2010年05月03日

1旧84(後編)

ウィンストン・スミスは、真理省に勤務する党員です。党の政策と矛盾した過去の記録を削除し、現状に即した内容に書き改めるのが彼の仕事。いわば歴史の改竄です。
かつて自分が見聞きしたはずの記憶が、なかったことにされていく。党の支配体制に疑問を感じたウィンストンは、禁じられた行動に出ます。それは日記を付けること。第一級の思考犯罪です。



一九八四年新訳版

真理省には、黒髪の若い女がいました。豊満な肉体を持ちながら女を感じさせず、見るからに党のイデオロギーに忠実そうな潔癖さを湛えています。
もしかすると彼女は、党内の非正統派を嗅ぎつけて当局に告発する、思考警察の手先かもしれない。ウィンストンは彼女を恐れ、憎んでいました。

仕事を終えたウィンストンは、この国の失われた記憶を求めて、プロール(労働者階級)たちの暮らす貧民街へ出かけました。
党員たちは、余暇に地域活動へ参加することが推奨されており、プロール街へ出向くことは好ましい行動ではありません。
そこでウィンストンは、あの黒髪の娘と出会ってしまうのです。

党員たちの暮らしは生活物資が不足しており、密かにプロール街の自由市場で日用品を手に入れています。にもかかわらず、物資の生産量が毎年増加していると発表する潤沢省。そして過去の発表を都合よく改竄する真理省。
その名称とは正反対に、真理省は虚偽を、平和省は戦争を、愛情省は拷問を、潤沢省は欠乏を担っているのです。矛盾した事柄を同時に受け容れる「二重思考」が、ビッグ・ブラザーの党員に求められる資質です。

旧ソ連・東欧諸国の日常は、実際にこんな感じだったのだろうかと思わせるリアルな筆致。権力とはいかなるものかを考える契機を、現代の私たちにも与えてくれます。
解説はネタバレ有りなので、最後に読みましょう。

(5月2日読了)★★★★★

【不純文學交遊録・過去記事】
1旧84(前編)


posted by 【電脳呆人】不純総合研究所 at 01:06| Comment(0) | TrackBack(0) | 文学・小説交遊会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。

この記事へのトラックバック
×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。