2009年10月12日

温暖化論議は冷静に(後編)

江守正多氏は、国立環境研究所の温暖化リスク評価研究室長。地球温暖化予測のキモである気候モデルについて、専門家の立場からわかりやすく書いています。
気候モデルのテクニカルな部分は、私のような文系読者にはやや難解ですが、完全に理解できなくても全体を把握するのに問題はありません。



地球温暖化の予測は「正しい」か?

江守氏は地球温暖化の脅威を訴える側の人ですが、気候モデルが不完全であることも認めています。
地球温暖化をめぐる誤解に対しても冷静です。アル・ゴア元米副大統領の『不都合な真実』で描かれたように、短期間で海面が6mも上昇することはありません。
また、地球温暖化が進むと北大西洋の熱塩循環が急停止して、映画『デイ・アフター・トゥモロー』のように、一転して氷河期がやってくると言う人がいますが、ヨーロッパの気候が寒冷化することはあっても、地球全体が氷河期になることはありません。

世の中には温暖化危機派と懐疑派の双方による、センセーショナルな言説があふれています。
「地球温暖化に関する一般向けの本は、専門家でない人によって書かれたものが多く、書いた人も読んだ人も、勝手に想像して信じたり批判したりしている」と語る江守氏。本書は、温暖化の危機を憂える人も、温暖化に懐疑的な人も、必読の一冊です。
本書とあわせて、赤祖父俊一氏の『正しく知る地球温暖化』を読まれることをオススメします。どちらも文章は易しく、ページ数は少なめで、地球温暖化問題に対する冷静な態度が身に付きます。

江守氏は、価値中立的な立場で書きたかったとして、地球温暖化に社会がどう対処すべきか、本文では触れていません。
あとがきで「研究を通して世界の変革にコミットしている感覚」があり、「地球温暖化という物語は、マルクス主義以来の大きな物語かもしれない」と語るあたりに、彼の人となりが垣間見えて興味深いです。
江守氏は1970年生まれで、学生運動は知らない世代ですが…

私は気候モデルに対し、初期条件が間違ってはいないのか、研究者による恣意的な操作はないのか、疑問を抱いていましたが、本書を読んで不信感はかなり払拭されました。それでも気候モデルは不完全であり、特に太陽活動が一定であるということは、太陽活動の変化によって予測が大きく外れることを否定できません。
地球温暖化の予測や温暖化対策には、疑問があります。しかし、地球が温暖化しようがしまいが、化石燃料が有限であることは確かです。
浅薄な正義に流されず、地球の未来と日本の国益を冷静に考えましょう。

(9月27日読了)

【不純文學交遊録・過去記事】
温暖化論議は冷静に(前編)
底抜けニッポン(中編)
エコロジーの国際政治学
地球温暖化リテラシー
マルクスさんとマルサスさん
地球寒冷化に備えよ!
温暖化詐欺にご用心!(前編)
温暖化詐欺にご用心!(後編)
地球温暖化は繰り返す(前編)
地球温暖化は繰り返す(後編)
悪魔は目を覚ますのか?
マイナス6%の覚悟
地球の現代史・不確かな真実V
不確かな真実U
不確かな真実
悲観も楽観も、いけません。


ラベル:地球温暖化
posted by 【電脳呆人】不純総合研究所 at 01:29| Comment(20) | TrackBack(1) | 自然科学交遊会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
ネット上の懐疑派は、江守氏を敵視する人が多いです。
でも私はネット上の懐疑派よりも、江守氏の方が何倍も信頼出来ます。
ただNHKで江守氏と組んで、温暖化驚異番組を作る場合はやり過ぎだと思いますが・・(笑)。



Ipcccの予測(正確には予測ではなくシナリオ)を、私が信頼できないのは、地球の気候変化の原因が、ほとんどわかってないからです。
未熟な時代の天気予報と同じです。
太陽と地球の関係も、ほとんどわかっていません。
IPCCのシナリオでは、南極の温度変化を説明できていません。
赤祖父説では説明可能です。



地球の最大温室効果ガスは水蒸気ですが、水には温暖化効果と寒冷効果があります。
1980年以後の温暖化の原因は、海面温度の上昇です。
でも、どうして海面温度が上昇したのか?
そして海面温度の上昇が、水蒸気や雨や風や雲とどう関係するのか謎です。



あと大気汚染も深刻です。
中国などの急速に工業化が進む国では、排気ガスと砂漠化が深刻な問題です。
大気汚染でも、「廃棄物質の色」と「散布される高度」によって、温暖効果と寒冷化効果があります。
太陽光を遮るから寒冷効果になりますが、地表からの熱を逃がさないため、ヒート・アイランド現象になったりもします。
Posted by おおくぼ at 2009年10月12日 13:27
最近、赤祖父先生の『オーロラ』(中央公論社:1975)を読んでいます。
かなり専門的な内容ですが、面白いです。

