2010年07月02日

ミステリに中国人が登場したっていいじゃない

浦賀和宏(受賞時19歳)、西尾維新(同20歳)、佐藤友哉(同20歳)など若い作家を生み出してきた講談社のメフィスト賞。
最新(第44回)の受賞作『琅邪の鬼』を書いた丸山天寿は55歳、これまでで最年長の受賞者となりました。古書店主として豊富な読書量を誇り、日本人の起源を探るうちに構想に至ったという物語です。



秦の始皇帝の時代。
山東半島の港町・琅邪(ろうや)は、現世と異界の境と呼ばれていました。
琅邪の海上には、突然この世のものとは思えない浮島が出現するのですが、誰一人として島にたどり着いた者はいません。歴代の支配者も、この島には手を出そうとしませんでした。
ところが秦王政(始皇帝)は、神仙の島を我が物にしようと、琅邪の地へやって来たのです。秦王は方士の徐福に、不老不死の仙薬を手に入れるよう命じます。
琅邪には徐福の研究所と造船所が、秦の資金で建てられました。さらに秦王は、琅邪を12年間免税にしたのです。

徐福の研究所が出来てから、琅邪の町には多くの人々がやってきて賑やかになりましたが、おかげで犯罪も増えました。
琅邪の求盗(警察官)である希仁のもとへ、新興の大商人・西王から、屋敷に鬼が現れるとの相談が持ち込まれます。家人が知らぬ間に品物の位置が変わっており、斉の王室に伝わる「双龍の璧」が消えたのだと言います。璧とは「完璧」の語源となった宝物のことです。
支那の「鬼」は、人智を超えた不思議な現象全般を指します。その後も琅邪では、花嫁がいなくなったり、死者が甦ったり、屋敷が一晩で消失したりと、不可解な事件が続発。琅邪に災いをもたらす鬼の正体とは…




医術・占術・剣術などに優れた徐福の弟子たちが縦横無尽に駆け回る、涙あり、笑いあり、アクションありの痛快歴史ミステリ。著者の儒学に対する批判的な態度も面白いです。
ノックスの探偵小説十戒に「中国人を登場させてはならない」というのがありますが、ご心配なく。超常現象かと思われた事件は、ミステリの流儀に則り論理的に解決されます。
ミステリに厳密な時代考証は求めませんが、研究所とか治療室とか現代的な言い回しが多いので、何か別の言葉に置き換えられなかったのかな…というのが少々残念なところ。

(6月28日読了)★★★★★


posted by 【電脳呆人】不純総合研究所 at 23:36| Comment(2) | TrackBack(0) | 文学・小説交遊会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
 この本を読んだことはありませんが、研究所は草庵とか庵、ダメなら屋敷でもよかったと思います。神仙の島は日本の事ですよね。徐福だけに・・・
Posted by 金吾庄左ェ門 at 2010年07月05日 02:05
徐福の研究所(徐福塾という表記もあり)を、工房とか薬房と書いてくれたら、より古代の雰囲気が出たと思います。

琅邪の海上には蜃気楼が現れることから、神仙の地とされたようです。
物語には、蓬莱(日本?)は全く登場しません。ただ、続編を書く予定はあるそうです。
Posted by 管理人 at 2010年07月05日 09:30
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