2007年07月30日

ニホンオオカミの行方

世界には未知なる動物の目撃情報が数多くあります。何億年も前に絶滅したと考えられていた古代魚シーラカンスの発見は、世界を驚かせました。

1905年に奈良県東吉野村で捕獲されたのを最後に、絶滅したことになっているニホンオオカミ(1910年に福井県の福井城址で捕獲されたイヌ科の動物が、ニホンオオカミだったとの説もあり)。しかしその後も、紀伊半島・奥秩父・祖母山系などでオオカミの目撃談は絶えません。
2000年、野生動物保護学会で九州・祖母山系で撮影されたニホンオオカミと思われる動物の写真が発表され、新聞報道もされました。報道の過熱を懸念し、その後の発表を控えてきたという発見者の西田智さんが、これまでの経緯を著書をまとめました。



高校の英語教師だった西田さんは、大学生時代に専門の英語はそっちのけで野鳥の研究に没頭し、野山を駆け巡っていました。ある夜、祖母山でオオカミの遠吠えのような啼き声を聞きます。山小屋の管理人が言うには、あれは山犬だと。
山犬とは、幻のニホンオオカミのことなのか。その後も西田さんはライフワークの野鳥観察の傍ら、声の主を追い続けます。

そして2000年7月、西田さんはオオカミらしきイヌ科の動物に出会うのです。
撮った写真を元国立科学博物館動物研究部長の今泉吉典博士に送り、「ニホンオオカミの特徴を備えており、ニホンオオカミそのものとしか思えない」との鑑定を得ます。一方で、ハスキー犬のようなオオカミに血統の近い犬が、野生化したのだろうとの反論も提出されました。
生きたニホンオオカミを見たことのある専門家は、誰ひとりいません。オオカミなのか野犬なのか、写真だけでは結論が出ないようです。

サル・シカ・イノシシなどによる農作物への被害があとを絶たないのは、山林の荒廃によるエサ不足に加えて、食物連鎖の頂点にいたオオカミが絶滅したからだとも考えられています。
そこで森にタイリクオオカミを放し、日本にオオカミを復活させようとする計画があるそうです。日本に本来存在しない生物を持ち込むわけではありませんが、外来種の人為的な導入には生態系を乱す懸念もあります。
日本へのオオカミ再導入を目論む日本オオカミ協会丸山直樹教授は、西田さんの写真を否定する側(悪役?)として本書に登場します。

写真の真偽をめぐって果てしない論争をするよりも、この本が(もしかしたらまだオオカミが生きているかもしれない)日本の豊かな森林の保護を考える契機になるといいですね。西田さんは、九州地方では絶滅したとされるツキノワグマらしき足跡も発見しています。
山との出会い、オオカミ探索の日々、マスコミとの応酬、そして全国でオオカミを探し求める同志たちとの交流…本書はノンフィクション文学としても楽しめます。

『ニホンオオカミは生きている』への意見・感想は…オオカミ党

(7月30日読了)


posted by 【電脳呆人】不純総合研究所 at 21:17| Comment(14) | TrackBack(0) | 自然科学交遊会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
日本狼、生き延びてると良いですね。紀伊半島の山の中で、日本狼の血を引く種類の犬というのを見た事ありますけど。(わさまた犬とか言ってました。地元の人は信じてるようだった)。ついでに日本かわうそも生き延びてて欲しい。(北海道で見たと言ってる人がいましたが、どうせ野生化したミンクでしょう)
Posted by kaolin at 2007年07月30日 23:50
kaolin様

西田さんが遭遇したイヌ科の動物が本当にニホンオオカミなのか、写真だけで結論を出すのは難しいと思います。オオカミとハスキーやジャーマンシェパードなどを掛け合わせた「狼犬」が野生化したら、まずわからないでしょう。
オオカミとイヌは系統が分かれて間もないので、DNA鑑定も難しいそうです。

