2007年01月08日

これでホントに核廃絶?!

北朝鮮の核実験発表に大きく揺れた、2006年。
世界の核軍縮は一向に進まず、NPT核拡散防止条約)体制は、米・ロ・英・仏・中の核保有を正当化しているに過ぎません。
核兵器を廃絶するには、核の脅威を無力化するテクノロジーが必要ではないかと考えますが(あくまで核の脅威の無力化であって、核兵器を上回る破壊力を持つ兵器の開発ではありません)、そんな夢のようなテクノロジーが果たしてありうるのでしょうか?

地球上から核兵器を消滅させることが可能だという、世界的物理学者が日本にいます。

世界で初めて原子爆弾を開発した、マンハッタン計画。そこにはノーベル賞を受賞した世界的な物理学者が数多く関わっていました。
「物理学者たちは恐ろしい原爆を作り上げた、物理学者としてこれを消し去る責任がある」
こう語るのが理論物理学者・菅原寛孝氏です。

原子爆弾開発の過程で、科学者たちはある壁にぶつかりました。それが未熟爆発と呼ばれる、プルトニウムが十分に核分裂する前に小規模な爆発を起こしてしまう現象です。未熟爆発を克服して核分裂の連鎖による大爆発を可能にしたのが、爆縮レンズと呼ばれる仕組みでした。
菅原氏はこの未熟爆発に着目し、核兵器を意図的に未熟爆発させて消滅させようと考えたのです。でも、どうやって?
菅原氏の構想は、核兵器にニュートリノを発射するものです。
ニュートリノは太陽の核融合や宇宙線が大気と衝突した際に発生します。しかしニュートリノは地球をも貫通してしまう、観測の困難な素粒子です。小柴昌俊氏のノーベル賞受賞でご存知の方も多いでしょう。
このニュートリノを地球の裏側から核兵器に向けて発射し、核兵器に中性子を浴びせて未熟爆発を起こして破壊してしまおうというのです。

核兵器消滅装置に必要なニュートリノのエネルギーは1000テラev。これがどんなにとてつもない超強力エネルギーかと言いますと…
1000テラevのエネルギーを得るのに必要な粒子加速器は一周1000q。これを稼動する電力は5000万kw。日本の発電設備は1億9800万kwなので、瞬間的にではあっても、日本中の電力の4分の1を消費します。さらに1000qの巨大加速器の建設費には数兆円かかると見積もられます。
今よりも強力な超伝導磁石が使えるならば、粒子加速器の規模は60q、建設費は数千億円に抑えられると言いますが…
問題は規模やコストだけではありません。
中性子が、標的となった核兵器周辺にいる人間を殺傷する可能性。
未熟爆発とはいえども通常の核爆発の3%の破壊力があり、周辺への物理的損害や放射能汚染は避けられないでしょう。
そしてなにより、核兵器の所在位置の特定は難しく、標的に命中するのかという疑問。

ニュートリノによる全核兵器消滅計画は、人類を救う希望の光か?
それとも稀代のトンデモか?

(1月7日読了)


posted by 【電脳呆人】不純総合研究所 at 02:18| Comment(12) | TrackBack(1) | 科学技術交遊会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
持ってさえいれば絶対攻撃されないというわけではなく、先に使われてしまえばオシマイ、といって先に使えば国際社会から袋だたきにされかねないし、放射能には国境なんて無いから被害はどんなかたちでどこまで広がるかわからない…。

ある人曰く「核兵器は核戦争を抑止するためにある」そうで…およそ割に合わない代物だと思うんですけどもね。でもなんだか持ったものがちみたいな風潮に…。
Posted by catfish66 at 2007年01月13日 00:11
catfish66様

NPT体制とは、米・ロ・英・仏・中の5ヶ国以外の核兵器保有を防止しているわけですから、まさに持ったもの勝ちですね。

物理学者・菅原氏は、世界政府を樹立して「ニュートリノ核消滅装置」を管理する構想を描いています。もしも全ての国家が一致団結して核兵器を廃棄したとしても、人類が核技術を知っている以上は、何者かが再び核兵器を製造する可能性を否定できません。その時に備える意味でも「ニュートリノ核消滅装置」は有効だと言います。

