2006年12月11日

氷の世界

地球温暖化という言葉を聞かない日はない、昨今。
地球の平均気温は、産業革命以降の人類の文明活動が排出した二酸化炭素(CO2)をはじめとする温室効果ガスによって、上昇しているといわれています。

地球の歴史は、温暖化と寒冷化を繰り返してきました。地球温暖化説が定着する前は、現代は氷河期と氷河期のあいだの間氷期であり、地球は寒冷化に向かっているというのが、むしろ定説でした。
これからするお話は、氷河期なんて生やさしいものではありません。かつて地球全体が(赤道直下も含めて!)氷の世界だった、というものです。

私のお気に入りスポットに、恐竜博物館があります。ここの売り物はもちろん、数々の恐竜の全身骨格標本ですが、地球や生命の歴史についての展示も充実しています。
今年の特別展示は、エディアカラ生物群でした。先カンブリア時代の、軟らかな体をもった生命体が岩石に残した、かすかな痕跡の化石です。
化石とともに、原初の地球の歴史を解説したパネルも展示されていました。そのなかにあったのが、太古の地球を襲った大異変・全地球凍結スノーボールアース説です。

スノーボール・アース



ガブリエル・ウォーカー著 / 川上 紳一監修 / 渡会 圭子訳



地球に最初の生命が誕生したのが、約30数億年前。以来、今日に至るまでその営みは連綿と受け継がれてきています。
しかし長い地球の歴史は、生命を一掃しかねない大絶滅を何度も経験しました。最近では、6500万年前に恐竜やアンモナイトが姿を消した、白亜紀末の大絶滅があります。

全地球凍結は、約7億年前に起こったとされています。
これまで地球は、灼熱の火の玉が徐々に冷えて現在の安定した気候になったと考えられていました。途中、一度でも地球が氷に閉ざされたとは想像だにできませんでした。
しかし、赤道直下を含む世界各地で見つかる氷河堆積物は、地球全体が氷に覆われていたことを示すものでした。
スノーボールアースの引き金は、二酸化炭素の減少だと考えられています。氷床は極地から次第に拡がり、氷床は太陽光線を反射することで、さらに寒冷化を進めます。当時、地球の大陸がひとつに集まっていたことも、氷床の拡大を助けました。
多くの生命は絶滅しましたが、海底火山の熱や氷の隙間から僅かに日光が届く場所で、生き永らえたものもいました。
やがて火山ガスにより、氷の世界は崩壊します。今度は短期間に大気は40度まで上昇したと考えられています。
この急激な環境変化が、生命の多様な進化のスイッチとなり、エディアカラの不思議な生き物たちを生み出したのかもしれません。
なお、地球全凍結はこのとき一度きりではなく、約20億年前にもあったといわれています。

スノーボールアースというアイデアを最初に思いついたのは、天才的なひらめきの持ち主であるが飽きっぽい、ジョー・カーシュヴィンク。そしてこの新説を世に知らしめたのは、マラソンランナーでもある激情家のポール・ホフマンです。
本書は科学解説書というよりは、スノーボールアースをめぐる地質学者たちの、小説のようなスリリングな物語です。科学書は苦手だという方にも、おすすめできます

(12月10日読了)


posted by 【電脳呆人】不純総合研究所 at 00:37| Comment(20) | TrackBack(2) | 自然科学交遊会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
その説については、前に「Weekly blog」で紹介してたのでコメントしたことがあります。「Weekly blog」は、私が原因で火事がよく起こりました。
(^^;)
Posted by おおくぼ at 2006年12月11日 11:23
おおくぼ様

スノーボールアース説に光スイッチ説…生物だけでなく、進化論も日々進化していますね(笑)
以前採り上げた『カイアシ類』の本も、最近の進化学説がコンパクトに紹介されている良書でした。
地球は気温だけでなく、酸素が発生したり無くなったりと、想像を絶する激動の歴史を歩んでいるようです。

…今回のタイトルは井上陽水から拝借しました。
Posted by 管理人 at 2006年12月11日 14:10
井上陽水・・・気付きませんでした。
F(^^;)
テレビで「HEY×3」を見てたら、陽水と奥田民生が出てました。陽水は絵文字メールが好きだそうです。
「氷の世界」は確か大ヒットアルバムでしたね。陽水といえば「いっそセレナーデ」ぐらいしか知らないんですけど。

