2008年03月16日

現代の予言者

パソコンに携帯電話に薄型テレビ…次々と新製品が発表されるデジタル家電は、いつが買い時なのか多くの人が迷います。

より小型化・高性能化するデジタル機器。現在のIT産業の急激な発展を、半世紀前に予言した人物がいます。
1956年、ゴードン・ムーアは半導体の集積度は毎年2倍の比率で増加し、この傾向は今後も続くと述べました。この経験則がのちに修正され「半導体の集積度は18ヶ月で2倍になる」というムーアの法則が生まれたのです。
自動車のコストダウンをいくら進めても、原材料の鉄の価格以下にはなりません。しかし半導体の材料となるシリコンは地球上に豊富に存在し、資源の希少性がボトルネックとならなかったのです。



過剰と破壊の経済学

あまり多くのサイトに目を通していない私ですが、池田信夫blogは愛読しています。本書で池田氏は、ムーアの法則がもたらしたインパクトを踏まえて、今後の日本のIT社会が進むべき道を指南しています。

半導体の集積度だけでなく、ハードディスクの容量や光ファイバーの通信速度も劇的に増加しています。インターネットでの動画視聴もスムーズになりました。
テレビ番組がデジタル化されれば、放送専用の設備は必要なくなり、インターネットで番組を流すことが出来ます。地上デジタル放送なんて必要ありません。電波の空きが増えれば、携帯電話がさらに有効に使えます。
しかし、放送と通信の融合に猛反対しているのがテレビ局です。いまや日本のIT産業発展のボトルネックとなっているのは、電波の希少性でも光ファイバーの通信速度でもなく、既得権益者であるテレビ局なのです。

IT産業のように変化が急激で予測困難な分野で、政府が閣僚や財界トップによる戦略会議なんかを開くのは、全くもって有害無益。選択肢を狭めて産業をミスリードするだけです。iPod、iMacなどのヒット作を生み出したスティーブ・ジョブスのビジネスだって、その多くは失敗でした。しかしIT産業では一発大きく当てればいいのです。
それでも1億人以上の人口を有する日本では、ある程度の市場が確保できるため、国際競争力のないメーカーが何社も共存できてしまいます。これがパラダイス鎖国と呼ばれる状態です。典型的なのが携帯電話端末で、世界市場での主要業者は5社しかないのに、世界シェア9%の日本市場には11社(外資と合弁のソニーエリクソンは除く)がひしめき合っています。

今後のボトルネックは著作権プライバシー権だと池田氏は言います。
IT社会のみならず、日本経済の未来を展望するうえで刺激的な提言にあふれた一冊です。

(3月10日読了)

【関連サイト】
池田信夫blog
【不純文學交遊録・過去記事】
発覚!あるある大利権
日本のメディアは杉林
2011年、テレビをまだ見てますか


「過剰と破壊の経済学」というと、思い出すのはジョルジュ・バタイユです。
彼は人間の原初的な欲望を暴き出した思想家でした。
(注;本書にはバタイユへの言及は全くありません)


posted by 【電脳呆人】不純総合研究所 at 11:38| Comment(18) | TrackBack(0) | 政治・経済交遊会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
同じアスキー新書で、池田信夫の不倶戴天の敵、山形浩生の本も面白いです。

『新教養としてのパソコン入門』

また最近、山形浩生の雑文集『要するに』(河出文庫)が出ました。オススメです。
Posted by おおくぼ at 2008年03月18日 23:00
おおくぼ様

ちょっと古い本になりますが、私が山形浩生氏を知ったのは『新教養主義宣言』です。

池田氏と山形氏は不倶戴天の敵同士だとのことですが、池田氏のおすすめ本の訳者が山形氏だったりするのが面白いですね。
Posted by 管理人 at 2008年03月19日 20:14
池田氏の紹介記事を読めば、「翻訳は、日本語として酷いので、原書をお薦めする」と書いてあると思います。
Posted by おおくぼ at 2008年03月20日 01:13
おおくぼ様

