2010年10月27日

棄てられた神



水蛭子あるいは蛭児と書いて、ヒルコ。
蛭(ヒル)といえば、ぬるりとした吸血生物であり、なんとも禍々しい名の神様です。

ヒルコ

ヒルコ

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ヒルコは、イザナキとイザナミの最初の子として生まれました。アマテラス・ツクヨミ・スサノオの三貴神の兄にあたりますが、葦船に乗せられ海に流されてしまいます。
両親に棄てられたヒルコはどうなったのか、記紀は黙して語りません。本書は、神道研究家の戸矢学が謎の神・ヒルコの正体に迫り、もうひとつの建国神話を再現する野心的な試みです。
神話とは史実の反映であり、神々は実在した私たちの祖先です。そして神道は、古代人の思考体系であるといえます。

日本は四方を海に囲まれ、太古からさまざまなヒトやモノが渡来しました。日本列島に最初からヒトが住んでいたわけではありません(人類の起源はアフリカ大陸)。
スサノオを新羅からの渡来神(牛頭天王)だとする説があります。しかしスサノオが高天原から新羅のソシモリに天降ったのは、一時的に立ち寄っただけであり(しかも「ここには居たくない」と言って、すぐに出雲へ向かった)、いわゆる「朝鮮半島起源説」を厳しく戒めています。
では神々の原郷、高天原はどこにあったのか…

本書は冒頭で、いきなり衝撃的なことを書いています。それは天皇家に本来あった「姓」です。そこから導かれるキーワードは紀伊国、海人族、銅鐸、徐福伝説…ヒルコ神話から驚愕の真相が浮かび上がってきます。

(10月25日読了)★★★★★

【不遜文学交遊録・過去記事】
聖徳太子は怨霊か
陰陽師・明智光秀
邪馬台国は、ここにある。
消えた(消された?)神様


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2010年10月25日

夢の中へ



この世界は実在しているのか、それとも脳が見せる幻覚なのか。
古代支那の思想家である荘子は、有名な「胡蝶の夢」の一節で、自分が夢のなかでチョウになっているのか、チョウが夢のなかで荘子になっているのか分からないと語っています。

人はなぜ夢を見るのか

人はなぜ夢を見るのか

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人はなぜ夢を見るのか。
夢は何を意味しているのか。
人類が数千年に渡って問い続けてきた大いなる謎です。

近代になると、ジグムント・フロイトは夢を性的願望の現れだと考え、カール・グスタフ・ユングは夢に人類共通の集合的無意識を見出しました。深層心理学による夢の解釈の始まりです。
さらに科学の発達は、脳生理学によってヒトが夢を見るメカニズムを明らかにしようとしています。夢には、私たちの記憶を整理する機能があるのだとか。
本書は、人文科学と自然科学の双方からのアプローチを一冊にまとめた、夢の総合科学と呼べる内容です。

夢は目覚めるとなかなか思い出せないものですが、レム睡眠状態から起こされると覚えています。レム睡眠のレム(REM)とは「Rapid Eye Movement」の略で、眼球が急速に動いている状態です。
なかには自分が夢を見ていることを自覚し、夢の中で自発的な行動ができる人もいて、このような夢を明晰夢といいます。
私は、脳波を読み取って夢を録画する技術は可能なのかと夢想しています。

(10月18日読了)★★★
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2010年10月24日

季節は謎を紡ぐ



学園ミステリ小説は数多くありますが、鮎川哲也賞を受賞してデビューした七河迦南の作品の舞台となる七海学園は、一般の学校ではなく児童養護施設です。両親の離婚や虐待など、わけあって家庭では暮らせない子供たちが寮生活を送っています。

アルバトロスは羽ばたかない

アルバトロスは羽ばたかない

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25歳の北沢春菜は、児童養護施設「七海学園」で働き始めて3年目の保育士。高校時代はバドミントン部のキャプテンを務めた体育会系で、問題を起こした児童がいると、自分が担当する寮生でなくても、プライベートな時間を犠牲にしてまで世話を焼いてしまいます。
そんな春菜が気にかけているのが、最近入ってきたばかりの女子高校生、鷺宮瞭。偏差値の高い名門私立高校に通っていたものの、母親を殴って児童相談所行きとなり、この七海学園に入所してきたのです。クールで気高く、周囲に心を開かない瞭に、職員たちは手を焼いていました。

物語は、七海西高校の学園祭で起こった転落事故が、自殺なのか殺人なのかをめぐって進展します。
季節ごとのエピソードが連作短編集のように並べられており、それぞれのエピソードを「サッカー場から消えた少年」「盗まれた寄せ書き」「再生できないCD-R」など「日常の謎」を解くミステリとして読むことができます。
そして主題となる転落事故の真相は、終盤にドンデン返しが待っており、思わず「やられた!」と声に出してしまいました。最初の章におかしな記述があって、深くは疑わなかったのですが、あれが伏線だったんですね。

巧妙に仕組まれた作者の罠とともに、トラウマを背負った子供たちの心理描写が繊細で、物語の世界に引き込まれました。これはオススメです!

