2010年08月19日

殺意の声が見える

ロナルド・ノックスの探偵小説十戒に「探偵は超自然能力を用いてはならない」あるいは「偶然や第六感で事件を解決してはならない」というものがあります。探偵が超能力で犯人を名指して事件は解決…では、ミステリは面白くありません。
では、探偵がある特殊な能力によって犯人が分かってしまったうえで、成り立つミステリはあるのでしょうか。



とある地方都市で、女性を殺害して焼却する猟奇事件が続発。犯人は遺体を焼くことから「フレイム(炎)」と呼ばれています。高校生の甘祢山紫郎は、フレイムの手によって幼なじみの少女・神崎花恋を失いました。後追い自殺を企てた山紫郎を救ったのは、派手な銀髪を腰まで伸ばした若い女でした。
彼女の名は音宮美夜。田舎のヤンキーみたいな風貌ですが、物腰には育ちの良さも感じられます。美夜は、音を聴くと色や形が見える共感覚の持ち主で、山紫郎の声が蒼く糸を引いて見えたことから、彼が自殺志願者だと見抜きました。美夜はその能力(というか体質)を買われて、ある人物からフレイム事件の捜査を依頼されていると言います。

美夜は、音が見え過ぎて精神に負担が掛かるため、普段はコンタクトレンズで視覚を調整しています。状況に応じてコンタクトを取り替えるなんて面倒なことをしなくても、サングラスを掛ければいいのに…と思うのですが、そこには彼女のもうひとつの「キョウカンカク」が隠されているのです。
犯人と思しき人物は早い段階で目星が付きますし、美夜も彼の声に濃厚な殺意の色を見ます。しかし彼には鉄壁のアリバイがあり、美夜の共感覚以外に犯行を裏付けるものは何もありません。読者の想像を遥かに超えた真相が待っています。

第43回メフィスト賞受賞作(著者・天祢涼)。
いかにもなイラストの表紙に、特殊な能力をもつ美少女探偵が主役ときたら、どうせ「キャラ萌えラノベ」だろうと思って手に取るのを躊躇していましたが、かなり楽しめました。書物を外見で判断してはいけませんね。
ただ、美夜のもうひとつの「キョウカンカク」は、ちょっとやり過ぎでは…

(8月9日読了)★★★★

【不純文学交遊録・過去記事】
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posted by 【電脳呆人】不純総合研究所 at 21:41| Comment(0) | TrackBack(0) | 文学・小説交遊会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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