最近の研究では、電離層の影響が対流圏まで来ることがわかっています。
かなり大きな影響があるらしいのですが、現時点では謎だらけです。

日垣隆の『定説だってウソだらけ』(WAC)には、赤祖父先生のオーロラ研究についての興味深いインタビューがあります。

いつか、「温暖化について」、日垣隆の赤祖父先生インタビューを読みたいです。
Posted by おおくぼ at 2009年10月12日 19:18
江守正多氏は、気候モデルの長所と短所を明らかにしており、温暖化の脅威に対する世間一般の誤解も批判していますから、本書はオススメだと思います。
実際のところ江守氏は、温暖化脅威を煽る番組に加担しているようですが…
本文で指摘しましたが、江守氏は地球温暖化問題を一種の世直しの契機と捉える、サヨク的な心情を吐露しています。論理と実証がなによりの自然科学でも、研究者の思想信条と無縁でないことの表れですね。

エアロゾル同様、雲もまた種類によって、温暖化にも寒冷化にも寄与します。
雲は複雑であり、気候モデルでは再現できないとツッコミを入れているのが、丸山茂徳氏ですね。江守氏も雲は難しいと認めながらも、雲のパラメタ化を実現しつつあると言います。
江守氏はまた、都市部での気温上昇はヒートアイランド現象であるが、都市の面積は地球全体からみるとわずかなので、ヒートアイランドが地球全体を温暖化させることはないと書いていました。

素人が地球温暖化を公平に論じるには、江守正多氏と赤祖父俊一氏の著書を読み比べるのがいいですね。
魔法の水晶玉のようなコンピュータ・シミュレーションを駆使する、若手の江守氏。
実証データを重んじる、極地研究の世界的権威である大ベテランの赤祖父氏。
二人の研究姿勢も対照的で面白いです。
Posted by 管理人 at 2009年10月13日 00:01
オーロラは温暖化と関係が深いと推理しています。
だから、そういう意味でも、オーロラの研究家である赤祖父先生には注目しています。
Posted by おおくぼ at 2009年10月13日 12:22
私は赤祖父先生に、国際的な視野からの発言を期待しています。
日本の科学者や政治家の温暖化に対する意識は、果たして「世界標準」なのか?

12月のCOP15は、デンマークのコペンハーゲンで開催されます。
地球温暖化対策を経済学的に批判する、ビョルン・ロンボルグらコペンハーゲン・コンセンサスのお膝元です。彼らの言動がどう影響するのか注目しています。
日本のマスメディアは興味を示さないでしょうが…
Posted by 管理人 at 2009年10月13日 21:52
最近は、すっかり流行じゃなくなってしまったオゾン・ホールですが・・・・。
私は温暖化と関係が深いと推理しています。
対流圏が温暖化すると、成層圏下部は寒冷化します。
南極上空の成層圏でオゾン・ホールが起こりやすいです。
オゾン・ホールの大きさは毎年違います。
成層圏が寒い時期は大きく、暑くなると小さくなります。

Posted by おおくぼ at 2009年10月17日 20:49
地球温暖化の陰で、すっかり話題にならなくなりましたね、オゾンホール。
あと、環境ホルモンとか、ダイオキシンも。子供がプラスチック製品を舐めたら危ないと騒いでいたのは、ほんの10年ほど前だったでしょうか。

オゾンホールは、人類が排出したフロンガスが原因とされているのに、人口が密集する北半球の中緯度地帯ではなく、なぜか南極の上空に発生します。
オーロラとオゾンホールは、どちらも極地の上空に発生します。オゾンホールも地磁気と関係がありそうですね。
オゾンホールは、人類の文明活動によって「発生」したのではなく、文明の進歩(観測技術の向上)によって「発見」されたのでは?

私はオゾンホールを、定常開放系である地球が気温を一定に保つための廃熱口だったら面白いと、妄想しております。
Posted by 管理人 at 2009年10月18日 20:11
赤祖父俊一さんの『オーロラ』や 桜井邦朋さんの『科学の発見はいかになされてきたか―宇宙物理学者の夢と欲望』を読むと、太陽や地球の電離層についてわかり始めたのは、つい最近のことで、いまだに不明のことが多いそうです。

オゾンホールが南極で観測されたのは、たしかに観測技術の向上が大きな原因ですが、偶然というか、研究者の好奇心も大きいと思います。
研究者が、「よくわかんないけど、観測してみよう」ということで、その結果、未知のことが少しだけ見えた感じです。
パズルのほんの一部が、はまった状態なのです、全体像は見えてないのです。
いわゆる予防原則で、フロンガスは悪者にされたのです。
私はフロンガス抑制には賛成ですが、でも、それはあくまで予防原則だということを忘れてはいけないと思っています。



私は「オゾンホールは地磁気と関係」ないと思っています。
南極の秋〜冬は、オゾンが元々薄い時期です。赤道から豊富なオゾンの流入が、なんらかの理由で塞がれれば、南極上空は穴の空いた状態になりやすいのです。
成層圏がマイナス80度近くになれば、本来出来ないハズの成層圏に雲が発生します。
この雲がオゾンの流入を防いでいると考えれば、わかりやすいです。
ちなみに成層圏が寒い時期は、北極の上空でもオゾンホールが発生します。
Posted by おおくぼ at 2009年10月18日 21:46
>「私はオゾンホールを、定常開放系である地球が気温を一定に保つための廃熱口だったら面白いと、妄想しております。」

