2010年10月24日

季節は謎を紡ぐ



学園ミステリ小説は数多くありますが、鮎川哲也賞を受賞してデビューした七河迦南の作品の舞台となる七海学園は、一般の学校ではなく児童養護施設です。両親の離婚や虐待など、わけあって家庭では暮らせない子供たちが寮生活を送っています。

アルバトロスは羽ばたかない

アルバトロスは羽ばたかない

価格:1,995円(税込、送料別)



25歳の北沢春菜は、児童養護施設「七海学園」で働き始めて3年目の保育士。高校時代はバドミントン部のキャプテンを務めた体育会系で、問題を起こした児童がいると、自分が担当する寮生でなくても、プライベートな時間を犠牲にしてまで世話を焼いてしまいます。
そんな春菜が気にかけているのが、最近入ってきたばかりの女子高校生、鷺宮瞭。偏差値の高い名門私立高校に通っていたものの、母親を殴って児童相談所行きとなり、この七海学園に入所してきたのです。クールで気高く、周囲に心を開かない瞭に、職員たちは手を焼いていました。

物語は、七海西高校の学園祭で起こった転落事故が、自殺なのか殺人なのかをめぐって進展します。
季節ごとのエピソードが連作短編集のように並べられており、それぞれのエピソードを「サッカー場から消えた少年」「盗まれた寄せ書き」「再生できないCD-R」など「日常の謎」を解くミステリとして読むことができます。
そして主題となる転落事故の真相は、終盤にドンデン返しが待っており、思わず「やられた!」と声に出してしまいました。最初の章におかしな記述があって、深くは疑わなかったのですが、あれが伏線だったんですね。

巧妙に仕組まれた作者の罠とともに、トラウマを背負った子供たちの心理描写が繊細で、物語の世界に引き込まれました。これはオススメです!

(10月24日読了)★★★★★


posted by 【電脳呆人】不純総合研究所 at 23:59| Comment(0) | TrackBack(0) | 文学・小説交遊会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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