Posted by おおくぼ at 2006年12月12日 00:14
おおくぼ様

井上陽水の『氷の世界』は、日本で最初のミリオンセラーアルバムなんだそうです。
実は私が陽水を知ったのも、1984年の『いっそセレナーデ』です。

『Weekly blog』さんは、ここと重なる話題が多いですね。
「広く浅く」がモットーの私よりも、ずっと深く掘り下げていらっしゃいますが(笑)
私はモノゴトの根っこの部分が気になる質なので、生命の歴史学である進化論が大好きなのです。

Posted by 管理人 at 2006年12月12日 23:22
深く掘り下げると、あちこちから石を投げられる恐れがあります。ご注意を!
私がキリストに倣って、罪の無いものだけが石を投げていいといいたいです。
(^^;)
Posted by おおくぼ at 2006年12月14日 23:49
無罪モラトリアム・おおくぼ様
(↑書いてはみたものの、どんな歌かは知りません…)

私は、法律の条文や経済政策などの現世利益的な学問よりも、この世にはなぜ法やお金が存在するのかという根源的なテーマに惹かれます。
私はアタマが悪いので、根元を見ないと枝葉まで理解が及ばないのです。
おおくぼ様のように殊更「王様は裸だ!」と暴き立てたいわけではありません。
結果は同じでしょうが(笑)

キリスト教原理主義者(ファンダメンタリスト)は、進化論ではなく創造説を教えるように主張していますね。
私は、聖書は進化論を否定していないと思います。
創世記の、知恵の実を食べた人間は産みの苦しみをもたらされたとの記述は、人類は直立二足歩行によって巨大な脳を獲得したが、それによって出産の困難を伴った、進化のプロセスを暗示しているように読めるのです。
こういうコトを書くと、石が飛んでくるんですよね(笑)
Posted by 管理人 at 2006年12月15日 21:21
『無罪モラトリアム』は椎名林檎のアルバムの名前です。ちなみに無罪=Mとモラトリアム=Mで、M・Mになっています。次のアルバム『勝訴ストリップ』はS・Sです。

私のブログは「王様は裸だ!」を主張するのが目的のブログです(笑)。でも普段の読書は、そんなことを目的に読書している訳ではありません。また以前は哲学書が好きだったのですが、それは理屈で理解したいという欲望の現れです。今は、映画情報と会計理論の本が多いですけど。

ところで進化論に関しては前に一度リンクしたのを、もう一度。

http://senahideaki.cocolog-nifty.com/book/2006/04/post_c971.html

キリスト原理主義者と進化論の関係は、面白いんですけど。確か早川文庫にいいのが有ったのですが、書名を忘れました。
Posted by おおくぼ at 2006年12月16日 00:56
おおくぼ様

進化論VS創造説のみならず、進化論は思想とリンクすることが多いですね。
生物学の視点で人間を捉えようとする社会生物学が、「人間の才能は遺伝的に決定される」とする思想として、批判されました。
進化は漸進的にではなく急激に起こるとする、古生物学者スティーブン・ジェイ・グールドの理論は、政治的には革新思想と結びつけて語られます。

古生物学の研究成果は、生物種がある時期に爆発的に増えたり、生物が長い間姿形を変えなかったり、時には大絶滅があったことを示しています。
一方で、生物の形質が変化するには遺伝情報の変化が必要ですし、小さな遺伝情報の変化の蓄積でも、大きな変化を起こすに十分なほど生命の歴史は長いという、リチャード・ドーキンスらネオ・ダーウィニズム派の主張にも納得できます。
進化のプロセスの真相は、両者の要素をあわせ持っているであろうと、私は思います。
Posted by 管理人 at 2006年12月17日 16:18
ゴールデンウィークに恐竜博物館に行って来ました。恐竜好きな私は大満足でした。すごく混んでましたが。中華翼竜(羽が生えてくりくり目の)はとってもキュート。ブログにコメントありがとうございました。FUJYUNさんのブログもいつも見てます。今後も宜しくお願いします。
Posted by kaolin at 2007年05月12日 21:29
kaolin様、いらっしゃいませ。
滅多に更新しないblogですが(笑)、宜しくお願いします。

