2010年12月05日

火と水で神

日本人は無宗教だといわれます。とりわけ1995年のオウム真理教事件以降、宗教とはアブナイもの、語るべからずもの、近寄るべきでないものとされてきた感があります。
その一方で私たちは、神社に参拝し、仏式で死者を弔い、クリスマスを祝うなど、多種多彩な宗教的行事を受け容れています。また、占い・霊視・超常現象などオカルト・スピリチュアルに対する世間の関心は、一向に衰える気配がありません。

火・水

火・水

価格:2,205円(税込、送料別)



一種の語呂合わせですが、神とは火と水(カとミ)であるとの解釈があります。
宗教学者の鎌田東二と陶芸家の近藤高弘は、奈良県吉野の天河大弁財天社で、1997年から毎年、天河護摩壇野焼き講を行ってきました。豊かな森林が清浄な水を育む吉野で、護摩の火でオブジェを焼き上げる。まさしく神(火水)に捧げるセレモニーです。

この天河護摩壇野焼き講には、修験道から激しい反発があり、芸術界からは「近藤は怪しい宗教にかぶれた」と非難されました。しかし天河大弁財天社には、弘法大師こと空海が護摩の灰を焼き上げて造ったという「灰練り弁才天像」があります。天河護摩壇野焼き講は、決して無根拠で突飛なお遊びではなかったのです。
近藤高弘は、自らの手で骨壷を焼く「解器(ホドキ)ワーク」も提唱しています。

神の地・吉野で宇宙と生命のサイクルを表現する野焼きですが、天然の木を伐採して護摩を炊く行為はエコに反しないかと疑問が湧きました。事務局のミーティングでも、護摩で使う木をどこから持ってくるのか問題提起があったようです(どのように解決したかは不明…)。
鎌田東二は神秘体験を公言し、神道ソングライターを名乗って音楽活動を行うなど、学者にしてはパフォーマンスが過ぎるきらいがありますが、自称「アニミズム信者」である私は、現代におけるアニミズムの実践として天河護摩壇野焼き講のような試みは有りかと思います。

(11月22日読了)★★★

【不純文学交遊録・過去記事】
アニミズム革命
【関連サイト】
天河神社
鎌田東二オフィシャルサイト
近藤高弘の世界


posted by 【電脳呆人】不純総合研究所 at 13:26| Comment(9) | TrackBack(0) | 芸術・娯楽交遊会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
神秘主義で連想するのは宮沢賢治なのですが・・・。
空海は宮沢賢治の先駆者という感じがします。
空海は真言宗で、宮沢賢治は日蓮宗ですが・・・。
宮沢賢治に強い影響を与えた田中智学が、日蓮宗でありながら、空海よりの人なのが理由という気もします。
Posted by おおくぼ at 2010年12月13日 02:28
本書は「神秘主義のすすめ」ではありません。
私の信奉する「アニミズム」も、単なる自然崇拝ではなく、科学に基いて自然と共生する文明の作法というべきものです。
そういえば宮沢賢治の作品には、豊富な自然科学の知見が生かされていますね。
Posted by 管理人 at 2010年12月13日 19:07
鎌田東二さんには『宮沢賢治「銀河鉄道の夜」精読』 (岩波現代文庫)という本があります。

神秘主義とは何だろうという素朴な疑問があります。
手品は神秘に感じられますが、科学に基づいています。
「神秘を感じること」を神秘主義と定義するなら、科学も神秘主義の一種になります。
科学と神秘主義の境界線はどこにあるのでしょうか?

ケインズはニュートンを「最初の科学者ではなく最後の魔術師」と言っています。
Posted by おおくぼ at 2010年12月13日 22:05
現代において「神秘主義」というと、占い、超能力、心霊現象、オカルト、スピリチュアル・ブーム等の言葉が連想されます。
鎌田東二さんは、オウム真理教事件・酒鬼薔薇聖斗事件の衝撃を受けて、人々が安易なオカルトに走って「魔境」に陥らないよう、啓蒙しているのだと思います。

その一方で「鬼を見た」だの「幽体離脱をした」だの、鎌田さんの言動そのものが「神秘主義」です。
鎌田さん自身も一時は魔境に陥り、それを克服したそうですが、正しい神秘主義者になるには、それなりの修行が必要なのでしょうか。
正しい神秘主義者(鎌田さん)と間違った神秘主義者(オウムや酒鬼薔薇)の境界はどこにあるのでしょう?