『地球温暖化は止まらない』
デニス・T・エイヴァリー&S・フレッド・シンガー:著
(山形浩生&守岡桜:翻訳)

・・・に、オゾンホールではありませんが、廃熱口の話があります。

また槌田敦のエントロピー論では、地球が水の惑星なので、水蒸気自体が廃熱効果があることを指摘しています。
車のフロント・ガラスの曇りを考えればわかると思いますが、冷えれば水滴になります。
蒸発によって熱を奪い、対流圏上部で熱を放出し、雨になって、地表に戻ってくるそうです(地表に戻ってこないと金星状態です)。
だからH2Oは、自然のエアコンだそうです。
そして砂漠化は、エアコンが壊れた状態なのです。
Posted by おおくぼ at 2009年10月18日 21:56
対流圏の温暖化と成層圏下部の寒冷化は、相関する現象のようですね。
対流圏が暑いと成層圏が寒くなり、オゾンホールが拡大するなら、熱帯上空の方がオゾンホールが出来やすいと思うのは、誤解でしょうか。

現在、地磁気は減少しており、このまま減少が続くと1,000年後にはゼロになります。そうなると地表に到達する宇宙線の量が増えます。太陽活動が低下すると、宇宙線の飛来はさらに増えます。今後の地球環境は、どうなって行くのでしょう。
Posted by 管理人 at 2009年10月19日 20:16
宇宙線の量が増えたら、どうなるかは調べたことありません。

太陽活動が、今後どうなるかも予想がつきません。

>「対流圏が暑いと成層圏が寒くなり、オゾンホールが拡大するなら、熱帯上空の方がオゾンホールが出来やすいと思うのは、誤解でしょうか。」

これは難問です。
素人考えですが、赤道はオゾンの発生量が多いので、オゾンホールできにくいと思うのです。
オゾンは2種類の紫外線によって、酸素分子が分解し、オゾンという分子に変身することでできます。
南極は、地軸の関係上、紫外線の少ない地域ですが、赤道上は紫外線が最も多い地域です。

また成層圏にできる特殊な雲(極成層圏雲)は、約マイナス80度にならならいと発生しません。
赤道上空の成層圏では、そこまでの温度に達しないと思うのです(理由は不明ですが・・)。


Posted by おおくぼ at 2009年10月20日 19:55
オゾンは、大気に紫外線が照射されて発生するので、太陽光が強い熱帯上空の方が多く生成されます。
ところが成層圏子午面輸送(ブリューワー・ドブソン循環)によって、熱帯上空のオゾンは極地に運ばれ、熱帯よりも極地の方がオゾンが濃くなります。
それなのにオゾンホールは、極地に発生します。
極成層圏雲とやらが、オゾンホールを作っているのでしょうか?
難問ですね…
Posted by 管理人 at 2009年10月20日 21:20
よくわかんないですが、南極のオゾンは季節変動が大きいのです。

http://www.data.kishou.go.jp/obs-env/ozonehp/diag_o3hole.html

赤道はどうして季節変動が少ないのか、私はよく知りません。
Posted by おおくぼ at 2009年10月20日 22:51
すみません。
専門家ではないおおくぼ様に、回答を求めているわけではありませんので、お答えになられなくても結構です。
私もいろいろ考えてみます。
Posted by 管理人 at 2009年10月22日 23:45
こちらのブログはどうでしょうか?
車の記事が多いですが、環境問題記事もあります。
以前、オゾンホールの記事で、お邪魔したことがあります。

http://ishizumi01.blog28.fc2.com/blog-category-9.html
Posted by おおくぼ at 2009年10月24日 19:35
石墨さんの『酒と薀蓄の日々』を拝読いたしました。
人類が排出するCO2の量が、IPCCが自然界の炭素吸収量の限界だとする31億tを超えるはるかに以前から、大気中のCO2濃度は増加していたし、地球温暖化も始まっていたというツッコミはお見事ですね。
そもそも、IPCCが自然界の炭素吸収量を、31億tと算出した根拠はなんでしょう?
Posted by 管理人 at 2009年10月25日 21:52
>「そもそも、IPCCが自然界の炭素吸収量を、31億tと算出した根拠はなんでしょう?」

わかりません。
IPCCには本来、統一見解があるわけではなく、専門家が集まって、いろんな意見やデータを発表してるだけです。
ニュースでは、要約版というか代表的見解が報道されます。
Posted by おおくぼ at 2009年10月26日 20:04
そういえばIPCCは、学会でも研究機関でもなかったですね(笑)
Posted by 管理人 at 2009年10月27日 21:38
竹内薫さんの新書『なぜ「科学」はウソをつくのか』でも、江守さんの本を推薦してました。
Posted by おおくぼ at 2009年11月24日 14:18
江守さんの本は、気候モデルの仕組みがとてもわかり易い良書です。
とりわけ、あとがきがいいです。
江守さんの温暖化危機を熱く訴える動機が、余りにもわかり易くて(笑)
Posted by 管理人 at 2009年11月24日 20:23
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