2010年12月31日

今年もいろいろありました

まもなく過ぎ去ろうとしている平成22年。今年もいろいろありましたが、とりわけ秋には日本の安全保障を揺るがす事態が立て続けに起きました。
9月7日、中華人民共和国の漁船が尖閣諸島付近で海上保安庁の巡視船に衝突。
11月1日には、ロシア連邦のメドベージェフ大統領が国後島を訪問。
さらに11月23日、朝鮮民主主義人民共和国が大韓民国の延坪島を砲撃。
極東アジアが世界の火薬庫であることを、改めて思い知らされました。

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その中国・ロシア・北朝鮮の三国を猛毒国家と呼ぶのが本書。
チャイナウォッチャーとして知られる宮崎正弘と、外務省のラスプーチンこと佐藤優による対談です。

時事的な要素よりも、比較文化論的な視座で中国とロシアの国柄・国民性を論じているのが本書の特徴(北朝鮮のことはオマケ程度)。
単純に金持ちが尊敬される中国は商人の国、一方、土着の情念が強く農本主義的なのがロシアです。
あとがきによると、対談から刊行まで1年のタイムラグを要したため、時局の話題は削除したとのこと。おかげで主旨が明確になった気がします。

真正保守の復権を掲げる両者ですが、とりわけ佐藤優が「超越性」を唱えているのが印象的でした。これは天皇の問題とも関わってきます。
本書は宮崎正弘の新刊として手に取ったので、佐藤優の思想に触れたのは偶然でしたが、超越性の問題は、保守とは何かを考えるヒントになってくれそうです。

(12月28日読了)★★★★

【不純文学交遊録・過去記事】
国難は海からやってくる
不思議の国・ロシア
新たな冷戦
ロシアより“哀”をこめて
リトビネンコ氏は、なぜ殺された?
パイプラインの国際政治学
あかきゆめみし
竹島、尖閣、北方領土…


posted by 【電脳呆人】不純総合研究所 at 17:55| Comment(0) | TrackBack(0) | 政治・経済交遊会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年12月30日

いつのマニか消えた宗教

9月26日、マニ教の宇宙観を描いた絵画が日本国内に現存していることが、世界で初めて確認されました。
マニ教(原音に忠実な表記はマーニー教)は、パルティア貴族出身のマーニー・ハイイェー(216‐277)を開祖とする宗教です。一時は仏教・キリスト教・イスラム教に次ぐ第4の世界宗教とも呼べる拡大を見せましたが、現在は消滅しています。

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マーニー教は善悪二元論に基いており、肉体的・物質的なものを極端に忌避する、禁欲的で厭世的な教義を特徴としています。善悪二元論を採ることから、マーニー教はゾロアスター教の焼き直し程度にしか思っていなかったのですが、その成立過程は実に興味深いものでした。
マーニーは、父が入信しているユダヤ教系のエルカサイ教団で育ちました。しかしユダヤ教の規律に反発した青年マーニーは、教団を追放され、独自の宗教思想を打ち立てます。
マーニー教最大の特徴は、教祖マーニーの頭の中で組み立てられた人工宗教だということです。マーニー教は、教祖自らが教典を著した書物の宗教であり、さらにマーニーは教義を絵画で表現しました。実に多才な人物だったのです

かつて栗本慎一郎が、著書で「好きな宗教はマニ教」と書いていたことから多少の興味はあったのですが、本書に出会ってマーニーが面白い人物であると気付きました。マーニーの父パティークも、やたらと行動の軽い可笑しな人物です。
そんなこと知って何の役に立つんだと言うなかれ。こういうマニアックな人文書と交遊するのが、不純な読書の楽しみなんですね。オススメです。

(12月30日読了)★★★★★

【不純文学交遊録・過去記事】
アーリア人って、誰のこと?
posted by 【電脳呆人】不純総合研究所 at 23:59| Comment(0) | TrackBack(0) | 歴史・民俗交遊会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年12月19日

