2008年07月20日

いつか石油が無くなる日

今年(2008年)1月、ニューヨークの原油先物市場価格は史上初めて1バレル=100ドルを突破しました(1バレル=158.987295リットル)。
7月に入って原油価格は、ついに145ドルを記録。このところ下落しているものの、依然として高い状態にあります。

原油高の背景には商品市場への投機マネーの流入、新興国の経済成長による石油需要の伸びが挙げられます。今のところ、石油が不足しているわけではありません。
しかしながら近い将来、石油の生産量が頭打ちになり、需要の伸びを満たせなくなる日が来るとの予測があります。それがピークオイル論です。



地球最後のオイルショック デイヴィッド・ストローン 著

石油産出量がピークに達すると、その後減少に転じ、二度と上昇することはない。
ピークオイル論は、1956年にマリオン・キング・ハバートが米国石油協会で発表した論文に端を発しています。ハバートの予言どおり、アメリカの石油産出量は1970年以降、減少に転じたのでした。
ピークオイルは石油の枯渇ではありませんが、石油の埋蔵量の半分が採掘されたことを意味し、その後は石油を増産することは不可能です。
石油業界は既にピークオイルが近いことを認識しており、それは2010年代の半ばに訪れると考えられています。

石油に代わるエネルギーを手に入れることは、人類の大きな課題です。
水素・風力・太陽光などの研究がなされていますが、水素の生産には大量のエネルギーを消費し、風力で電力をまかなうには膨大な数の風車、太陽光発電には想像を絶する面積のソーラーパネルが必要となります。代替エネルギーに対する本書の展望は、かなり否定的です。
石油は燃料のみならず、原料(プラスチック)としても広く用いられています。植物からプラスチックを製造することは可能ですが、それには大量の穀物を転用することになり、バイオ燃料と同じ問題を抱えることになります。
農業生産に石油が欠かせないことも、忘れてはなりません。現代文明は、石油なしに成り立たないのです。

著者デイヴィッド・ストローン氏はイギリスのジャーナリストで、本書の執筆にあたり世界の石油関係者170余名に取材したといいます。イラク戦争の舞台裏から代替エネルギーの展望まで、石油をめぐる世界の動きを追った読み応えのある一冊です。
埋蔵量の豊富な石炭や天然ガスの利用は、石油よりも二酸化炭素の排出量が増えるから良くないとの主張は、いかにもIPCC発祥の地であるイギリスの人ですね(笑)

食糧・エネルギー問題は、地球温暖化よりもはるかに重要です。
いまも地球の人口は増え続けており、新興国の経済成長によりエネルギー消費は増加の一途をたどっています。
人類の歴史の大部分は、化石燃料なしでやってきました。化石燃料が枯渇しても人類は生きて行けますが、維持できる人口はかなり少なくなるでしょう。
文明を永続させるためには、もしかすると人類の二人に一人は安楽死を選択せざるを得ない時代がやって来るのかもしれません。
あるいは、人類はこのままエネルギーを過剰に消費し続け、狂乱のさなか滅亡に至るというバタイユ的世界観も、私は否定しませんが。

(7月20日読了)

【不純文學交遊録・過去記事】
パイプラインの国際政治学
よ〜く考えよう、石油は大事だよ♪


本書には石油の起源についての言及はありませんが、ここで面白い説を紹介します。
石油は化石燃料と呼ばれるように、太古の生物の遺骸が炭化水素に変化したものだとするのが一般的です(有機起源説)。
一方で石油は地殻変動で生成されたとする、無機起源説もあります。無機起源説では、石油は今も地下で生み出されていることになります。
私は以前から、無機起源説には十分説得力があると考えています。ただし、これを「石油は無尽蔵にあり、枯渇の心配はない」との主張に利用するのは反対です。


posted by 【電脳呆人】不純総合研究所 at 23:55| Comment(14) | TrackBack(3) | 政治・経済交遊会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
有限なモノはいつかは無くなります。10年後か10億年後か・・・
地球も太陽も太陽系も有限です。

ところでピーク・オイル予測は当たったことがありません。
地震予測より酷い?

これは「石油会社の陰謀では?」と思っています(笑)。
「石油が枯渇する!」と脅迫して、希少性をアピールしているとか、その他いろいろ。
ただ天然ガスや石炭もありますので・・。

気になるのは、原発が世界的に人気になってることです。

有限な化石燃料を争って戦争をするのか、危険な原発を導入するのか、選ぶのは私達(政治家と利権所有者)です。

おそろし〜い!
Posted by おおくぼ at 2008年07月21日 11:27
おおくぼ様

石油が「あと30年で無くなる」とは、30年前の本に書かれていましたね(笑)
でもピークオイル論の提唱者・ハバートが、アメリカの国内油田の減産を予測したとの評価は、間違いではないと思いますが?

