2011年04月17日

エコな原発ありますか?(後編)

経済産業省の原子力安全・保安院は、福島第一原子力発電所事故を国際原子力事象評価尺度で最悪のレベル7に引き上げると発表しました。
頂点に達する国民の原発への不安。しかし電力需要を確保するには、既存の原発を止めることはできません。自然エネルギーでは安定した電力を得られませんし、かといって化石燃料の消費を増やすのも時代に逆行しています(私は地球温暖化の主因が二酸化炭素だとは思いませんが、化石燃料の消費削減は支持します)。
そこで安全かつクリーンな原子力エネルギーとして期待されるのが、トリウム原発です。トリウム熔融塩炉について詳しく書いた本がないかと探したところ、10年前(2001年)に刊行された本書に出会いました。

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現在の主流の原子炉は、冷却材・減速材に水を用いる軽水炉です。
しかし、軽水炉には構造的な欠陥があるといいます。
・固体燃料は放射線で破損しやすい。燃料集合体の定期的な交換が必要。
・負荷追随性が低く、常時全出力運転となる。小型炉には適さない。
・水は高温で高圧となり、放射線で分解されると爆発しやすい水素を発生する。
・ウラン燃料からは、核兵器の原料となるプルトニウムが生成される。
原子力は火力・水力よりも発電コストが低く、出力が高いのでベース電力を担ってきました。しかし裏を返せば、建設コストが高いので大規模化によって発電コストを下げ、出力調整ができないため全出力で運転しているわけです。さらに今回のような大事故が起こると損害賠償は巨額となり、放射性廃棄物の処理コストも忘れてはなりません。原発(軽水炉)の経済性は幻だったのです。

「固体燃料から液体燃料へ、ウランからトリウムへ、大型から小型へ」
本書は原子力発電の3つの革命を掲げています。
トリウム熔融塩炉には、以下の利点があるとします。
・液体燃料は固体燃料よりも、製造や管理が容易。
・熔融塩(高温で液体になった塩)は高温でも常圧で、原子炉の安全性が高い。
・負荷追随性が高く(出力調整がしやすい)、原子炉の小型化が可能。
・トリウムは埋蔵量が豊富で、世界各地に産出する(ただし日本では採れない)。
・プルトニウムなど超ウラン元素をほとんど生成せず、放射性廃棄物が減少する。
・既存のプルトニウムを燃料に混ぜて焼却することができる。
これまでトリウム熔融塩炉が省みられなかった理由のひとつが、発電時にプルトニウムを生成しないことでしょう。原発は原子力の平和利用を謳いながら、実はプルトニウムを産出することで軍産複合体の一翼を担っていたのです。

あまりに良いこと尽くめで、本当にトリウム熔融塩炉に欠陥はないのか、かえって心配になりました(笑)。
原発立地自治体の首長が「40年以上経った原発は順次運転を停止し、新規建設計画は認めない。ただしトリウム熔融塩炉なら受け容れる用意がある」と宣言すれば、日本のエネルギー政策に大転換を迫ることになると思います。福井県の西川一誠知事、いかがでしょう?
ただ、日本の大学では原子力工学が衰退しており、将来を担う人材の不足が懸念されるところです。

(4月1日読了)★★★★★

【関連サイト】
NPO「トリウム熔融塩国際フォーラム」 (理事長:古川和男)

※本書は現在品切れのようですが、5月に『原発安全革命』として復刊されます。
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ラベル:エネルギー
posted by 【電脳呆人】不純総合研究所 at 22:16| Comment(15) | TrackBack(0) | 科学技術交遊会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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