2008年02月03日

諏訪は神秘に満ちている

急斜面を勢いよく滑り落ちる樅の大木に群がる男たち。1200年以上前から続く長野県・諏訪大社御柱祭(式年造営御柱大祭)は、寅の年と申の年に行われる式年祭です。毎回負傷者が出ることは珍しくなく、命を落とした人もいたと言います。
諏訪大社は上社と下社に分かれており、上社は前宮と本宮、下社は春宮と秋宮から成っています。各宮の四方に神木が立てられ、計16本の御柱が伐り出されるのです。
上社の例大祭である御頭祭も謎に満ちています。現在は剥製のシカの頭部を供えますが、かつては75頭ものシカの生首が並んでいました。そのなかには必ず耳の裂けたシカがいて、神様が矛で獲ったのだと信じられてきました。
この「耳裂け鹿」や諏訪湖の御神渡など、諏訪地方には七不思議が伝えられています。

諏訪大社の祭神・建御名方神(タケミナカタ)は、出雲神話に登場する大国主神(オオクニヌシ)の子です。出雲に国譲りを迫る建御雷神(タケミカヅチ)に戦いを挑みますが、敗れて信濃国・諏訪へと逃げ延びました。建御名方神は二度と諏訪から出ないことを約束し、命を救われたといいます。
また、建御名方神がこの地に祀られる以前から、諏訪地方にはミシャグチ神という土着の神様が信仰されていました。
御柱祭・御頭祭の意味するところとは?…高田崇史氏のQEDシリーズ最新作は『諏訪の神霊』です。



QED諏訪の神霊

諏訪大社の御柱祭を見物に訪れた、薬剤師の桑原崇(タタル)と棚旗奈々
二人を出迎えたのは、タタルの中学時代の同級生・鴨志田翔一、タタルと奈々の大学の後輩である薬剤師の緑川由美子、そして地元の歴史に詳しい百瀬麻紀
そのころ翔一・由美子・麻紀の住む新興住宅地「月見が丘」で連続殺人事件が発生していました。

この先ネタバレはございません。
ただし、読む前に一切の予備知識を入れたくないという方はご注意ください。

住人が留守中の家の庭で、近所に住む男性の他殺死体が発見されます。遺体の背中には木の杭が突き立てられ、周囲にはなぜか大量の塩がまかれていました。さらに現場には、串刺しにされたウサギの死骸。これらは何を意味しているのか?
事件はそれだけに留まりません。遺体の第一発見者である元警察官、殺害現場となった家の主人が次々と犠牲になります。そして今度は首を切り落とされたカメの死骸。
ウサギとカメ…これは何かの冗談か?

QEDシリーズは次第に本格ミステリから単なる旅情サスペンスになってきた(タタルの浅見光彦化?)、都内のバーでカクテルを片手に歴史談義をしていた頃が良かった、との評があります。
そんなネット書評を高田氏が読んだかどうかは分かりませんが、今回は諏訪のバーで推理トークを繰り広げます。
このところどんどんスケールが小さくなって取って付けたようになっていた現代の事件は、今回はなかなか複雑な様相で歴史の謎とも絡んできています。

ただ、犯行の動機には正直「そこまで過去の因縁を執拗にトレースするかよ…」と思います(笑)。歴史の因縁をモチーフにした過剰な「見立て殺人」は、歴史ミステリのお約束なんですけどね。
「『そんな面倒臭い理由で人を殺してしまうのか』という事件が存在していてもおかしくはないだろう」とか「動機の軽重などは、その当人にしかわからない問題」とのタタルのセリフは、著者のエクスキューズでしょうか(笑)。

これまで登場した人物たちを無理やり総出演させていないのは好印象でした。
準レギュラー化していた毒草師・御名形史紋も名前だけの登場ですが、彼の出自とタケミナカタ神は関係があるのかとの問いは、今後のストーリー展開に絡んでくるかもしれません。

(1月28日読了)

【不純文學交遊録・過去記事】
人気シリーズのお約束(笑)
昔、毒ありけり
靖國問題解決します!?
カッパなにさま?カッパさま!
三種の神器
世界遺産のミステリ
♪も〜もたろさん、桃太郎さん♪


posted by 【電脳呆人】不純総合研究所 at 23:04| Comment(2) | TrackBack(1) | 文学・小説交遊会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
fujunさん、こんばんは。
諏訪地域は「神秘」というより、「縄文・弥生が生々しい」という感じですね。上と下で縄文狩猟族(ミシャグチ/モリヤ)と弥生農耕族(タケミナカタ)が棲み分けていたようで、鹿の首も狩猟祭なんでしょうね。縄文の諏訪のことは最新ブログでもちょっと触れましたのでご覧ください。
Posted by ペンタクロス at 2008年02月04日 23:26
ペンタクロス様

私もNHKスペシャルで御柱祭を見て「ここには縄文が生きている!」と感銘しました(ビデオに録った記憶があります)。
御頭祭は、まさしく狩猟民族の祭祀ですね。

柱を建てる神事そのものは、起源を縄文時代にまで遡ることが出来るのでしょうが、現在のような壮大な祭りが1200年前(桓武天皇の時代)に始まったとなると、なにか政治的な背景があったのかもしれません。
小説なのでネタバレを書くわけにはいきませんが、本書の結末は御柱祭に政治的な意図ありとの見解です。
Posted by 管理人 at 2008年02月06日 21:19
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QED 諏訪の神霊
Excerpt:  諏訪大社には、昔一度だけ訪れたのだが、不思議に思うことがあった。一口に諏訪大社といっても、実際には大きく上社、下社に分かれ、更に前者は前宮と本宮、後者は春宮と秋宮に分かれているのだ。すなわち、合計4..
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Tracked: 2008-09-23 21:09
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