本書は、ブッシュ米大統領とブレア英首相がピークオイルが近いことを認識していた故に、イラク戦争に踏み切ったとの見解です。
(二人とも石油業界にそそのかされた?)

石炭・天然ガス・メタンハイドレートは石油よりも埋蔵量が豊富ですから、低コストの採掘法や低公害の利用法を研究すべきです。
原発については全否定すべきではないと思いますが、放射性廃棄物の安全な処分や再利用は、解決に時間がかかるでしょうね。常温核融合や高速増殖炉の実用化は、夢のまた夢でしょうか。
自然エネルギーは、小規模分散型の利用には有効だと思います。
Posted by 管理人 at 2008年07月21日 21:28
土の中は、地上からはわかりにくいのですが・・・。
最近はボーリング調査のレベルも上がり、都内の温泉も増えました。
北米はボーリング調査がうまくいってる地域ではないでしょうか?
アフリカ大陸や南米は、手つかずの地域が多いし、海の中の調査は難しいと思います。
ただ北米の場合は、人件費の高騰や政府の規制、石油の質の問題などで国際的な価格競争に勝てないから、減産した可能性もあります。

>「原発については全否定すべきではないと思いますが」

原発は首都圏などの大都市近郊に作るべきでしょう。
過疎の村の人々に金で納得させて、作る方法は止めるべきです。
大量の電気が必要な地域の近くに作るべきです。
Posted by おおくぼ at 2008年07月22日 14:46
おおくぼ様

電気には送電ロスがありますから、発電所は大消費地に近接して建設するのが合理的です。

原発であれ火力であれ、発電所は土地が広くて安い(さらに地盤が固い)場所に造ることになるでしょう。そして万が一の事故の際に、被害を最小限に留めるとなると…発電所の立地は、やはり密集地よりも過疎地になってしまうのではないでしょうか。

事故の際の危険度や放射性廃棄物の処理問題を考えますと、原発に頼らないのが良いのですが、エネルギーの多様性を確保することは国益にかなうと思いますので、私は原発を否定しません。
Posted by 管理人 at 2008年07月23日 00:10
>「そして万が一の事故の際に、被害を最小限に留めるとなると…発電所の立地は、やはり密集地よりも過疎地になってしまうのではないでしょうか。」

テロにあったら・・・、だから過疎地というのはアリかもしれません。
でも安全を宣伝してますから、空き地があれば、東京のど真ん中でもいいと思います。
過疎地では、事故や不利な情報の隠蔽は簡単です。
また人材の確保も難しいです。

Posted by おおくぼ at 2008年07月23日 21:31
はじめまして。
ご挨拶が遅れてしまい申し訳ありません。
地球温暖化というエコ商法にかなり疑念を抱いていたので、溜飲の下がるようなストレートな内容に感服し、先日温暖化についての記事を私の方の記事にリンクさせていただきました。

石油の問題についてもそして代替燃料についても、個人で考えられる範囲と言うのはたかが知れているわけで、そこはなんとしてでも国家レベルで頑張ってなんとかして欲しいというのが私の切なる願いなのですが、役人の腰の重さは相変わらず。
先日は、風力発電の風車による人体被害が報道されていましたが、何事もやってみなければわからない問題というのはあるもんだなと、思いました。
しかし、そういった問題が起こってからの役人側の腰の重さは、あれはなんとかならないものかといつもうんざりします。あれはシステムの問題だとすれば、その改革はいったいどうしたらよいのやら。

HIVウィルスがアメリカで話題になってその当時にすでに非加熱製剤の危険性を訴えたニュースが日本でも報道され、それに対して私ですら心底恐怖し、血友病患者の方々は一体どうするのだろうかと他人ごとながら心配になったものですが、そのまま薬害エイズ問題に発展してしまった経緯には呆れたものでした。

この食糧難に、まだ今年度も「減反政策」とか言ってる農林水産省は、例年を踏襲すればそれで仕事は終わると思ってるんでしょうか。
まあ、端で見てるよりやってる方は大変なこともあるのでしょうけれども。

なんだか、どんどん関係ない話をし始めて収拾がつかなくなってきます。すみません。
まずは、ご挨拶ということでやってまいりました。
(にしては、長すぎですね)
Posted by あしか at 2008年07月24日 15:51
ところで地上デジタルテレビは必要ないでしょう。今のテレビで十分です。何千万台単位である現在のテレビを使えなくすること自体が、二酸化炭素の低減に大きく反します。政府もテレビ局も「地球温暖化阻止」と言いながら…さらに自分たちの金儲けのためにこんな物まで国民に売りつけるひどい国。
地上デジタルテレビ自体をを買わないことが、環境の保全ですし、デジタルへの以降も不可能になるでしょう。この先多くの国民がテレビの買い替えをしなければデジタルへの完全移行は不可能です。みんながデジタルテレビを買わなければ、NHKは受信料が激減、民放の広告収入も激減。
とにかく今のままアナログテレビを使い続けることです。
デジタル移行を阻止。
Posted by nakata at 2008年07月24日 18:45
おおくぼ様