河童は存在しなかった

今年は柳田國男の『遠野物語』(1910年)が発表されてから、ちょうど100年です。
佐々木喜善が語った岩手県遠野市の民間伝承には、河童や座敷童子などの妖怪が登場し、河童の目撃談が残る「カッパ淵」は観光スポットとなっています。

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河童の正体は何でしょう?
渡来人や被差別民だとするもの、サルやカワウソのような野生動物だとするもの、未確認生物(いわゆるUMA)だとするものなどが挙げられます。不純文學交遊録では、過去に河童を古代の製鉄民だとする書物を紹介しました。
江戸初期の大工・左甚五郎が工事で人形を使役し、作業が終わって不要になった人形を川に捨てたら河童になったという伝承もあります。この説だと、河童のルーツは江戸時代以前には遡れなくなりますね。

そもそも河童とは、江戸時代以降に創作された新しい妖怪だというのが本書の主張です。日本各地には、ヒョウスベ、エンコウ、ミズチなどの河童に類似した妖怪が伝わっています。それらをひとまとめにしたハイブリッド・モンスターが河童なのです。
頭に皿、背中に甲羅があって、緑色の皮膚をした河童は、それら水の妖怪たちの姿を最大公約数化したもので、現代の私たちがイメージするそのままの河童は存在しません。つまり河童はいなかったのです。

生物学的にも民俗学的にも、河童は存在しなかったわけですが、伝承の世界にはヒョウスベやエンコウやミズチがいました。彼らは水の精霊だったり、製鉄民だったり、あるいは水運商人だったのかもしれません。
河童は創作の題材となり、企業や地方自治体のマスコットキャラクターとして広く親しまれています。そうした現代における河童についても、本書は章を割いています。

(12月12日読了)★★★★

【不純文学交遊録・過去記事】
カッパは製鉄民だった?
カッパなにさま?カッパさま!
妖怪は今も生きている?
妖怪の正体とは
妖怪は境界に棲む
posted by 【電脳呆人】不純総合研究所 at 18:17| Comment(2) | TrackBack(0) | 歴史・民俗交遊会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年12月13日

死因不詳国家

いま生きている人間には、いつか死が訪れます。人間は生きている間にいくつもの書類を記入しますが、人生の最後を締めくくる書類が、死亡届です。



死亡届の提出には、死者を看取った医師(または歯科医師)による死亡診断書の記入が必要とされます。
しかし世の中には「畳の上で死ねなかった」人が、二割ほど存在します。不慮の事故や原因不明の突然死、そして自殺や犯罪など。このような「異状死」の場合、死亡診断書ではなく死体検案書が書かれます。病死ではない人の死の原因を探るのは、法医学者の仕事です。

日本国内で解剖を行える法医学者は150人程度で、解剖率は先進国で最低レベルの「死因不詳国家」だそうです。
現在、監察医制度があるのは東京23区、大阪市、神戸市、横浜市、名古屋市だけ。異状死に対する解剖の実施率は、監察医のいる地域では24〜90%なのに対し、その他の地域では1%前後に過ぎません。行政解剖によって犯罪が露呈したケースもあり、多くの地域で犯罪が見過ごされている可能性もあるわけです。

いまや人生80年、日本は世界トップレベルの長寿国です。その一方で、人間はいとも簡単に死んでしまう存在であることを、本書は教えてくれます。
日常生活にも危険は潜んでいます。食事・飲酒の直後に入浴するのは避けましょう。また、ただの筋肉痛かと思っていたら、重大な疾患だったということもあるのです。
ミステリを読む際の参考になればと興味本位で手に取ったのですが、普段の健康管理の大切さを痛感させられる一冊でした。

(12月6日読了)★★★★
posted by 【電脳呆人】不純総合研究所 at 18:20| Comment(0) | TrackBack(0) | 自然科学交遊会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年12月12日

世襲する探偵



奇妙な因習の残る人里離れた山村、複雑な血縁関係で結ばれた一族、そして風変わりな名探偵…これぞ麻耶雄嵩というべき作品。

隻眼の少女

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1985年、冬。
信州の山奥にある栖苅(すがる)村を、自殺志願の大学生・種田静馬が訪れました。両親を凄惨な殺人事件で失った静馬は、死に場所を求めてこの村へやって来たのです。
村には千年以上昔、たびたび洪水を起こして村人を苦しめた龍を、娘が琴を弾いて退治したとの伝説があります。娘はスガル様と呼ばれ、村人の篤い信仰を集めてきました。その娘の子孫が、琴折(ことさき)家です。

