2007年11月04日

キツネにつままれる…

日本ファンタジーノベル大賞は、個性的な作家を数多く輩出しています。
最も有名なのは『リング』『らせん』などでおなじみの鈴木光司氏でしょう。また恩田陸氏の『6番目の小夜子』『球形の季節』、小野不由美氏の『東亰異聞』は受賞にこそ至らなかったものの、この賞から生まれた作品です。
(私の好きな作品ばかり挙げました…スミマセン)

最近の注目株は森見登美彦氏ではないでしょうか。京都を舞台に自意識過剰な学生の妄想(ファンタジー?)が暴走する『太陽の塔』でデビューしています。
デビュー当時、雑誌『ダ・ヴィンチ』のインタビューで「次は骨董屋を舞台にした静謐な作品を構想中」と語っていた森見氏。しかし実際に刊行された第2作は『太陽の塔』と同じ路線の『四畳半神話体系』でした。
あのとき構想していた静謐な作品とは、おそらくこの本のことだと思います。



きつねのはなし

舞台は京都。
大学生の私(武藤)は、芳蓮堂という小さな古道具屋でアルバイトを始めました。私は天城さんというお得意さんのお屋敷へ配達を頼まれます。薄暗い屋敷から現れた天城さんは、死神のように陰気な中年男性でした。
芳蓮堂を経営するナツメさんは、30歳くらいの女性。天城さんに会うのが好きではないようで、私はたびたび代わりに行くようになります。ナツメさんは「あの人から何か要求があっても、決して言うことを聞いてはいけない」と注意します。(きつねのはなし

表題作の他に三篇を収録。
アパートに図書室を構え、シルクロードを旅した話などを冗舌に語る、不思議な先輩と私の交友。(果実の中の龍
私は家庭教師のアルバイト先で、通り魔事件に遭遇する。犯人は教え子の同級生である剣道部員の高校生なのでしょうか。(
私の祖父である、樋口家の当主が亡くなりました。琵琶湖疎水の敷設で成功した樋口家。祖父が芳蓮堂に託した宝物の正体とは?(水神

語り手の大学生「私」は、それぞれ別人のようです。そしてどの作品にも、胴が長くて人間のような歯をした正体不明のケモノが登場します。
不気味でありながらどこか懐かしさの漂う、キツネにつままれたような不思議な味わいの作品集。秋の夜長のお供にピッタリの一冊ではないかと思います。

(11月4日読了)

森見登美彦ブログ この門をくぐる者は一切の高望みを捨てよ

【不純文學交遊録・過去記事】
4・1/2の神話


posted by 【電脳呆人】不純総合研究所 at 22:30| Comment(0) | TrackBack(0) | 文学・小説交遊会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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