でも、理論と技術は別モノですからね…

Posted by 管理人 at 2007年01月13日 22:38
実現できるかどうか・・・物理的な難しい事はわかりませんが、たしかに核兵器を無力にできる装置が開発されれば、核を持っても無意味だ、という事になるので、とても良い装置ですね。

また、それを無力化する物が開発されるかも知れませんが・・・
Posted by indoor-mama at 2007年01月18日 17:06
indoor-mama様

科学者って凄いことを考えるんだな〜と、感心しながら読みました。
でも、核兵器はどこに隠されているのか判りませんから、ニュートリノ発射装置が技術的に可能であっても、当たるかどうかが一番の難点ですね。
しかし科学技術の進歩は、何かのきっかけで大きくブレイクスルーすることがあります。
「今日のトンデモ」が「明日の常識」になるかもしれません。

私たちは科学のおかげで快適な生活を送り、健康で長生きできるようになりました。
一方で、科学は自然環境を破壊したり、武器を発明して人命を奪ったりもしています。
私たちは科学を放棄することはできません。
科学が犯した罪は、科学の力で解決せねばならないと思います。
Posted by 管理人 at 2007年01月18日 21:06
貧乏人は何でも持ちたがる。独自性がない。奴隷根性が抜けない。

デンマークはデザインで勝負する。
熔鉱炉は待たない、鐵は近隣から買う。
裕福に暮らしている。

東アジアでは、鐵から自動車からワンセット品揃えしないときがすまない。貧乏な性分です。
Posted by エノク&トマス at 2007年01月19日 05:56
核兵器は現代社会では究極の抑止力です。
これがあれば小国といえども超がつく大国と外交面で互角にわたりあえます。これを実践しているのが北朝鮮です。北朝鮮にはもう旧式な核兵器と弾道ミサイルしかありません。核の廃棄を求める声が強くとも「将軍様」が核兵器を捨てることはないでしょう。そして北の核がある限り我が国は、北から絶えず脅威を受け続けます。
 「毒には毒をもって制する。」といいますが、北が核を持った今これを「無」にする手立てが必要であることは、誰にでもわかります。つまり我が国も核兵器を開発し装備するわけです。そして経済制裁を徹底する。目的とするのは北朝鮮の体制変革です。
 国を変えるのは外国勢力にあらず、その国の国民です。北朝鮮の一般庶民が立ち上がるために、諸外国は支援をすべきなのです。核開発、装備は共産中国の軍事的肥大化を抑止することにもつながります。今日本は核武装しても非難するのは米中くらいじゃないでしょうか?
 日清日露戦争の時のような国民の気概がほしいものです。今国が一つにまとまらなければ、様々な謀略をしかけてくる外国勢力に対抗できません。アメリカに依存しすぎた国民気質をあらためる、見直すことから日本人としての本来のあり方を一人一人が問い直す時なのです。
Posted by テン丸 at 2007年01月19日 09:10
エノク&トマス様

すべてを自給自足する生活が決して地球にやさしくないように、原材料から製品まですべて一国でまかなうことが経済効率が良いわけではありませんね。リカードの比較優位を持ち出すまでもなく。

菅原寛孝氏は、ニュートリノ核兵器消滅装置をどこの国に設置するか、本書を読む限り(著者は別人)一切触れていません。
装置は「世界政府が管理する」とだけ述べています。

一周1000qもの粒子加速器を日本に置くことは無理でしょう(笑)


Posted by 管理人 at 2007年01月20日 00:05
テン丸様

日本が配備する核兵器は、地球の裏側まで飛ぶ必要はありません。
そんなモノを持つことは、それこそアメリカが許さないでしょう。
北京・平壌に届けば十分です。中共が尖閣諸島を武力制圧するなら、北京が世界地図から消えますよ…、と。
日本の核武装をアメリカに認めさせるには、アメリカに核を持ち込んでもらうとか、アメリカと核のボタンを共有するという案が考えられます。ただし、アメリカが永遠に日本の味方であるという保証はありません。

