2010年08月20日

過去から未来をデザインする

かなり古い話になります。
「みなさんお元気ですか〜」と呼びかける井上陽水のCMが、昭和天皇の病状に配慮して口パクになり話題となった日産セフィーロ。
1988年にデビューしたセフィーロ(A31)は、小径のプロジェクターヘッドランプをクリアパネルで覆ったフロントマスクに、なだらかに弧を描くルーフライン、そして豊かな面で構成されたフェンダーが、非常に斬新なセダンでした。
前年の第27回東京モーターショーに出品され、世界的に高い評価を受けた4ドアセダンのコンセプトカー『ARC-X』のデザインモチーフを具現化したようなクルマです。



セフィーロのデザインを手掛けたのは、和田智。
モーターファン別冊ニューモデル速報第63弾『セフィーロのすべて』に登場して以来、注目していたカーデザイナーで、他には電気自動車『ハイパーミ二』とコンパクトスポーツカー『IF』が印象に残っています。

その後、和田は日産自動車からアウディAGに移籍。
かつてアウディといえば、徹底したエアロフォルムとフルタイム四輪駆動(クワトロ)による先進的なイメージはあるものの、メルセデスベンツやBMWのようなブランド・ヴァリューはありませんでした。
上品だが存在感の強さに欠けるアウディに、フロントグリルとバンパーダクトを一体化したインパクトのある顔を与えたのが和田です。彼がデザインしたA6のシングルフレームグリルは、現在に至るアウディのアイデンティティとなっています。

2010年、和田はアウディから独立して帰国。SWdesignTOKYOを設立しました。
メーカーのデザイナーに求められるのは、マーケットで勝つための押しの強いデザイン。しかし売れるためなら手段を選ばないデザインでは、本当に良いものは作れません。会社の一員であるインハウスデザイナーでは、社会を変える仕事は出来ないと感じたのです。たとえ電気自動車を作っても、新しい暮らし、新しい価値観の提案がなければ、エコどころか電気自動車という名のゴミが増えるだけです。

新しいものを作るには、過去に対する敬意を持ち、今を解釈し、未来をデザインする。
それは、単に過去の意匠を反復することで新しいと錯覚させるレトロデザインとは違います。

(8月13日読了)★★★★

【関連サイト】
SWdesign TOKYO
※クリックするたびに別ウィンドウが開くのが鬱陶しい。社会そのものをデザインするクリエイターのサイトなら、早急になんとかすべきでは…
【不純文學交遊録・過去記事】
フェラーリをデザインした日本人


posted by 【電脳呆人】不純総合研究所 at 21:56| Comment(0) | TrackBack(0) | 芸術・娯楽交遊会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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