2009年10月27日

出雲は、出雲だけでない(後編)



QED出雲神伝説

この先、未読の方はご注意ください。

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2009年10月26日

出雲は、出雲だけでない(前編)

因幡の素兎、八岐大蛇(ヤマタノオロチ)など、記紀に描かれた神話の多くは出雲が舞台となっています。
しかし『出雲国風土記』では、八岐大蛇を退治した英雄・素戔嗚尊(スサノオノミコト)が、あまり活躍しません。また山陰地方には、古代の王権の存在を示す遺跡がありませんでした。そのため出雲神話は、ヤマト朝廷が王威を示すための創作に過ぎないと考えられてきたのです。
ところが荒神谷遺跡や加茂岩倉遺跡の発見によって、出雲にも強大な勢力があったことが明らかになってきました。



QED出雲神伝説
高田崇史 著

『QED』シリーズ第16弾は、出雲神話の謎に迫ります。

奈良県桜井市の初瀬川沿いにあるリゾートマンション「八雲」の一室で、女性が首を斬られて死亡していました。凶器は、部屋に飾ってあった出雲刀と呼ばれる古風な太刀。部屋は密室状態で、壁には奇妙な文様が…
マンションの所有者は島根県の財団職員・野川達夫で、被害者は彼と交際していた八刀良子でした。警察から文様を見せられた野川は、かつて存在した忍者の集団「出雲神流」のものだと言います。
実は一週間ほど前に起きたひき逃げ事件の現場にも、同じような文様が残されていました。これは忍者の末裔を名乗る、闇の組織の犯行声明なのでしょうか。あるいは、自分たちの秘密を探ろうとする者に対する警告か…

事件の取材を進めていたジャーナリストの小松崎良平は、出雲神流とは何かを知るべく、友人の桑原崇に電話しました。神社仏閣めぐりと墓参りが好きなことから、タタルとあだ名される変な薬剤師です。
いつもなら殺人事件に興味を示さないタタルですが、事件の鍵が「出雲」にも関わらず現場が「奈良」だと聞いて、自ら事件を調べたいから奈良へ行こうと言い出します。
タタルと小松崎は京都駅で棚旗奈々と合流し、まずは京都府亀岡市にある出雲大神宮を訪れました。ここは元出雲と呼ばれ、島根県の出雲大社よりも古い由緒を誇ります。そして事件の発生した、奈良県の三輪山周辺もまた、かつては出雲と呼ばれていたのです。
出雲とは、もともと出雲(島根県)にあったのか。それとも…

(つづく)

講談社BOOK倶楽部『QED』特集

【不純文學交遊録・過去記事】
旧暦10月・出雲は神在月
太陽の道
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2009年10月15日

ちはやふる…

お正月のかるたでおなじみ、藤原定家が選んだ小倉百人一首。
競技かるたを描いた『ちはやふる』が、第2回マンガ大賞に選ばれことで、興味をもった方もいらっしゃるでしょう。
私の小学校時代には毎年かるた大会があって、意味のわからないまま百枚すべてを覚えました。菅家が菅原道真で、鎌倉右大臣が源実朝と、歌の作者と歴史との関わりを知ってから、百人一首の世界を面白く感じるようになりました。



百人一首の歴史学
関幸彦 著

小倉百人一首には、六歌仙・三十六歌仙と呼ばれる和歌の名人が、なぜか全員そろっていません。一方で猿丸太夫のように、実在の疑わしい歌人が含まれています。
また、歌人の代表作とは呼べない和歌(駄作?)も選ばれています。定家自身の歌にしても「来ぬ人をまつほの浦の夕なぎに焼くや藻塩の身もこがれつつ」よりは、三夕の歌のひとつである「見渡せば花も紅葉もなかりけり浦の苫屋の秋の夕暮れ」こそが代表作でしょう。
そのため百人一首の成立過程や、歌の配列に謎を見出す人が少なくありません。

1.天智天皇、2.持統天皇…99.後鳥羽院、100.順徳院
百人一首の特徴は、天皇で始まり天皇で終わることだと、関幸彦氏は指摘します。
定家が生きたのは、源平の争乱から承久の乱に至る、貴族から武家へと政権が移った激動の時代でした。天智・持統父子は、平安京を築いた桓武天皇の皇統の始祖にあたります。そして後鳥羽・順徳父子は、承久の乱で鎌倉幕府に敗北しました。
百人一首は、定家が過ぎ去りし平安王朝へ捧げた、挽歌だったのかもしれません。

百人一首の歌人はほとんどが宮廷官人ですが、なかでも受領(国司)クラスの中下級貴族が多くを占めます。中下級貴族にとって、和歌や漢詩の教養は人生の浮沈を左右するものでした。
平安時代には紫式部清少納言和泉式部ら女流作家が活躍しました。彼女たちもまた受領クラスの出身です。紫式部の父である藤原為時が、漢詩の才能によって越前守の地位を手に入れたというエピソードは、よく知られています。

百首の歌には、百人の歌人の物語があります。
本書では紙幅の都合上、残念ながらすべて歌人の人生が語られているわけではありませんが、わずか三十一文字から当時の社会情勢が浮かび上がってきます。

(10月12日読了)
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2009年10月13日

テポドンは落とせるか?

