2008年04月06日

その道路、必要ですか?

2008年4月1日、長年続いてきた揮発油税・自動車取得税などの暫定税率が期限切れとなりました。ガソリンの価格は揮発油税と地方道路税をあわせて、1リットルあたり約25円引き下げられたことになります。
原油高をはじめとする、物価上昇に直面している国民生活にとって歓迎すべき事態ですが、一方で地方自治体の首長からは「必要な道路が造れない」と暫定税率復活を強く求める声が上がっています。



この高速はいらない。

日本中で計画されている高速道路、果たしてそれらは必要な道路なのか。ちょっと古い本(2002年刊)ですが、気になったので読んでみました。
著者・清水草一(またの名をMJブロンディ)氏は、自動車雑誌を中心に活躍しているライターです。『港区ではベンツがカローラの6倍売れている』、『フェラーリがローンで買えるのは、世界で唯一日本だけ!!』などユニークなタイトルの著作で知られ、道路問題にも積極的に取り組んでいます。

清水氏は、全国各地の高速道路計画地の既存道路を実走して、その区間の高速道路の必要性を検証しました。
高速道路の必要度は、1.渋滞緩和効果、2.時間短縮効果、3.ネットワーク効果(他の路線と接続効果)、4.地域振興効果として採点しています。その地域に有力な産業や魅力的な観光地がなければ、高速道路はかえって人口を吸い出す結果ともなりかねません。
また、道路建設費が料金収入でペイするかどうかは、コストパフォーマンス指数として評価しています。ただ、道路は公共財ですから、必要度が高ければ収入は多くなくとも建設は進めるべきです。

まず検証されるのは北海道。高速並みのペースでスムーズに流れる立派な国道があるのに、並行して高速道路を建設しても、わずかな時間短縮のために料金を払うドライバーはいません。
「北海道には、これ以上高速道路はいらない」と主張する清水氏は、80〜90km/hの最高速度を許容する快速国道を提案しています。既存の国道の歩車道分離を徹底し、中央分離帯を整備して、高速道路並みに流れるようにするのです。一方、住宅地や商業地を通過する部分は、制限速度を抑えて取り締まりも強化し、安全を確保します。本書にはこの快速国道が、高速道路の必要度が低い地域の代替案としてたびたび登場します。

日本で最も道路整備が遅れているという、東国原英夫知事の宮崎県はどうでしょうか。
本来は直線的に建設されるべき高速道路ですが、鹿児島市と宮崎市を結ぶ東九州自動車道のルートは、地形に関係なく不自然に遠回りしているのです。「わが町にも高速を」の声に応えようと、それぞれの地方都市を通過させた「いらない高速道路の見本」だと清水氏は酷評しています。

清水氏が最も整備が必要だと訴えるのは、慢性的な渋滞に悩まされる首都高速道路です。建設コストは莫大ですが、それでも最優先で取り組むべしと。
ただし、首都圏の慢性的な渋滞を根本的に解決するには、東京一極集中の見直しが求められるでしょう。清水氏は理想的な道路環境にあるとして、名古屋への遷都論に触れています(皇居は東京に残し、政治は名古屋、経済と文化は東京と首都機能を分業)。

本書で論じられる日本全国の高速道路。その評価が妥当かどうかは、地元の読者ひとりひとりに判断していただきたいと思います。

(4月1日読了)

【関連サイト】清水草一オフィシャルサイト


posted by 【電脳呆人】不純総合研究所 at 23:40| Comment(6) | TrackBack(1) | 政治・経済交遊会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
ブログ名に惹かれての、はじめてのコメントです。
すごく真面目な内容にびっくり。

今後ときどき立ち寄らせていただきます。
Posted by 本の虫 at 2008年04月07日 12:40
本の虫様、いらっしゃいませ。

当Blogのタイトルと中味は、完全に一致しているつもりです(笑)
古い記事へのコメントも大歓迎。
これからも是非、お立ち寄りください。
Posted by 管理人 at 2008年04月07日 20:24
道路問題は、難しいですね。
まずは、著者氏は、それぞれの土地に足をお運びあそばしたのかな〜、
と、単純に考えてしまいました。
収支を中心とした数字とか、地図からは、見えないものが、あるはずだと、感じました。
そういう私も、あまり多くの土地に行ったことはありませんが…。
北海道は、交通事故(それも、国道での)が多いと、聞いたことがあります。
スピードアップで、今以上に、増えたら…?
そのあたりを、著者氏に聞いてみたい気も、します。

ヨーロッパなどで、田舎町に向かう道路が片側2車線×2本、
鉄道も平行して走っている、町内にもバスや電車が縦横に走る…現状を見ると、
日本のお金はどこに流れているのかな〜と、寂しくも思います。
Posted by miewie at 2008年04月09日 13:11
miewie様

本文でも触れましたが、著者・清水氏は高速道路計画地の既存道路を実際に運転し、その所要時間から高速道路の必要度を採点しています。
また、高速道路の必要度と収益性は分けて評価しています。道路は公共財であり、料金収入が多くなくとも必要度の高い道路は造るべしというのが本書の見解です。

道路特定財源について清水氏は、受益者負担の原則から、自動車ユーザーが道路建設費を負担するのは妥当であるとの考えです。
本書の刊行は2002年なので、現在も同じ立場かどうかまではわかりません。
Posted by 管理人 at 2008年04月11日 22:20
そうですか。実際に行って、地元の人とお話とかはされたのでしょうか。
それも、「要る、要らない」レベルではなく、普通の話を…。
打ち解けた普通の話の中に、真実の要求とか、ちらりと出て来そうに思えます。

それは、TV番組のインタビューなどでも、感じます。
急にマイクを突きつけられて、その場で緊張した、高揚した気分で、
本当の辛さなんて、誰も出せません。
緊張隠しの笑いは出せても。

感動のあるドキュメンタリーは、そのあたりをきっと丁寧に取材なさっているのでしょう。
仕上がった画面としては、同じ時間、地元住民が映し出されても、
その場でぱっぱと一方的にインタビューしたものとは、
質が全く違うのでしょうね。

国道高速化に関しても、
「国道は、生活道ですから」としか、言いようがない気がします。
いくら歩車分離したって、横断も、合流も、右折も、左折も、…あります。
そのあたりの危険性回避は、どうなのでしょうね。

…って、fujunさんは、著者氏ではありませんので…。ごめんなさい。
Posted by miewie at 2008年04月14日 05:13
miewie様

著者が地元の人とどのような会話をしたかまでは、本書からはわかりませんね・・・

本書の出版以前から首都高速の渋滞問題に取り組んで来た清水氏は、自らの首都高速改善案を実際に国土交通省のお役人さんに提出して意見交換しています。

私の地元である舞鶴若狭自動車道の小浜西〜敦賀間は、他の高速道路との連結効果が高く若狭湾の観光資源も活かせるとして、優先的に着工すべき区間と評価されていました。
Posted by 管理人 at 2008年04月15日 20:53
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。

この記事へのトラックバック

増税や借金してまで必要な道路って何だ?
Excerpt:  全国の知事会議が、消費税を上げてでも「道路財源について現水準を維持する事を求める」採択を行った。  今、国は800兆円を越える財政赤字を抱えている。しかも、ここ10年以上、毎年数十兆円(ひどいとき..
Weblog: まぁまの日記(啓発録)
Tracked: 2008-07-31 11:58
×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。