2010年06月21日

ドルの時代は続くのか

大幅な経常収支赤字が続き、消費過剰・貯蓄過少のアメリカ。
一方、輸出で外貨を獲得して貯蓄過剰のアジア新興国。
このような状態(グローバル・インバランス)は、いつまで持続可能なのでしょうか。



アメリカの経常赤字にも関わらず、ドルが下落せずに基軸通貨であり続けられたのは、アメリカが魅力的な輸出市場であり、流動性の高い発達した金融システムを備えていたからです。また、突出した軍事的優位性もあるでしょう。
各国は輸出に有利なよう、自国通貨の増価を抑えるためにドル買いし、ドルで外貨準備を蓄積しました。

かつてのブレトンウッズ体制は、OECDに加盟する比較的同質な経済体制をもつ国々によって成り立っていました。
しかし現在の世界金融市場(新ブレトンウッズ体制?)にはアジア・ラテンアメリカ・中東諸国などが加わり、ブレトンウッズ体制よりもはるかに同質性が低くなっています。これまでのように、各国が協調してドルを買い支えることで、国際金融システムの安定が図られるとは限りません。加えてユーロという選択肢もあります。

本書は国際金融論の大家であるバリー・アイケングリーンが、今後の通貨体制のあり方を歴史から検証しています。特にブレトンウッズ体制を水面下で支えた「金プール協定」の存在は、興味深い記述です。
日本が固定相場制から脱却した過程は、中華人民共和国の人民元が変動相場制へ移行する際のモデルとなるでしょう。
国際金融史がよくわかる本ですが、刺激的な提言や大胆な未来予測はありません。

原著は2006年の刊行。世界金融危機が表面化する前であり、当然ながら昨今のギリシア危機は織り込まれておりません。
著者は、複数の通貨がドルと並んで準備通貨の地位を分け合うシナリオを示唆していますが、さまざまな経済・財政状況の国家を抱えるユーロの脆弱さが露呈した現在では、ユーロの評価が過大な気がします。

(6月14日読了)★★★★

【不純文學交遊録・過去記事】
これがバブルだ!
アメリカは自滅したがっている?
それでもバブルは繰り返す


posted by 【電脳呆人】不純総合研究所 at 01:56| Comment(7) | TrackBack(0) | 政治・経済交遊会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
貨幣から見た歴史書なら飯田泰之さんの『歴史が教えるマネーの理論』(ダイヤモンド社)が優れています。

ギリシャの危機前の本ですけど。

稲葉振一郎さんも『経済学という教養』(ちくま文庫) で絶賛しています。



通貨が高いということは、外国に商品を売る時に、価格競争で不利になりやすいということです。
特に人件費です。
アメリカの失業の大きな原因は、人件費のコストを下げるためにアメリカ国内で商品を作らない傾向が大きいということです。



通貨共同体は、同じ経済規模の国同士だと効果が高いです。
今回のギリシャ危機は、ドイツとギリシャという二つの国の経済レベルの違いが原因です。

貨幣の発行量を風呂の水と考えればいいと思います。
ギリシャとドイツは真逆の状態だったのです。
だからギリシャかドイツのどちらかが、ユーロ圏から離脱すれば良かったのです。

Posted by おおくぼ at 2010年06月22日 01:01
>通貨共同体は、同じ経済規模の国同士だと効果が高いです。

同じ経済規模の国同士で、PIGSという通貨を作るとか(笑)
今日の為替相場は、1EUR=10PIGS(笑)

ギリシャが自国で通貨を発行していれば、国内がインフレになって、自国通貨が下がるだけですね。
PIGS安で観光客が増えれば、外貨を稼げます。安価な労働力を生かして国外から製造業を誘致するという方法もあります。
ハイパーインフレの国では、自国内でも外国の通貨の方が信用が高いでしょうね。
Posted by 管理人 at 2010年06月23日 22:59
みんなで同じ通過を共有することは、みんなで海に縄をつけて泳ぐのと同じです。

一人が溺れると、他人も巻き添いになります。
また泳ぐスピードが早い人と遅い人がいると邪魔になります。

ギリシャが単独で溺れたなら、いくらでも助けようがあります。
でもユーロ圏全員が溺れると、大混乱です。

>安価な労働力を生かして国外から製造業を誘致するという方法もあります。

これは諸刃の剣です。
中国やロシアは、うまく行った例ではありますが・・・。
海外から誘致する利点は、技術と資本を国が提供する必要がないことです。
でも長い目で見れば、自国資本&技術で生産した方が世界規模の不況に強いです。
そういう意味では日本は世界恐慌に強い国なのです。




最近、「昭和恐慌」の歴史研究が充実してきているので、面白いです。
ちなみにリフレ派は「昭和恐慌」の研究者が多いです。
Posted by おおくぼ at 2010年06月23日 23:28
訂正

通過 → 通貨
Posted by おおぼ at 2010年06月23日 23:29
ギリシャが独自通貨を持つ国ならば、財政危機は一国だけの問題で済みますが、ユーロ加盟国なのでヨーロッパ全体を巻き込んでしまいます。

ギリシャの主要産業は、海運と観光ですね。
日本はアメリカと違い、製造業を維持しているのが強みですが、将来、日本経済が衰退したら「東洋の神秘的な元・経済大国」として、観光立国を目指さなくてはならないのかな…と思うことがあります。
ギリシャの再生への道は、日本の未来にとって参考となるかもしれません。
Posted by 管理人 at 2010年06月25日 22:06
ギリシャを含めヨーロッパの国は、国債を投資として考えているので、リスクが高いです。



長い目で見ると、日本は落ち目になるような気がします。
メイド・イン・ジャパンの栄光も過去の遺物になるのではないでしょうか?

観光立国を目指すなら、交通を良くしないとダメでしょう。
外国人が日本旅行するには不便な気がします。
最近は船で、日本に来る中国人旅行者が増えています。
中国は富裕層がもの凄い勢いで増えていて、その消費量は大きいです。



日本は20年に渡る円高とデフレで苦しんでいます。

不況の時は、人口が減った方が経済的には楽になるのですが、高齢化社会が加速すると老人だらけの国になってしまいます。

北欧がうまく行っている理由は、人口が少ないことと、商品の国際的な評価が高いことです。

ヨーロッパのモデルは単純ではありませんが、学ぶべき点は多いでしょう。

アメリカの失業問題と格差問題は深刻ですが、経済的にはアメリカという国はこれからも強いと思います。
Posted by おおくぼ at 2010年06月25日 23:09
財政危機にある国の通貨を持つこと自体、ハイリスクな国債を持つようなものですね(笑)

日本には、お金持ちの高齢者が気持ち良く消費したくなるような商品の開発、市場の開拓が必要だと思います。

アメリカは人口増加が続いていること、金融市場が発達していることが強みですね。
Posted by 管理人 at 2010年06月27日 23:41
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