もちろん、日本核武装論には欠陥も多くあります。
・NPT条約によってウラン輸出を停止されるのでは?
・どこで核実験をする?(実際に爆発させずにコンピュータ・シミュレーションで済ます?)
・どこに配備する?スパイ対策は大丈夫?
・イカレタ独裁者が政権を握って、核のボタンを押したらどうする?…など。

日本は過去の戦争で、周辺諸国に多大な損害をもたらしました。
日本は絶対に戦争をしません。
軍隊も持ちません(国境の警備と国内のテロ対策に必要最小限の自衛力と、国連決議に基いて組織される〜アメリカの私兵ではない〜国際貢献部隊を持つことは可)。
しかし、他国から攻撃されない抑止力を持つ。
私は「憲法9条を護るための核武装」を妄想しています。

妄想ついでに、私は日本の核ミサイルは政治的・軍事的な駆け引きの道具ではなく、真に国民の生命が危機にさらされた時の一種の護符であると考えます。核のボタンは政治家が持つのではなく、天皇が三種の神器とともに継承してはいかがでしょうか。

なお、私は核保有が倫理的に正しいと言っているわけではありません。
防衛コストの問題です。
核兵器は廃絶されるべきです。しかし核兵器だけが非人道的なのではありません。銃も戦車も、あらゆる武器は人殺し以外の役に立たない廃絶されるべきものです。

追記;
北朝鮮への経済制裁ですが、民主国家であれば経済制裁は政権転覆につながるでしょうが、専制国家への経済制裁は効果が無いように思います。独裁者は民衆が飢えても気にしませんから。
ちゃんと民衆の手に届くのであれば、食糧や医薬品くらい援助してやっても良いのではないでしょうか
Posted by 管理人 at 2007年01月20日 00:19
私は「核爆弾も原子力発電も無くなって欲しい派」なんですけど・・・。
ご紹介の本の説は、ハリウッド映画の脚本にはなるかもしれないけど、信じられません。
この理論が正しいとすれば、原子力発電所も、遠くから爆破できるのでしょうか? テロリストに使用されるとヤバイかな?
(?:?)
Posted by おおくぼ at 2007年01月23日 00:29
ニュートリノ核消滅装置、もちろん私も信じられません。
理論が正しいとしても、まずは標的(核兵器)に命中しないと思います。
一周1000qの粒子加速器は、持ち運べるようなものではありませんから、テロリストに使用される心配はなさそうですが(笑)
しかし菅原氏は、全核兵器消滅計画を大真面目で構想しているようです。科学が犯した罪を償うことが、科学者の使命であると。
久しぶりにスケールの大きな、トンデモない本に出会いました。

ちなみに私は、核兵器も軍隊も、あらゆる武器がこの世から無くなって欲しいと思っています。
そう願う一方で、現実の日本周辺の状況を見ると「憲法9条を護るための核武装」のようなトンデモ妄想をしてしまうのです。

決してお互いの生命を脅かさない個人たちによる、リバタリアンのユートピアを夢見つつ…
Posted by 管理人 at 2007年01月23日 01:23
1・原子力潜水艦などで常に移動している、先進国の核砲台の位置を特定するのは不可能。

2・そもそも場所が分かっていれば、未熟爆発などさせず、普通に破壊すればいい。(核爆発は、意図したタイミングで爆破させない限り起こらない。)

北朝鮮レベルなら、バンカーバスターで良いのでは?

3・この技術自体が、生物のみを殺傷する「中性子爆弾(放射能を大量に出し、生物だけを殺すのが目的の水爆)」のビーム版になる。

Posted by 通りすがり at 2010年03月10日 16:36
1〜3の問題点、全くその通りです。
「全核兵器消滅計画」の実効性は、ゼロと言って良いでしょう。
ただ、科学者の誇大な妄想が、人類に新たな発明や発見をもたらす可能性もありますので、そこは評価します(笑)
Posted by 管理人 at 2010年03月11日 23:46
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