2009年03月09日

東大教授は小説家

私たちの日常生活の隅々にまで行き渡ったコンピュータ。
コンピュータが人類社会にもたらしたインパクトについて、文系・理系の垣根を超えて思索を続けている研究者が西垣通氏です。
西垣氏は理論のみならず、よりリアルな人間の姿を描こうと小説作品も手掛けています。彼の小説は研究者の余技ではなく、本業の一環なのです。



コズミック・マインド

朽木庸三は、妻に先立たれて独り暮らしの、50代の元ソフトウェア開発エンジニア。
庸三は、大手電機メーカーの子会社から、大口ユーザーである倉光銀行に長期出向し、オンラインシステムの開発保守を担当していました。
しかし行内での対立から解雇され、現在は小さなソフトウェア会社の技術アドバイザーという閑職に就いています。

老舗地方銀行である倉光銀行は、大手都市銀行の住菱銀行との合併が決まっていました。
両行のシステム統合プロジェクトが発足しましたが、作業が思うように進みません。どうやら倉光銀行側のシステムに、表に出せない問題があるようです。
住菱銀行の調査部からサブリーダーとして派遣された堺朱実は、倉光銀行が裏社会を相手にした「隠し口座」ビジネスに手を染めていると直観します。

最初は「サラリーマンの人間関係を描いたビジネス小説か。つまんないな…」と思ったのですが、隠し口座の話やコンピュータ・アートを手掛ける謎の前衛芸術家が出てきたあたりから、面白みが出てきました。
タイトルの『コズミック・マインド』には、西垣氏の思い描く「コンピュータ観」が滲み出ています。

本書は、西垣氏の研究者としての著作を読んだことがない人にも、手に取りやすい作品でしょう。
ただ、私が小説に求めるものは「非日常性」なので、異国を舞台にした過去の作品の方が好みです。

デジタル・ナルシス(東京大学 情報学環・学際情報学府 西垣研究室)

(3月8日読了)

【不純文學交遊録・過去記事】
情報と生命と聖性と
日本のメディアは“杉林”


posted by 【電脳呆人】不純総合研究所 at 17:08| Comment(0) | TrackBack(0) | 文学・小説交遊会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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