2007年01月29日

赤ちゃん売ります

タレントの向井亜紀さんは、2003年に代理母出産によって双子のお子さんを授かりました。
代理母出産では、遺伝上の母親と産みの母親が異なります。向井さんは子宮頸がんを患って子宮全摘出手術を受けており、別の女性のおなかを“借りる”ことによって、自身と夫・高田延彦さんの子どもを授かることができたのです。

世の中には、不妊に悩む人々が少なからず存在します。
医療技術の進歩は、これまで子どもを授かることができなかった人々に希望をもたらしました。しかし、体外受精や代理母出産には高額な費用が要求されます。
ベビー・ビジネスとも呼べる新たな市場。その驚くべき実態を、教えてくれる本があります。


ベビー・ビジネス



デボラ・L.スパー著 / 椎野 淳訳



一般的な商品は、市場における需要と供給のバランスで適当な値段が決まります。リンゴの値段が高過ぎるなら、代わりにバナナを買うことができます。
しかしベビー・ビジネスの世界は、他の市場とは異なります。わが子を授かりたいと願う人々は、ありとあらゆる治療を繰り返し試み、可能な限りの費用を投じるのです。そう簡単に諦められるものではありません。かけがえのない、自分たちの遺伝子を受け継ぐ命のためになら。

ベビー・ビジネスは、不妊治療にとどまりません。
着床前遺伝子診断によって、胚が重度の遺伝病を持っているか否かを知ることができます。そうなると健康ではないと判断された胚は、破棄されてしまいます。
“胚の選択”は、いずれ優秀な遺伝子に操作された子ども“デザイナー・ベビー”の誕生を導くことになるでしょう。
バイオテクノロジーばかりでなく、国際的な養子縁組の斡旋もまた、金銭の介在するビジネスといえます。

あらゆるベビー・ビジネスを禁止してしまえば、闇市場が生まれたり、規制の強い国の住民は規制の緩い国へ渡って子どもを授かろうとするでしょう。
宝石や高級ブランド品のような“贅沢品”として生殖医療を位置づければ、濫用は避けられますが、恩恵を受けられるのは裕福な人ばかりです。その先にあるのは、ジーンリッチジーンプアの階級社会かもしれません。
生殖医療を、ドナー登録制の臓器移植のように扱うことも考えられます。商取引の要素は排除され“人体の売買”という懸念はなくなります。しかし全くの無償で代理母を志願したり精子や卵子を提供しようとする人は、多くはないでしょう。

…いろいろと考えさせてくれる一冊です。

(1月29日読了)

【不純文學交遊録・過去記事】
ヒトがモノになる


ラベル:生命倫理
posted by 【電脳呆人】不純総合研究所 at 20:51| Comment(8) | TrackBack(2) | 社会・思想交遊会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
こんにちわ
子供をほしければ、孤児を養子にすればいいじゃんね。
あまり難しい、ややこやしいことしなくても簡単に考えて。
Posted by むっち at 2007年01月30日 10:40
むっち様

本書によると、不妊に悩む人は可能な限りの治療を求めるし、医師の方もあきらめて養子をもらうことを勧めたり、子どもが無くとも充実した人生があることを語ったりはしないそうです。だからベビー・ビジネスの世界は、とどまるところを知らないと。

なにがなんでも自分の遺伝子を受け継いだ子どもが欲しいという思いは、人間も生物である以上は自然な欲求でありますし、一方で生物的本能に基づいたエゴイズムであるとも言えます。
(しかし、深刻に不妊で悩んでいる人を前にしては「養子でいいじゃん」とは言えません…)

なお本書は欧米の事例ばかりですが、訳者のあとがきによると、日本人の望まれずに生まれた赤ちゃんが、海外に引き取られるケースは少なくないそうです。
1993年のハーグ条約(国際養子縁組に関する条約)を、日本は批准していません。つまり日本から送り出される養子には「人身売買ではない」という政府の公的なお墨付きがないのです。

先端医療とは話がズレますが、少子化対策云々以前に、ただでさえ少ない子どもや若者が、死なない世の中になって欲しいですね。いじめ自殺や凶悪犯罪、幼児虐待に親子兄弟での殺し合い…悲しいニュースばかり聞いていると、こんな世の中で子育てなんかしたくないと思う人もいるのではないでしょうか。
Posted by 管理人 at 2007年01月30日 22:01
「養子でいいじゃん」と言う勇気を!(笑)

Posted by おおくぼ(通りすがり) at 2007年02月04日 22:53
通りすがりの、おおくぼ様

子供が欲しけりゃ養子でいいじゃん!
子供がなくとも明るい人生はある!
少子化上等!

…勇気を出して言ってみました(笑)
Posted by 管理人 at 2007年02月05日 18:11
あしあとありがとうございます。卵子バンクまで登場してたいへんです。
Posted by tenmado_skylight at 2007年02月06日 22:42
tenmado_skylight様、いらっしゃいませ。

医療分野に限らず、最先端のテクノロジーが今どのような状況にあり、将来どこまで可能なのか、私たちは知っておかねばなりませんね。

ただ、クローン技術や遺伝子操作で生まれながらに優秀な遺伝子を持った子供が生まれても、教育機会が与えられなければ優秀な人材にはならないと思います。
Posted by 管理人 at 2007年02月07日 12:57
月刊誌『論座』の最新号に掲載の、町山智浩氏のブッシュ政権と避妊政策の話が面白かったです。キリスト教原理主義とコンドームの話です。
Posted by おおくぼ at 2007年02月07日 20:21
おおくぼ様

『論座』の情報、ありがとうございます。




…原理主義で凝り固まったアタマは、スパモン教でやわらかくしましょう(笑)
Posted by 管理人 at 2007年02月08日 12:54
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