ニホンカワウソの目撃例は1979年の四国・高知が最新のようです。最後の目撃から50年を経過すると絶滅種扱いとなります。生き残っているといいですね。
Posted by 管理人 at 2007年08月01日 21:04
お久しぶりです。
何だかロマンがありますね。きっとどこかにいるのではないでしょうか!?日本もまだまだ広いですし…。

ただ、急速な自然破壊とともに心配なのは、ニホンオオカミだけのことではないですけど…。
Posted by 線翔 at 2007年08月07日 21:42
線翔様

開庵6周年、おめでとうございます。
日本の3分の2は森林ですから、オオカミが人知れず生き残っていることを願います(人に見つからなければ、永遠に「絶滅」のままですが…)。
信州には目撃談はありませんか?

ついでにツチノコもいるといいですね。
Posted by 管理人 at 2007年08月08日 01:11
はじめてコメントいたします。

西田智著「ニホンオオカミは生きている」と丸山直樹著「オオカミを放つ」両方を読みました(但し、西田著は昨日買って、まだ半分くらいしか読んでおりません)。

丸山著を先に読みましたが、絶滅しているということを前提として、それじゃあ今、日本の森で起きている問題をどうするのかという問題提起とそれに対する彼の答えを書いているのだなと思って興味深く読ませてもらいました。

しかし、そのあとで西田著を読むとニホンオオカミはまだ生きている・・・ということになり、私の中ではちょっと待てよ!! ということになりました(このあたりが丸山氏が困るところでしょうネ)。

環境問題に限らず、全ての問題は「正しい現状認識」から入るべきだと思っております。 認識を誤ると違った答えが出る・・・

読了しておりませんが、西田氏はその現状認識をきちんとやりましょうと言っているのだと思うのです。
Posted by papacino at 2007年09月26日 08:00
papacino様、いらっしゃいませ。

西田さんの本を読むと彼を応援したくなりますし、写真の動物もニホンオオカミであって欲しいと思います。
しかし写真だけでニホンオオカミだと断定するのは困難であり、当Blogでは本書をなるべく中立的に紹介したつもりです。

