日、信長は本能寺で盛大な茶会を催しています。茶会には付喪茄子をはじめとする、信長自慢の茶器コレクションが、安土城から大量に運び込まれました。
名品とされる茶器の価値は、一国一城に値します。滝川一益は、信長から恩賞として上野国と信濃国の一部、さらには関東管領の職まで与えられましたが、希望していた茶器(珠光小茄子)ではなく、落胆したと伝えられています。
小島氏は、光秀が信長の首ではなく、茶器を狙って変を起こしたとする推理も披露しています。しかし信長は本能寺に火を放って自害し、茶器は灰燼に帰しました。光秀の天下があっけなく終わったのは、茶器の略奪という最大の目的を失くしたからとか?

…というわけで、本能寺の変の核心部分は曖昧なまま。
肩透かしを食らった結末でしたが、著者が得意とする東アジアの国際関係については、読み応えがありました。
小島氏は本書と同じ光文社新書から、信長と並んで国民的人気の高い、坂本龍馬の虚像を剥ぐ著作を準備しているようです。

(8月30日読了)

【不純文學交遊録・過去記事】
安土城の深い闇
陰陽師・明智光秀
posted by 【電脳呆人】不純総合研究所 at 21:23| Comment(21) | TrackBack(0) | 歴史・民俗交遊会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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