2009年08月11日

本格ミステリとの出会い(後編)

ポルトガルの首都・リスボン。
水泳のオリンピック金メダリストだった女性が、拳銃で自殺。ほぼ同じ時刻に、2キロ離れた高級アパートで、大学教授が射殺されました。2人の心臓を貫いた弾丸は、ライフルマークが完全に一致。犯人は、元水泳選手が自殺した銃を使って、大学教授を殺害したはずです。
事件当日、通りは聖アントニオ祭で混雑しており、自動車での移動は不可能。しかし、歩いて移動したのでは、死亡推定時刻に間に合いません。これは聖アントニオの奇跡なのか…
(表題作『溺れる人魚』)



溺れる人魚

『溺れる人魚』は全くの新刊ではなく、2006年に原書房から刊行されたハードカバー版をノベルス化したものです。
書き下ろしは表題作のみで、他の3篇は既出の作品となっています。
語り手(いわゆるワトスン役)は、ハインリッヒ・フォン・レーンドルフ・シュタインオルト(長過ぎる!)。サンフランシスコ在住、ポーランド生まれのドイツ人で、職業は科学ジャーナリスト。彼の語りに登場するキヨシという名の日本人が、島田作品でおなじみの名探偵・御手洗潔です。

『人魚兵器』と『耳の光る児』は、島田氏が長年書きたかった世界史的解釈(講談社メールマガジン『ミステリーの館』より)です。前者はナチス・ドイツ、後者はソビエト共産党の陰謀を、御手洗潔が推理します。
もちろん完全なフィクションでしょうが、ノンフィクション作品も手掛ける島田氏の世界史的解釈となると、つい信じそうになってしまいます。いくらナチスでも、ここまで残酷なことをしただろうか?、と思うほどに暗澹たる読後感です。
ちなみに、この2作品には島田氏が愛するポルシェ(356とカイエン)が、脇役として登場します(初出は自動車評論集である『名車交遊録』)。

最後の『海と毒薬』は、アンデルセンの人魚姫をモチーフにしてはいますが、ファンサービスで書いた「自作自演の同人誌」的な作品ですね…

(7月30日読了)

【不純文學交遊録・過去記事】
本格ミステリとの出会い(前編)


posted by 【電脳呆人】不純総合研究所 at 22:22| Comment(0) | TrackBack(0) | 文学・小説交遊会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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