2005年09月25日

マルクスさんではありません

「資本」論!…あの古典的大著と同じ、凄いタイトルです。でも資本に「」がついています。
所有とは、市場とは、資本とは、そして人的資本(労働力)とは…社会・経済の“基本のキ”のコトバの意味を改めて考えさせてくれる本です。

「資本」論
稲葉 振一郎著


まずは「自然状態」というコトバを問い直します。人間の自然状態は戦争状態である、と規定したホッブズ。国家はなくとも自然法と呼べる秩序状態にある、としたジョン・ロック。両者の不備を批判し、人為的ではあるが恣意的ではない暗黙の合意“コンヴェンション”を提示したヒューム。この三者の思想を比較して、所有とは何かを考えていくのです。

文章はとても判りやすく、おカタいタイトル、新書としては厚めの300ページ近いボリュームにも関わらず、スイスイ読めます。
資本主義経済における労働者の疎外を発見したマルクスの功績は認めつつも、私的所有と市場経済は守られなければならないとする、極めてまっとうな本であります。
しかし…この本は普通には終わらないのでした。

エピローグでは、労働力との絡みでロボットについて論じ、さらに人間が人体改造によってサイボーグ化するSF的未来社会像にまで筆が走るのです。
マルクス主義は生身の人間には実現不可能な構想だったが、人間以外の者(ロボットあるいはサイボーグ?)を主体とするなら実践されうる…という著者の結語は、マルクスさんを褒めているのか、それとも貶しているのか…?

(9月25日読了)


posted by 【電脳呆人】不純総合研究所 at 21:29| Comment(3) | TrackBack(0) | 社会・思想交遊会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
 私も浅田彰や柄谷行人の影響でマルクスを読んだので、この本には興味持ちました。この人は山形浩生とコンビで雑誌『SIGHT』によく登場します。今は閉鎖されましたが、山形浩生の掲示板や黒木玄の掲示板によく書いていた人でもあります。(過去ログはみることができます。)

あと去年『資本論』の新訳が出ました。訳者は今村仁司や三島憲一・他といった人達で、雑誌『現代思想』を読んでいる人の間では有名です。かなり文学的な訳です。
実はマルクスは理論的な人ではなく、シェークスピアのような文学系の人なんです。
あとマルクスの話をすると『インテレクチャルズ』ポール・ジョンソン 講談社学術文庫の中に含まれる短いマルクスの伝記は抱腹絶倒です。
Posted by オオクボタケヒト at 2005年09月26日 00:02
オオクボ様、読書傾向が広いですね!
稲葉振一郎は、私は本書で初めて知りました。

雑誌『現代思想』は、学生時代にはよく読んでいました。最終ページのバックナンバー一覧で、気に入った特集の号を注文できるのがいいですね。
Posted by 管理人 at 2005年09月28日 13:00
あと、NTT出版から出ている雑誌『Inter Comunicayion』のバックナンバー48番 特集「大学」に、
稲葉振一郎と黒木玄(東北大学数学科助手)との対談が掲載されています。

対談の内容は経済学です。
特に稲葉振一郎の著書『経済学という教養』についてです。

『Inter Comunication』のバックナンバーは新宿紀伊國屋書店などの都心大型書店の哲学・思想コーナーに、置いています。
参考までに。
Posted by オオクボタケヒト at 2005年10月02日 07:16
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。

この記事へのトラックバック
×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。