福井県立恐竜博物館の最大の売り物は、もちろん迫力ある恐竜の全身骨格ですが、私のお気に入りは「地球の科学」コーナーです。色鮮やかな鉱物の数々に、何度行っても目を奪われます。
恐竜博物館の開館によって、従来の福井県立博物館は県立歴史博物館に改称され、恐竜博物館は自然科学系の総合博物館という位置づけです。
毎月第三日曜日(家庭の日)と11月の関西文化の日は、入場無料です。来週は最近発掘された恐竜の皮膚の化石を見に行こうと思っています。
Posted by 管理人 at 2007年05月13日 20:16
とつぜんすみません、実はわたくし大阪でしがない飲み屋みたいなものを営んでおります。うちの店に数ヶ月に1回のペースで疲れたアメリカ人のおっさんがやってきます。日本語がぜんぜん話せないので、私のつたない英語で相手をしておりますが、なにやらこのおっさんは話が大きすぎて「この間南極行ってきた」とか、そういうバカげたこと言うもんで、ホラふき扱いしていたのですが、実はそのおっさんはジョーという名前しか知らなかったのですが最近 ジョー・カーシュヴィンクだということが判明しました。ウェブ上で写真も確認しましたが、このおっさんはスゴい人なのでしょうか。学問のことは詳しくありませんので、よろしく解説お願いいたします。
Posted by Hartland at 2009年03月27日 19:54
Hartland様、いらっしゃいませ。
福井でしがないblogを営んでいる管理人です。

お店に来られたのは、この人でしょうか?
http://www.snowballearth.org/people.html#kirschvink
http://www.gps.caltech.edu/users/jkirschvink/
奥様は日本人、それで大阪に現れるのですね。
ジョーさんは、スゴい人だと思います。かつて地球はすべて氷の世界だったと言い出して、それが科学の新しい常識になったわけですから。
大陸は動いているとか、地球に巨大隕石が落下して恐竜が絶滅したとかに、匹敵するインパクトがある説ではないでしょうか。
Posted by 管理人 at 2009年03月28日 22:59
わかりやすくご説明いただき、誠にありがとうございます。たしかにこのリンクにあります写真のオヤジであります。うちに来るときはゴーグルしていませんが・・・。ちなみに昨日も来ました。オクサンと息子さんが大阪にいるみたいです。ちなみに息子さん2人とも男前です。そうですか、偉い人やったんですか・・・でも態度変えたら厭がって来なくなるかもしれないので今までどおりじゃけんに扱った方がいいかなとも思うんですがどうでしょうか・・・
Posted by Hartland at 2009年03月29日 00:49
科学者だって同じ人間ですから、急にかしこまることはないと思います。
「あんたが考えたスノーボールアース説って、日本では結構有名だぜ」と言ってあげたらどうでしょうか?
あるいは「地質学の研究もいいけど、カミさんが日本人なら少しは日本語勉強しなよ」と言ってみるとか?(笑)
Posted by 管理人 at 2009年03月29日 20:26
>地質学の研究もいいけど、カミさんが日本人なら少しは日本語勉強しなよ

はははははははh
めっちゃウケました。そのように伝えておきます。
どうもありがとうございました。
Posted by Hartland at 2009年03月30日 19:01
カーシュヴィンク先生の息子さんの名前は、ジセキ君とホーセキ君(磁鉄鉱と宝石)。
日本語なんですけどね…(笑)
Posted by 管理人 at 2009年04月01日 19:46
すみません、ジセキ(磁石)くんとコーセキ(鉱石)くんというそうです。2人とも男前です。鉱石くんは今年4月から大学生でMITと東大受かったけどMITは蹴ったそうです。

たいへん失礼いたしました・・・
Posted by Hartland at 2009年04月01日 19:47
ジセキ君とコーセキ君ですか。
gemstoneと書いてあるので、宝石と思いました。
Posted by 管理人 at 2009年04月05日 21:50
こんにちわ、ごぶさたしています。昨夜ジョーと会いました。彼はこの本は面白いがガブリエル・ウォーカーは取材不足でウソが多い。私のプライベートに関することは殆ど誤っているし、私が飽きっぽい性格でスノーボールアースを提唱したあと放置してきたかのような記載は大きな誤解である。と言っていました。ちなみにご子息は2人とも独立されたので、奥様はジョーとともに渡米されるそうです。これからは頻繁に会えなくなるので少し寂しく思っております。
Posted by Hartland at 2010年07月27日 09:51
お久しぶりです。
ジョーさんが飽きっぽっくて、スノーボール・アースというアイデアを放棄したかのような書き方はウソですか。本に書かれてしまった側の意見は、なかなか聞けませんね。
貴重な投稿、ありがとうございます。
Posted by 管理人 at 2010年07月28日 21:06
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