池田氏は山形氏の翻訳文を「気持ち悪い」と言っていますね。
『環境危機をあおってはいけない』の「〜じゃないか」調は、私も好きではありませんが(笑)

デザイン雑誌『AXIS』で、有元正存氏(カーデザインジャーナリスト千葉匠としての名義の方が有名)は「化石燃料が枯渇すれば、地球温暖化は問題でなくなる。真の問題は地球温暖化ではなく代替エネルギーをどうするかだ」と書いていました。池田信夫氏と同じ意見ですね。
Posted by 管理人 at 2008年03月20日 20:49
代替エネルギーについては、石井彰や藤和彦の本がいいと思いました。

石油も天然ガスも石炭も沢山あるので、代替エネルギーに関しては長い目で見ていくべきでしょう。

個人的に気になるのは、原子力発電が世界中で人気が出ていることです。
もし東京に原発ができて、テロリストに爆破されても、個人的には気にはなりません。むしろ首都圏に10個ぐらい原発を作るべきだと思っています。

「安全という嘘」より、「危険だけど必要」という認識で、原発をドンドン作って欲しいです。
Posted by おおくぼ at 2008年03月20日 22:05
おおくぼ様

ウランにも化石燃料同様、可採年数があります(80年くらい?)。
燃料を投入前より増やすことが出来る高速増殖炉が実現すれば、原子力エネルギーの寿命はかなり延びますが…
放射性廃棄物の処理をどうするは、原子力発電の大きな問題点です。

原発を長期に渡って推進するなら、使用済み核燃料を再利用するプルサーマルを検討せねばならないと思います。
Posted by 管理人 at 2008年03月20日 23:02
>「放射性廃棄物の処理をどうするは、原子力発電の大きな問題点です。」

これは、コンリートで固めて海底に沈めればいいのです。地底は地下水を汚染するのでダメです。

>「ウランにも化石燃料同様、可採年数があります(80年くらい?)。」

これは種類によって、数百年は大丈夫みたいです。

原発の問題は・・・・

1. 爆発すると危険(最悪の場合は、広島の原爆より酷い)。

2. コストが莫大にかかる。建設及び維持、解体、地域住民への説得費用などなど。

「使用済み核燃料を再利用」は、現時点ではリスクが高すぎるので反対です。

関係ないですけど、「高速増殖炉」ができれば、原爆の作成は簡単です。よくフィクションで「使用済み管区燃料」をテロリストが奪うという話がありますが・・・。
Posted by おおくぼ at 2008年03月20日 23:31
誤字訂正

コンリート → コンクリート

使用済み管区燃料 → 使用済み核燃料

すいません。<(__)>
Posted by おおくぼ at 2008年03月20日 23:35
今日も、私なりのレベルだけですが、勉強になりました。
エネルギー問題は、難しいですね〜〜〜。
必要だけど、どのエネルギーにもそれなりの問題点があるようですね。

日本のテレビ局って、嫌いだな〜とあらためて思いました。
ケーブルテレビとかの方が、視聴者を大切にしている気がします。
見たことはないのですが、地域密着番組とか、作っているのですよね。
おそらく普通のテレビ局からすれば、比べ物にならないくらい少ない制作費で。

Posted by miewie at 2008年03月21日 12:55
おおくぼ様

放射性廃棄物の海底投棄が、海水を汚染する可能性はないのでしょうか?

プルサーマルは、放射性廃棄物を処理する手段のひとつではあると思います。
現時点ではリスクが高すぎるというのは、技術的にでしょうか?それとも政治的に(テロの標的になる可能性など)でしょうか?