原発に安全のお墨付きがあるなら、どこへ造ってもいいわけですね。
実際には、大都会の真ん中に空き地はありませんが。

過疎地は人材確保が難しいですが、地元にしてみれば雇用促進のチャンスでもあります。

でも、やはり万が一(もっと確率は高い?)の放射能漏れは怖い…
Posted by 管理人 at 2008年07月24日 23:29
あしか様、いらっしゃいませ。

地球は温暖化していますし、二酸化炭素は確かに温室効果ガスです。
しかし過去の地球に太陽活動と相関していると見られる気候変動があったこと、二酸化炭素は大気中の0.03%でしかないことから、二酸化炭素を地球温暖化の主犯と断定することには疑問を持っていました。
最近では、地球には温暖化よりも優先してコスト配分すべき課題があると思うようになり、さらに京都議定書の削減目標に対する不信が加わりました。
省エネ、自然保護、エコ商品、大いに結構!
ただし科学的に間違っていること、経済的に無駄なことには、断固「NO!」と言いましょうとの立場です。

お気に召す記事がございましたら、どんなに古いエントリにコメントしていただいても結構でございます。
(当方、数日間パソコンを開かないこともありますので、ご了承ください)
Posted by 管理人 at 2008年07月25日 00:05
nakata様、いらっしゃいませ。

私は地球温暖化対策には反対ですが、二酸化炭素削減(省エネ)は支持します。
地上デジタルに移行するからといって、まだ使えるテレビを廃棄するのは資源の無駄です。
また地上波放送のデジタル化が、さほどメディアの発展に貢献するとも思えません。

なお、地上デジタル放送に関する書物は別のエントリで紹介しております。
Posted by 管理人 at 2008年07月25日 00:17
風力発電や太陽光発電って「あり」かなって最近思ってます。
発電所レベルのものを考えれば確かに凄い設備が必要となりますが、自家発電クラスであればそんな大げさなものは必要ないかと・・・

例えば、高層ビルの屋上に風車付けたら結構いい風が吹いて、それなりに発電するんじゃないでしょうか。ビル全体の電気をまかなうことは無理でも、発電所から供給される電気は削減できるはずです。

「うちのビルはエコしてます」といった宣伝にもなると思うので、どっかの企業でやってみて欲しいものです。
Posted by みはりや at 2008年07月27日 01:00
みはりや様

おっしゃる通り、エネルギー資源は「適材適所」です。
風力・太陽光などの自然エネルギーで大量の電力をまかなうには、想像を絶するほど巨大な設備が必要となって非効率ですが、小規模分散型のエネルギーには向いていると思います。
太陽電池は製造時に大量のエネルギーを消費しますが、ホンダが開発した薄膜太陽電池は、通常の結晶シリコン太陽電池の80分の1だそうです。
http://response.jp/issue/2008/0227/article106262_1.html
技術の進歩って、素晴らしい!
火山国・日本は、地熱発電もいいですね。
Posted by 管理人 at 2008年07月27日 01:56
私も無機成因論の方が正論だと思ってます。
ただ、化石燃料に頼らないエネルギーの開発がなによりですね
でも、太陽光発電。もしかしたら強烈な勢いで全世界に広まるかもです。
サブプライムで余ったかね金がガソリンへ投資され
ガソリンでも儲けて旨味が減った金が
ソーラー関連へ流れています。
既に、通常太陽光発電の四倍近い発電能力が可能なものも開発されてますし
リチウムイオンも家庭用がシャープより発売されそう。そんな中。
多分。あと数年(2。3年?)でシャープよりリチウムイオンとソーラーパネルがセットになり
1KW 20万程度で発売されるという話がでております
そうなると一軒家の発電なら100万もアレば大方がまかなえる事になりますから
一気にひろがります。案外、先の未来は面白いかもしれませんよ。 笑顔)
Posted by たどまめ ♪ at 2008年07月27日 07:32
たどまめ♪様

小学生の頃、石油が太古の生物の死骸から出来ていると聞いて、とても信じられませんでした。中学生くらいで無機成因説を知って、やはり異論はあるのだと納得しました。当時の雑誌は今でも保管しています。
石油は燃料であるだけでなくプラスチックなどの原材料でもありますから、たとえ今も地下で生成され続けていて埋蔵量が豊富であっても、大切に使いたいですね。

『地球最後のオイルショック』は、人類に未来はあるとしながらも、ひたすら省エネの話ばかりで代替エネルギーの可能性については否定的。暗い読後感でした。
太陽光エネルギー技術の着実な進歩には、明るい未来を感じます。
Posted by 管理人 at 2008年07月28日 00:14
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Tracked: 2008-07-27 07:24

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Tracked: 2008-08-17 21:43

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