10月9日、核なき世界を目指すアメリカのバラク・オバマ大統領が、ノーベル平和賞に選ばれました。
前任のジョージ・W・ブッシュ大統領と違い、リベラル派と目されるオバマ大統領ですが、決して日本でいうところのハト派・平和主義者ではありません。正義のための戦争は躊躇せず、軍を増強することを明言しています。
核兵器の廃絶について、核に代わる新兵器を開発したのではないか、財政難で核兵器を維持できなくなったのではないかと、疑ってみるのが常識ある態度でしょう。



自衛隊はどこまで強いのか
田母神俊雄 潮匡人 著

世界情勢を知るうえで、軍事は避けて通れません。
自衛隊の実力、日米同盟の実態など、航空幕僚長だった田母神俊雄氏に、評論家の潮匡人氏が問います。
例えば、PAC-3は本当にテポドンを落とせるのでしょうか?
二人とも航空自衛隊出身なので、内容が空軍力に偏っているのは否めませんが…

そもそも日米同盟とは、おかしな関係です。
アメリカを直撃する弾道ミサイルが発射されても、集団的自衛権は行使できないとする政府見解のせいで、日本は迎撃することができません。アメリカの核の傘に依存しながら、非核三原則のせいで、アメリカの核を日本の領海内へ持ち込むことはできません。同盟国を見殺しにする自衛隊、アメリカ国民が知ったらどう思うでしょう。
核武装に関する議論すら許されない日本の風潮は、とても民主主義国家とは思えません。NPT(核拡散防止条約)に加盟している日本が、独自に核武装をすることは困難ですが、NATO(北大西洋条約機構)諸国が採用しているニュークリア・シェアリング(アメリカとの核分担)は、現実的な防衛政策です。

村山談話を否定した田母神論文は、文民統制に反するとして、田母神氏は航空幕僚長の職を解かれました。しかし戦争を始めるのは、むしろ文民です。軍の上層部は、戦争をしたがりません。部下を死地に追いやることを厭わない将官などいないのです。イラク戦争を始めたのはブッシュ大統領ですが、軍人出身のコリン・パウエル国務長官は、最後まで開戦に反対でした。
一番の問題は、田母神事件が起きてしまう、防衛をめぐる議論の硬直性・閉鎖性ではないでしょうか。

私は「日本は侵略国家ではない」とする、田母神氏の歴史認識に同意しているわけではありません。いかなる理由であれ、他国の領土への軍事的介入はすべて侵略だとするのが、平和主義者(?)である私の歴史観ですから。
竹島を武力支配している大韓民国は、もちろん侵略国家です!

(10月12日読了)

【不純文學交遊録・過去記事】
日本は核武装せよ
日本は核武装せよU
当たり前の話…日本は核武装せよV
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2009年10月12日

温暖化論議は冷静に(後編)

江守正多氏は、国立環境研究所の温暖化リスク評価研究室長。地球温暖化予測のキモである気候モデルについて、専門家の立場からわかりやすく書いています。
気候モデルのテクニカルな部分は、私のような文系読者にはやや難解ですが、完全に理解できなくても全体を把握するのに問題はありません。



地球温暖化の予測は「正しい」か?

江守氏は地球温暖化の脅威を訴える側の人ですが、気候モデルが不完全であることも認めています。
地球温暖化をめぐる誤解に対しても冷静です。アル・ゴア元米副大統領の『不都合な真実』で描かれたように、短期間で海面が6mも上昇することはありません。
また、地球温暖化が進むと北大西洋の熱塩循環が急停止して、映画『デイ・アフター・トゥモロー』のように、一転して氷河期がやってくると言う人がいますが、ヨーロッパの気候が寒冷化することはあっても、地球全体が氷河期になることはありません。

