2008年11月30日

ケータイ小説はヤンキー文学

2007年の書籍ベストセラーは、ケータイ小説が文芸部門の上位を独占しました。
最近では文壇の大御所・瀬戸内寂聴氏(御年86歳)が、ケータイ小説を書いたことで話題になりました。ちなみにペンネームはぱーぷる(紫式部に由来)なんだとか…

ケータイ小説の多くは、作者の体験した「実話」であることを売りにしていますが、それにしては多くのケータイ小説のプロットが似通っていたり、ありえない唐突な展開が連続したりします。
ケータイ小説に頻出するエピソードである援助交際、レイプ、妊娠、薬物、不治の病、自殺、そして真実の愛。これらを本田透氏は「ケータイ小説に描かれる7つの大罪」と呼んでいます。

「あんなものは文学じゃない!」と非難されるケータイ小説。
しかしケータイ小説に興味はなくとも、ケータイ小説が売れる社会とはなんなのか、考えてみることは面白いでしょう。



ケータイ小説的。 速水健朗 著

ケータイ小説を論じた本は数多く出ていますが、本書が興味深いのは、ケータイ小説を「ファスト風土化した郊外が舞台で、郊外に住む少女を主人公にした、郊外に住む少女を主な購買層とする、郊外型ショッピングモールの書店で売られる文学」と定義していることです。

ケータイ小説に描かれる、不幸なエピソードのインフレーション。その原型は、1990年代の少女向け雑誌の読者投稿ページにあるようです。特にレディースと呼ばれる少女暴走族の雑誌『ティーンズロード』との類似を、著者は発見します。ケータイ小説とは、新しいヤンキー文化なのです。
ケータイ小説の特徴として、情景描写がほとんどない、そして地名・学校名・商品名などの固有名詞がほとんど登場しないことが挙げられます。そんななか登場する数少ない固有名詞が、歌手の浜崎あゆみです。ケータイ小説の作者と読者は、浜崎あゆみの楽曲を通して世界を共有しているのです。そして浜崎自身、自らの少女時代のファッションが、ヤンキーの流儀に属していたことを明かしています。

ケータイ小説に描かれる暴力が、携帯電話の普及とともにもたらされたことを本書は指摘しています。いつでもどこでもつながる携帯電話は、いとも簡単に相手を束縛する凶器へと変貌します。
文章が類型的と揶揄されるケータイ小説において、携帯電話が引き起こす暴力(いわゆるデートDV)の描写は、非常にリアルです。

ケータイ小説は、浜崎あゆみの歌詞の強い影響下にありますが、多くの論者がそれに気付かないのは、ミリオンセラー曲といえども一部の人々のものでしかないことの現れです(浜崎あゆみがどんな曲を歌っているのか、私も知りません)。
華々しくメディアが採り上げるオタク文化に対し、ケータイ小説・浜崎あゆみといったヤンキー文化は、オタク文化以上の市場規模を持ちながらも批評の対象となりません。そんな「被差別文化」にスポットを当てることが、現代社会を直視する批評的行為であると、著者・速水健朗氏は結んでいます。

(11月24日読了)


posted by 【電脳呆人】不純総合研究所 at 13:42| Comment(2) | TrackBack(3) | 文学・小説交遊会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
私はケータイ小説を読んだことがありません。
けれど、映画化されたり、TVドラマ化された作品には興味があります。
どうも小説に対する生理的な拒否感が強く、小説自体が好きではありません。
ただ流行には興味あるので、ケータイ小説を社会学的分析した本は助かります。
浜崎あゆみの歌詞はほとんど知らないのですが、漫画『ホットロード』は昔、よく読んでました。
宮台真司の社会学的な分析が、観念論に傾きなので、なんとかして欲しいのですが、否定するのではなく、ブログ記事に応用できればいいなあ〜と思っています。
Posted by おおくぼ at 2008年12月30日 20:42
もちろん私も、ケータイ小説を読んだことはありません。
しかし、流行の社会学的背景には興味があります。
浜崎あゆみの歌も聴いたことがありません。
1990年代以降、私は音楽に興味をなくしました。
代わって好きになったのが、新本格系のミステリです。
それまでは、ミステリ小説なんてクイズやパズルの一種だと敬遠していたのですが、本格ミステリとは推理小説ではなく幻想小説であると主張する、島田荘司の『本格ミステリ宣言』に出会ったのがきっかけでした。
私は小学生のころ「事実は小説より奇なり」という言葉に魅せられ、小説なんて作り話に過ぎないと見下してきました。
今では小説から科学書までを扱う、不純なblogのオーナーです(笑)
Posted by 管理人 at 2008年12月31日 01:38
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