スガル様が龍を退治した場所だとされる奇岩「龍ノ首」に静馬が腰掛けていると、下から若い女の声がしました。平安時代のような装束(水干)を身に付けた少女の名は、御陵みかげ。自ら探偵だと称します。
その二日後、龍ノ首で次代のスガル様を継ぐことになっていた琴折家の娘が、首を斬られた死体で発見されました。静馬はみかげとともに、事件の真相を探るべく琴折家に乗り込みます。そこでも新たな殺人が…

実は御陵みかげは二代目で、母もまた水干姿で左目が義眼の名探偵でした。
現代に生きるシャーマンのスガル様と、伝説の名探偵である御陵みかげ。どちらも女系の世襲というのが面白いですね。皇位継承問題を意識しているのでしょうか。

本作は、二部構成。
あれから18年経った2003年の冬、琴折家で再び連続殺人事件が発生します。
いかにも麻耶雄嵩らしい舞台設定で十分に楽しめましたが、サプライズ度はそれほどでも。種田静馬は、やはり名前の通りだったし…(笑)
しかし麻耶雄嵩ビギナーには、この結末は衝撃かも。

(11月23日読了)★★★★

【不純文学交遊録・過去記事】
推理しない探偵
Firefly
ラベル:麻耶雄嵩
posted by 【電脳呆人】不純総合研究所 at 19:04| Comment(0) | TrackBack(0) | 文学・小説交遊会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年12月05日

火と水で神

日本人は無宗教だといわれます。とりわけ1995年のオウム真理教事件以降、宗教とはアブナイもの、語るべからずもの、近寄るべきでないものとされてきた感があります。
その一方で私たちは、神社に参拝し、仏式で死者を弔い、クリスマスを祝うなど、多種多彩な宗教的行事を受け容れています。また、占い・霊視・超常現象などオカルト・スピリチュアルに対する世間の関心は、一向に衰える気配がありません。

火・水

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一種の語呂合わせですが、神とは火と水(カとミ)であるとの解釈があります。
宗教学者の鎌田東二と陶芸家の近藤高弘は、奈良県吉野の天河大弁財天社で、1997年から毎年、天河護摩壇野焼き講を行ってきました。豊かな森林が清浄な水を育む吉野で、護摩の火でオブジェを焼き上げる。まさしく神(火水)に捧げるセレモニーです。

この天河護摩壇野焼き講には、修験道から激しい反発があり、芸術界からは「近藤は怪しい宗教にかぶれた」と非難されました。しかし天河大弁財天社には、弘法大師こと空海が護摩の灰を焼き上げて造ったという「灰練り弁才天像」があります。天河護摩壇野焼き講は、決して無根拠で突飛なお遊びではなかったのです。
近藤高弘は、自らの手で骨壷を焼く「解器(ホドキ)ワーク」も提唱しています。

神の地・吉野で宇宙と生命のサイクルを表現する野焼きですが、天然の木を伐採して護摩を炊く行為はエコに反しないかと疑問が湧きました。事務局のミーティングでも、護摩で使う木をどこから持ってくるのか問題提起があったようです(どのように解決したかは不明…)。
鎌田東二は神秘体験を公言し、神道ソングライターを名乗って音楽活動を行うなど、学者にしてはパフォーマンスが過ぎるきらいがありますが、自称「アニミズム信者」である私は、現代におけるアニミズムの実践として天河護摩壇野焼き講のような試みは有りかと思います。

(11月22日読了)★★★

【不純文学交遊録・過去記事】
アニミズム革命
【関連サイト】
天河神社
鎌田東二オフィシャルサイト
近藤高弘の世界
posted by 【電脳呆人】不純総合研究所 at 13:26| Comment(9) | TrackBack(0) | 芸術・娯楽交遊会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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