高速増殖炉ができれば原爆の作成は簡単とのことですが、プルトニウム型原爆は爆縮レンズの開発と核実験が必要なので、簡単ではないと思います。濃縮ウラン型原爆なら、核実験なしでも配備可能です。

石油の代替が最も容易なエネルギーは、天然ガスでしょう。
Posted by 管理人 at 2008年03月21日 22:26
miewie様

エネルギー問題は本当に難しくて、私の手に負えません(笑)
クリーンだと思っていたエネルギー源(例えば太陽電池や水素)が実は製造過程で多くの化石燃料を消費していたり、バイオ燃料を製造するために森林を伐採してかえってCO2の排出を増やしてしまったり…
そう考えると、人類史上最も利用しやすいエネルギーは石油だったのかもしれませんね。

大手民放テレビ局でも、実際の製作現場に渡る費用はごくわずかのようです。
池田信夫氏は、そのカラクリを暴いています。
【過去記事】http://blogs.dion.ne.jp/fujun/archives/5948814.html
Posted by 管理人 at 2008年03月21日 22:40
ロンボルグの『環境危機をあおってはいけない』のエネルギーのページに明快な説明があります。

天然ガスは現在かなり利用頻度が上がっています。でも石炭も石油も使用料量は減っていません(もっと増える?)。


海底には元から放射能があります。使用済み核燃料が洩れても、海底の放射能の濃度は変わりません。

あと、高度な質問が多いので、自分のブログを使って答えたいと思います。のんびり待って下さい(笑)。

原発は昔、真面目に調べたんで。
資料をダンボールから出さないと(笑)。
Posted by おおくぼ at 2008年03月21日 23:20
おおくぼ様

では、低レベルなツッコミ(笑)
海底投棄された放射性廃棄物からの放射能もれが無視できるレベルだとしても、その海域で獲れる水産物の風評被害は決して小さくないでしょう。

おおくぼ様が原発のコストとして地域住民への説得を挙げているように、原発には実害(放射能による被害)以外にイメージの問題があります。

そういえば、日本にはまだ原発(原子炉)を解体した例はないですね。
Posted by 管理人 at 2008年03月21日 23:47
>「日本にはまだ原発(原子炉)を解体した例はないですね。」

そうですね。解体の申請はしているそうですが、実現していません。
Posted by おおくぼ at 2008年03月22日 17:45
おおくぼ様

原発の寿命は30年だと言われてきましたが、現在稼動中の原発には30年以上経つものが数多くありますね。
そう遠くない将来、稼動停止⇒解体される日がくるのでしょうか。
Posted by 管理人 at 2008年03月22日 23:03
>「そう遠くない将来、稼動停止⇒解体される日がくるのでしょうか。」

わかりません。でも解体しないとマズイ気がします。働いている人は、怖いでしょう。


>「プルサーマルは、放射性廃棄物を処理する手段のひとつではあると思います。現時点ではリスクが高すぎるというのは、技術的にでしょうか?それとも政治的に(テロの標的になる可能性など)でしょうか?」

私は技術的なことを問題にしています。政治的な難しさもあるとは思いますけど。

簡単に言うと、ゴミの中から再利用できる部分を選んで、取り出す訳です。でも、そのゴミ自体が危険なので、「選んで、取り出す作業」も危険になる訳です。

「もったいない」と言っても、モノがモノだけに危険が高いのです(笑)。
Posted by おおくぼ at 2008年03月22日 23:58
爆縮レンズ(厳密にはレンズではないんですけど)の開発は、コンピュータのない時代は難しかったです。

現在は打ち上げ花火でも、コンピュータでシミュレーションで作る時代です(使わない人も多いですけど)。

けれど、プルトニウムを使った核爆弾は、技術的な問題が多いみたいですね。
Posted by おおくぼ at 2008年03月23日 00:07
おおくぼ様

リサイクルは、エネルギー効率から見て必ずしも良いとは限らない(むしろ悪い)。
それは原発でも同じことですね。

投入した燃料よりも多くのエネルギーを得られる高速増殖炉ですが、安全性の問題のみならず、建設や運転に莫大なエネルギーを消費することでしょう。
やはり石油は優れたエネルギーなんでしょうね。
Posted by 管理人 at 2008年03月24日 00:16
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