本来の主旨とは外れるでしょうが、自然科学的な面だけでなく、オオカミをめぐる民俗についての記述がもう少しあると、より面白い本になったと思います。
本書を読んで、日本の森はまだまだ豊かさを残していると強く感じました。写真の動物がニホンオオカミでなかったとしても、オオカミがまだ生きていると思わせる日本の自然を大切にしたいですね。
Posted by 管理人 at 2007年09月26日 21:57
はじめまして、紀伊半島在住の者です。1996年と2000年のイヌ科動物の写真はどう見てもハイイロオオカミの亜種でもイヌでもそれらのハイブリッドにも見えません。ハイイロオオカミが混じっていればもっと足や耳が長くなるはずだし、シェパードやハスキー等の雑種だとすればあの額段のない頭の傾斜角度は不自然過ぎると思う。草原や平野部に生息しているハイイロオオカミと違い山岳地帯に生息しているし、ハイイロオオカミほど大きくなく、体高も低いので草木に隠れていたらまず見つけるのは至難の業だと思う。遠吠えぐらい聞こえてもとよく言われるが群れどおしのナワバリが隣接するほど個体数がいなければ遠吠えもしないだろう。むやみに遠吠えをしていてはエサとなるシカがどんどん遠くへ逃げ去ってしまうだろ。又、死骸や骨が見つかってもよさそうだとよく言われるが山岳地帯に生息しているので斜面に巣穴を掘り、巣穴の中で息絶えたとすれば雨風で埋もれてしまうのではないかと思う。又、登山道など人が多く通るところには人間の匂いがプンプンしているだろうから嗅覚のするどいイヌ科動物はそういうところには現れないだろう。一見しただけでは野犬に見間違えられる姿・大きさをしているので今までに見かけられていても野犬だと思われていたのでは? そうすると目撃情報は得られない。シカも増えているのでエサには不自由していないと思う。いるとすれば杉や松などの針葉樹林帯ではなくシカのエサとなる広葉樹林帯で且つシカが生息できる積雪が50cm未満の地域ではなかろうか。標高700・800mから1700・1800m辺りでは。日本列島がユーラシア大陸から離れて17万年経つそうで、それよりも前から生息していたかなり古いタイプのオオカミだからハイイロオオカミとはかなり違う習性だろうと思われる。全国的に伝承が残っている送り狼にしてもハイイロオオカミではあり得ない話では? とにかく今生きている日本人は誰も見たことがない未知なる動物なのです。
Posted by ヤマイヌハイキング at 2011年06月17日 18:25
ヤマイヌハイキング様、いらっしゃいませ。
西田さんの撮ったイヌ科の動物の写真はオオカミの特徴を備えていますが、素人が実際に出会っても、ただの野犬にしか見えないと思います。
日本の国土は7割が山です。野生動物が種を維持するのにどれだけの固体数が必要か分かりませんが、ニホンオオカミは数が少ないから見つからないだけだと信じたいですね。
Posted by 管理人 at 2011年06月18日 20:48
こんにちは、またおじゃましてしまいました。『ニホンオオカミは生きている』の本に出ています1996年八木さんの撮影された秩父野犬について次のサイトに詳細が出ています。ご存知でしたらご容赦下さい。『Wanted Canis Hodophilax』 ご参考までに。
Posted by ヤマイヌハイキング at 2011年08月31日 21:16
『Wanted Canis Hodophilax』を拝見しました。
問題の秩父野犬の写真ですが、今泉吉典博士が指摘するように、首のあたりの毛並みの乱れが気になりますね。
自然に乱れたものだと思いたいですが、ニホンオオカミ生存否定派にとっては、格好のツッコミどころです。
今後の有力情報に期待しましょう。
Posted by 管理人 at 2011年09月02日 21:10
久しぶりにコメントさせて頂きます。2月19日にNHK−ETVの『見狼記』を視聴しました。番組の中で戻り狼というタテガミのあるイヌの剥製画像が出ていましたが現存するニホンオオカミの剥製・毛皮にはあのようなタテガミは存在しません。よってニホンオオカミに近いとも思えません。又、ニホンオオカミ井戸端会議3月3日ブログに出ています『紀伊半島の山棲犬』の画像を見てもただの野犬のように思えます。(立っている姿ではないので断定はできませんが)秩父野犬(仮称)の画像『首のあたりの毛並みの乱れ』の件ですがWikipediaのドールとリカオンの画像箇所をクリックしますと拡大され同じような『首のあたりの毛並みの乱れ』が確認できますので一度見てみて下さい。
Posted by ヤマイヌハイキング at 2012年03月16日 18:18
お久しぶりです。
Wikipediaのリカオンとドールの写真、首輪が付いているような毛並になっていますね。つまり、野生のイヌ科の動物に、首輪の跡のようなものがあっても、おかしくありません。
しかし、肝心のニホンオオカミの剥製には、そのような毛並はないわけですね。

最近、小倉美惠子『オオカミの護符』(新潮社)を読みました。
生物学的なオオカミについての本ではなく、民俗についても深く掘り下げているわけではありませんが、オオカミ信仰を通して「かつては何処にでもあった」日本の集落の原風景をしみじみと描いています。
Posted by 管理人 at 2012年03月19日 22:14
こんばんわ、シーボルトが飼育していました由緒あるヤマイヌ(ニホンオオカミ=Canis Hodophilax)の剥製の画像を見ますと首付け根の同じような場所に毛並の乱れが確認できますので一度ご確認されてみてはいかがでしょうか。又、秩父野犬(仮称)を写真で見る限り毛が雨で濡れていると思われますので乾いている剥製の毛並みとは見た目が異なることは仕方がないと考えます。
Posted by ヤマイヌハイキング at 2012年04月02日 21:43
ヤマイヌとは単なるニホンオオカミの別称(一種の方言)なのか、あるいはニホンオオカミとは異なる生物(例えば野生化した飼い犬)を指すのか、曖昧な気がします。
Posted by 管理人 at 2012年04月04日 22:41
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