(10月24日読了)★★★★★
posted by 【電脳呆人】不純総合研究所 at 23:59| Comment(0) | TrackBack(0) | 文学・小説交遊会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年10月19日

偽善者になろう!



テレビ、新聞、インターネット…世の中は情報で溢れかえっています。しかし情報は、純粋に公平中立な立場から発信されているわけではありません。情報は人間が発信するものであり、そこには発信した人間の好みや人柄が反映されています。
かといって、いつも世の中を疑いの目で見ていたら疲れてしまいますね。

13歳からの反社会学

13歳からの反社会学

価格:1,470円(税込、送料別)



世の中には2種類のバカがいる…データしか見ないバカと、データを全く見ないバカ。『反社会学』シリーズでおなじみ、イタリア生まれで千葉県在住のパオロ・マッツアリーノさんが、バカにならないための世の中の見方を、中学生にもわかりやすく書いてくれました。
とりわけ本書は、図書館の使い方に力を入れています。わからないことがあればインターネットで検索して一発で答えが探せる時代ですが、いまの小中学生には是非とも本を読んで調べる面白さを知ってもらいたいですね。回り道をすることで、意外な知識が得られるわけですから。

バカは極論が大好きです。暴力的に環境保護や動物愛護を訴えるエコ強行派に、あらゆる環境問題は陰謀だというエコ否定派。自分が絶対に正しいという人が、一番のウソつきです。
オトナになることは中途半端に正しい現実と正面から向き合うことであり、就職することはどこかの利権に与することに他なりません。
中途半端な正義や気まぐれな善行であっても、どこかで誰かの役に立つなら、何もしないよりずっといい。マッツァリーノさんは言います。偽善者になれ、愛より偽善、論理より偽善。

第一章の「お金を拾って暮らせるか」は、考えもしてみなかったテーマだけに、非常に面白かったです。
欄外では、パオロさんの弟でフィレンツェ在住の家具職人・ジャンニさんが、本文を理解するのに役立つ情報を140文字以内でつぶやいています。

(10月13日読了)★★★★

【不純文学交遊録・過去記事】
衝(笑)撃、ふたたび!
衝(笑)撃の社会学
posted by 【電脳呆人】不純総合研究所 at 20:29| Comment(2) | TrackBack(0) | 社会・思想交遊会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年10月15日

これがプリウス・ワゴン!



昨夜、ツイッターでプリウス・ワゴンをネタにしていました。
すると米国トヨタが、来年1月の北米国際自動車ショー(デトロイトショー)でプリウスの派生車を出展すると公式ツイッターで表明。
Toyota USA

米国では、既にプリウス派生車の写真が先行公開されています。
ちなみに米国では、看板に書かれているように今年がプリウス発売10周年。
Teaser image of the Prius V addition to the Prius family

こちらはプリウス派生車と思われる、カモフラージュされたテストカーの写真。
2枚の写真を見比べると、後方に向かって下がっていくウィンドーグラフィック、サイドに膨らみをもった大きなテールレンズがわかります。
WSJ: Toyota to sell 2 new Prius models by 2012

このプリウス派生ワゴンには、2列シートと3列シートがあると報道されています。
北米・アジアは2列シート、欧州は3列シート、日本には両方が用意されます。国内仕様の2列シートは、ビジネスユースのグレードかもしれません。
トヨタ、HVで地域ニーズを反映した車種展開を本格化
(日刊工業新聞2009年12月12日)

プリウス・ワゴンのサイドビュー、ルーフがかなり傾斜しています。
サードシートの居住性はどうなんでしょう?
posted by 【電脳呆人】不純総合研究所 at 21:30| Comment(0) | TrackBack(0) | 不純自動車交遊会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年10月12日

妖怪は今も生きている?

水木しげる・武良布枝夫妻の半生を描いたNHK連続テレビ小説『ゲゲゲの女房』は、過去最低の視聴率でスタートしたものの、その後は右肩上がりに推移し、終わってみれば民放局が採り上げるまでのヒット作となりました。
水木しげると言えば、やはり『ゲゲゲの鬼太郎』ですね。

図解日本全国おもしろ妖怪列伝

図解日本全国おもしろ妖怪列伝

価格:1,575円(税込、送料別)



…というわけで、妖怪本。
手に取った理由は、短時間で軽く読めそうだから(笑)

本書は日本の代表的な61種類の妖怪を、鳥山石燕や竹本春泉の絵画とともに紹介し、それぞれの妖怪に関する薀蓄がコンパクトにまとめられています。ただし、なかには結構似たようなタイプの妖怪も多いです。山男と山童、山姫と山姥とか。
古文書に著された妖怪談義に加えて、近代以降(平成に入ってからも!)の妖怪目撃談も数多く記されています。特に一反木綿の目撃例は多いようで…まるでスカイフィッシュですね(笑)
しかし真偽の検証はなされておらず、あまりにも三流ゴシップ的な書き方が残念。昔からの言い伝えのなかの妖怪と現代の実話怪談(?)とは、分けて欲しいものです。
水木しげるの次女は、修学旅行先の旅館で目目連を見たそうです。この話は『ゲゲゲの女房』でも放送されました。

