前方後円墳という独特の形状に加え、古代のタイムカプセルというイメージにロマンを感じるからでしょうか。
古墳のことならこの一冊でなんでもわかると言わんばかりの、ストレートなタイトル。ただし、大仙古墳(伝仁徳天皇陵)や箸墓古墳といった畿内の巨大古墳ではなく、地方の首長墳の事例を多く採り上げているのが本書の特徴といえます。
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古墳には大きく分けて2度の変革期があります。
4世紀末には、副葬品が鏡や石製品などの呪術的なものから、武具・馬具に変化します。高句麗との交戦が、倭国に軍備の革新を急がせました。溝口睦子・武澤秀一のタカミムスヒ論と共通する歴史観です。
5世紀後半になると、畿内大王陵に匹敵する規模をもった地域首長墳がなくなります。大和政権の地方豪族に対する優位が確定した雄略天皇の治世に相当する時代です。武具・農具には、鉄器技術の革新が顕著にみられます。
そして前方後円墳が終焉を迎えるのは、西日本では6世紀後半、東日本では7世紀初頭でした。畿内政権の強権によって、です。
最新の発掘成果も反映されています。
昨年9月に八角形古墳であることが判明し、斉明天皇陵である可能性が高まった奈良県明日香村の牽牛子塚古墳。八角形は天皇陵クラスの証であると考えられますが、地方にも八角形古墳が存在するため、引き続き検討が必要なようです。
(6月5日読了)
ラベル:古墳