世の中には温暖化危機派と懐疑派の双方による、センセーショナルな言説があふれています。
「地球温暖化に関する一般向けの本は、専門家でない人によって書かれたものが多く、書いた人も読んだ人も、勝手に想像して信じたり批判したりしている」と語る江守氏。本書は、温暖化の危機を憂える人も、温暖化に懐疑的な人も、必読の一冊です。
本書とあわせて、赤祖父俊一氏の『正しく知る地球温暖化』を読まれることをオススメします。どちらも文章は易しく、ページ数は少なめで、地球温暖化問題に対する冷静な態度が身に付きます。

江守氏は、価値中立的な立場で書きたかったとして、地球温暖化に社会がどう対処すべきか、本文では触れていません。
あとがきで「研究を通して世界の変革にコミットしている感覚」があり、「地球温暖化という物語は、マルクス主義以来の大きな物語かもしれない」と語るあたりに、彼の人となりが垣間見えて興味深いです。
江守氏は1970年生まれで、学生運動は知らない世代ですが…

私は気候モデルに対し、初期条件が間違ってはいないのか、研究者による恣意的な操作はないのか、疑問を抱いていましたが、本書を読んで不信感はかなり払拭されました。それでも気候モデルは不完全であり、特に太陽活動が一定であるということは、太陽活動の変化によって予測が大きく外れることを否定できません。
地球温暖化の予測や温暖化対策には、疑問があります。しかし、地球が温暖化しようがしまいが、化石燃料が有限であることは確かです。
浅薄な正義に流されず、地球の未来と日本の国益を冷静に考えましょう。

(9月27日読了)

【不純文學交遊録・過去記事】
温暖化論議は冷静に(前編)
底抜けニッポン(中編)
エコロジーの国際政治学
地球温暖化リテラシー
マルクスさんとマルサスさん
地球寒冷化に備えよ!
温暖化詐欺にご用心!(前編)
温暖化詐欺にご用心!(後編)
地球温暖化は繰り返す(前編)
地球温暖化は繰り返す(後編)
悪魔は目を覚ますのか?
マイナス6%の覚悟
地球の現代史・不確かな真実V
不確かな真実U
不確かな真実
悲観も楽観も、いけません。
ラベル:地球温暖化
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2009年10月11日

温暖化論議は冷静に(前編)

9月22日の国連気候変動サミットで、鳩山由紀夫首相は温室効果ガスを1990年比で25%削減することを宣言しました。
あらためて地球温暖化問題が大きく報道されていますが、そもそも地球温暖化の予測は、どのようになされているのでしょうか。



地球温暖化の予測は「正しい」か?
江守正多 著

もしも大気がなかったら、地球の表面温度は−19℃です。
大気に含まれる温室効果ガス(水蒸気、二酸化炭素、オゾン、メタン、亜酸化窒素など)によって、地球の平均地表気温は、およそ14℃に保たれています。
私たちが快適に過ごせるのは、温室効果のおかげです。

IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の第四次評価報告書によると、地球の地表気温は過去100年で0.7℃ほど上昇したとされています。
大気中の二酸化炭素は、過去200年で280PPMから380PPMへと急激に増加しています。これが人類の文明活動のせいなのは間違いありません。
温室効果ガスが増加すると、対流圏の気温上昇とセットで成層圏の気温は下がります。成層圏の気温低下は、20世紀後半に実際に観測されており、太陽活動など他の要因で気温上昇が起こった場合には、成層圏の気温低下は説明できません。
地球の温度を決めるのは温室効果ガスだけではありませんが、人為的な二酸化炭素の増加で、地球の気温は0.数℃上昇したと考えられています。

IPCCの温暖化予測は、コンピュータ・シミュレーションに基づいています。
コンピュータで作られたもうひとつの地球を、気候モデルと呼びます。気候モデルに与えられるのは、地球はどのような惑星かを決める基本的な条件のみで、現実のデータを事細かに入力しているわけではありません。それでもコンピュータのなかの地球は、熱帯は暑く、極地は寒くなります。
気候モデルのパラメタ化は、半分は理論、半分は経験です。かといって物理の法則に従う以上、研究者が好きなように変えられるものでもありません。
気候モデルは1940年代のピークを再現できていませんでしたが、最近になって観測データの方に問題があるとわかってきました。気候モデルがいくらでも細工できるような代物であれば、観測データに合うよう研究者は細工していたでしょう。
気候モデルは完全ではありませんが、イカサマでもないのです。

気候モデルでは、将来の自然要因の変化は予測できないので、太陽活動は一定、火山の噴火は一切起こらないという単純な仮定をしています。
太陽活動の変化が考慮されないのは、気候モデルの重大な弱点だと私は思いますが…

(つづく)
ラベル:地球温暖化
posted by 【電脳呆人】不純総合研究所 at 23:47| Comment(0) | TrackBack(0) | 自然科学交遊会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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