2005年10月02日

悲観も楽観も、いけません。

ワールドウォッチ研究所の『地球白書』は、毎年地球の危機的状況を訴えています。ローマ・クラブの『成長の限界』は、世界の壊滅的未来を予言してベストセラーとなりました。
あと30年で石油は無くなる…とは30年以上前から言われていましたが、未だに石油の枯渇は訪れていません(現在の原油高騰は石油が掘れなくなったせいではない)。
果たして私たちの地球は、実際にいまどんな状況にあるのでしょうか?



環境危機をあおってはいけない ビョルン・ロンボルグ

この本は「地球は温暖化なんかしていない、温暖化論は原子力推進派の陰謀だ」なんていう、トンデモ本ではありません。
ビョルン・ロンボルグは『地球白書』と同じFAO(国連食料農業機関)のデータを用いて、全く違う結論を導き出しているのです。
『地球白書』が森林減少が著しい年のデータから森林の加速度的破壊を憂えるのに対し、本書では長期的には森林減少はスローダウンしているとします。
また、人口増加による食糧難予測に対しては、単位面積あたりの収穫量の向上傾向を無視していると批判します。文明の進歩により、私たちの健康やエネルギーをめぐる状況は、かえって好転しているというのです。

かといって、この本は環境問題に対して何もしなくて良いと、言っているのではありません。未だエネルギーが危機的状況に無いのは、省エネ技術革新の積み重ねの成果であり、新たな油田が採掘可能になっているからで、こうした努力は今後も続けていく必要があります。

利用可能な資源が増えたからといって地球の有限性に変わりはありません。
また、大気汚染は改善傾向にあるが、シックハウス症候群やアスベスト問題など室内の空気は悪化しているし、食品の残留農薬で死に至る可能性は無視できるほど低いが、喫煙による健康被害は深刻だといいます。

地球環境のデータを正しく読んで、どの問題を優先的に解決すべきか適切なコスト配分をしよう、というのが、著者の主張だと思います。
600ページ近い本文と、膨大なデータを掲載する大著ですが、文章は平易で意外と読みやすい本です。

(10月2日読了)


posted by 【電脳呆人】不純総合研究所 at 18:19| Comment(11) | TrackBack(1) | 自然科学交遊会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
Fujunさん読むの早いですね。驚きです。
(・_・;)

私もかなり早い方ですが、それでも、この厚みと文字数には驚かされます。
この本の画像をクリックすると、bk1のオンライン書店につながりますね。
そこには訳者の山形浩生の書評が掲載されています。

ところで、この本とは違いますが『嫌煙権』に関する本が、小谷野敦・他:著で最近出ましたね。

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4584120994/qid=1128255467/sr=1-2/ref=sr_1_10_2/249-5442824-5181120

この本の書評ではないのですが、山形浩生のサイトで嫌煙権の話をしているので、ちょうどいいタイミングだなあと思いました。

http://cruel.org/jindex.html
Posted by オオクボタケヒト at 2005年10月02日 21:23
あと「地球温暖化論が原子力推進派の陰謀だ」というのは、言われる通り、確かにトンデモ説です。

けれど、原子力推進派が「地球温暖化論」を強く肯定しているのは事実です。
また原子力推進派は、「原子力発電は二酸化炭素を少ししか出さない」→「地球温暖化を遅らせることができる」ということを主張して、「地球温暖化説」を自分達の宣伝に使っているのも事実です。

その分析としては『地球温暖化論への挑戦』薬師院仁志(八千代出版)が、参考になります。槌田敦とシュナイダーの比較分析が、「へえー」と思わされます。

この本は、かなり話題になり、養老孟司の『いちばん大事なこと』や池田清彦の『やぶにらみ科学論』でも取り上げられています。
Posted by オオクボタケヒト at 2005年10月02日 21:44
オオクボ様、いつも情報ありがとうございます。

『環境危機をあおってはいけない』は膨大なデータと事例を挙げていますが、各章末にある著者の「結論」を読めば内容がスッキリする、親切な作りの本ですね。
Posted by 管理人 at 2005年10月02日 23:40
あとロンボルグ編集の本で、未訳ですが、こんなのがあります。

参考までに
http://cruel.org/cut/cut200501.html
Posted by オオクボタケヒト at 2005年10月05日 00:39
こないだの嫌煙権騒動?の続きです。
このブログでも取り上げていました。

http://www.sgtpepper.net/garden/diary/?date=20051003
Posted by オオクボタケヒト at 2005年10月10日 00:31
賢い悲観・賢い楽観を心がけています。
Posted by さっきい at 2005年10月16日 21:04
さっきい様。
素敵なコトバを有り難うございます。
この本の著者も書いていましたが、世の中は悲観論の方が流布しやすいみたいです。
楽観論だと、頭悪そうに思われるんでしょうか?

Posted by 管理人 at 2005年10月16日 22:25
愚かな楽観・愚かな悲観もありますからね(苦笑)
Posted by さっきい at 2005年10月17日 00:50
過去を踏まえた楽観論
未来につながる悲観論・・・ならいいですね!
Posted by 管理人 at 2005年10月18日 12:45
 クリティカル・ポイントは、2030年までにおきる、地下水減産にともなう、不可逆な食料危機にあります。食料奪い合いの、紛争と虐殺が世界各地でおこり、収拾がつかなくなるでしょう。
 この回避のためには、一万軒級の造水機を、百万機、乾燥地の海浜に設置し、点滴灌漑をおこなう必要があります。大規模で、実現は困難ですが、虐殺よりはましです。(^^;;;
Posted by 地球環境 at 2008年03月24日 21:14
地球環境様

水不足がもたらす地域紛争は、非常に現実的な危機であると思います。

高度成長とオリンピックに沸く中華人民共和国の死角もまた、深刻な水不足にあるといいます。
http://blogs.dion.ne.jp/fujun/archives/6381946.html
中国産食品の安全性が問題となっていますが、オリンピック選手村には国家の威信を懸けて一流の料理人を集めていますから、選手が食中毒になる心配はないでしょう。
しかし、水ばかりは料理人の腕ではどうにもなりません。
もっとも、水道水をそのまま飲める日本のような国は少数でしょうが。
Posted by 管理人 at 2008年03月25日 22:17
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