妖怪には人間の姿をしたもの、動物が変化したもの、古道具に魂が宿った付喪神などがあります。
一反木綿を付喪神の一種だとする水木しげるに対し、木綿がそんなに長く使われるはずはないので疑問だとして、大先生に反論している部分が最も印象的でした。

(10月11日読了)★★★

【不純文学交遊録・過去記事】
妖怪の正体とは
妖怪は境界に棲む
posted by 【電脳呆人】不純総合研究所 at 22:18| Comment(0) | TrackBack(0) | 歴史・民俗交遊会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年10月10日

女は妖(あやかし)

古今東西の呪物を商う玩具館「三隣亡」を訪れる客が、経営者の兄妹を前に語りはじめる奇妙な体験談…
ミステリともホラーとも一味違う幻想小説を、時にユーモアを交えながら綴る作家が石神茉莉です。

音迷宮

音迷宮

価格:1,680円(税込、送料別)



表題作『音迷宮』をはじめ、妖(あやかし)の世界を描いた10篇からなる短編集。
読み進めるうちに妙なことに気付きました。最初は単なる誤植かと思ったのですが、それにしても気持ちが悪い…実は本書のある部分に、それぞれの作品のモチーフとなった妖怪の名前が隠されています。
人の視線を極度に怖れる子役少女を描いた『眼居』はまさしく現代版×××ですし、消息を絶った友人の行方を追う『I see nobody on the road』は西洋風の××××です。
(ここで妖怪の名前を出してしまっては、面白くない!)

妖という文字は、なぜ女偏なのか…
秋の夜長に読者を妖奇なる世界へと誘います。
ただ、眠る前に読むのは夢見が良くないかもしれません。
(特に『Rusty Nail』とか)

(10月7日読了)★★★★

【不純文学交遊録・過去記事】
あなたが王になれるとしたら…
人魚の歌は死の調べ
posted by 【電脳呆人】不純総合研究所 at 18:55| Comment(0) | TrackBack(0) | 文学・小説交遊会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年10月05日

日本はいつから日本か

日本とは、どこからどこまでなのか。きちんと教えるのが教育の責務です。尖閣諸島は日本固有の領土であり、中華人民共和国が領有を主張し始めたのは、この海域に資源が存在する可能性が示唆された1970年代以降に過ぎません。
さて、わが国はいつから公式に「日本」と称するようになったのか、日本という国号の由来は何なのか、これはなかなか難しい問いです。

日本国号の歴史

日本国号の歴史

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日本の由来として知られているのが、日本は枕詞だとする谷川健一の説です。日下と書いてクサカと読むのは、ヒノモト(日下)がクサカ(草香)という地名の枕詞だからであり、それは神武東征軍が上陸した河内国日下だとします。しかし「日下」がなぜ「日本」という表記に転化したのかは、説明できていません。
本書の著者・小林敏男の説は、「日本」は和製漢語ではなく、語源は中国にあるとするものです。日本とは、支那から見て太陽が昇る方角の絶海にある異郷を意味します。日本は扶桑国とも呼ばれましたが、日本の「本」は樹木のことで、それは東方の海中にあるとされた神木・扶桑樹だといいます。
(語源が中国だからと言って、日本とは支那王朝から与えられた称号だとの主張ではありません)

言わば日本とは、東方の絶域にあるユートピアであり、それは中華的冊封体制の域外でありました。支那王朝の冊封下に入ることで朝鮮半島に軍事的影響力を行使しようとした倭の五王と違い、遣隋使・遣唐使時代の日本は「不臣の外客」「絶域の朝貢国」だったのです。なお、朝貢とは必ずしも服属することではなく、唐との友好関係を確認する行為でした。
わが国は唐の冊封体制下ではなかったので、倭から日本への国号変更にさほど問題はなかったと考えられます。支那王朝に対して最初に日本の国号を通知したのは、大宝2年(702年)の粟田真人の遣唐使です。当時は武則天(則天武后)の時代で、唐側も国号を周(武周)と改めていました。

日本の国家成立を探るうえで避けて通れない邪馬台国論争ですが、著者は魏志倭人伝の「邪馬台国」と「女王国」は別の国だという見解です。
卑弥呼の女王国は北九州のヤマト(山門)にあり、倭国大乱後の卑弥呼共立に反対する勢力が畿内に樹立した新興国を邪馬台国だとしています。

(10月3日読了)★★★★

【不純文学交遊録・過去記事】
描かれた邪馬台国
posted by 【電脳呆人】不純総合研究所 at 23:48| Comment(0) | TrackBack(0) | 歴史・民俗交遊会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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