この本でやっていることは、野焼きによる自然と芸術のハーモニーや、自分の手で骨壷を造って生と死を考えるなど、わりと穏健な(?)活動です。
果たして鎌田さんは、私たちに神秘主義をすすめているのか、それとも興味本位で近付くべきでないと警告しているのか。そのへんがよくわかりません。
Posted by 管理人 at 2010年12月14日 23:26
確かに、科学と神秘主義の境界は難しいです。
ミクロの素粒子も、百億光年彼方の銀河も、肉眼で見えないのは霊魂と同じ。それでも素粒子や銀河は、科学の法則によって存在が確かめられています。
科学のお約束で説明できれば合理主義(科学)、そうでなければ神秘主義(オカルト)でしょうか?
でも、科学で説明できるから科学というのでは、トートロジーですね(笑)
Posted by 管理人 at 2010年12月14日 23:52
先端の宇宙論は技術的に実証できないことが多いので、仮説のままなのがかなりあります。
また考古学でも、データが紛失してしまって実証不可能な仮説がかなりあります。

オカルトを低俗と考える人は多いですが、人間以外の動物はオカルトにハマることはないと思います。
そうすると、オカルトにハマるのは人間の特権ということにもなります。
人間は自然をコントロールしたいという欲望がありますが、オカルトはその欲望を最も表現しているのではないでしょうか?

芸術も人間の特権だと思いますが、芸術とオカルトは密接な関係にあります。
「人間とは何か?」と考えると、オカルトにハマることと言ってもいいかもしれません。
Posted by おおくぼ at 2010年12月15日 04:38
確かに。オカルトは人間の特権です。
悪いのはオカルトそのものではなく、思考停止することですね。科学の言葉で十分説明可能なことを、すべて怪力乱神のせいにしたり、予言や占いを絶対に正しいものだと信じ、当たらなければ自作自演のテロを起こしたり。

どんなに崇高な神秘体験も、脳の内部で起こった幻覚だと言ってしまえば、それまでですが(笑)
そうなると、この世で最も神秘的な存在は、人間自身の脳でしょうか?
Posted by 管理人 at 2010年12月16日 21:45
科学が私にとって魅力的なのは、神秘を解明するからです。
神秘を崇めることは共同体を維持するために必要かもしれませんが、私はパンドラの箱を開けることの方が重要だと考える危険思想の持ち主です。

科学はいろんな神秘を解明し、地球を変化させてきました。
ギリシャ神話的に言えば、神の領域を侵略して、神の道具を人間が奪って、使っていると言えます。

これは戦争兵器や公害を考えればマイナス面ですが、今更「石器時代に戻れ!」というわけにもいきません。
医学や農業などの発展があって、私達の生活は豊かになりました、これはプラスの面です。
プラスの面だけというのは難しいと思います。
私達の恩恵を受けているコンピュータやインターネットの発明は、軍事開発と密接な関係にあります。



科学とニセ科学の境界線は難しいです。
歴史的に有名な科学者の仕事を見ると、オカルトのような気がします。
コペルニクスやケプラーもそうです。
特にケプラーは数学神秘主義者という感じです。
最近、ケプラーの翻訳がいろいろ出たのですが、読むとほとんど理解できないけど、内容がオカルトとしか思えません。

>悪いのはオカルトそのものではなく、思考停止することですね。

思考することの重要性をパスカルは強調しましたが、パスカルもかなりオカルトだと思います。
思考は人間の業であるともに、世界を変えるための必須条件だと思います。
人間以外の動物も思考をしていると思いますが、「抽象化する力」と「論理的に考える力」が人間固有の力だと思います。



脳は謎が多く、魅力的な研究分野だと思います。
でも脳だけでは解明できない謎を人間は持っていると思います。

>どんなに崇高な神秘体験も、脳の内部で起こった幻覚だと言ってしまえば、それまでですが(笑)

それだと、心理学の必要性がなくなってしまいます(笑)。
民俗学などは、神秘体験には共同体的な原因があるという考えです。
ドラッグによって神秘体験は可能ですが、それでは神話や伝承の謎が解けません。
例えば、うつ病を脳の病気だとして、薬を与えればいいという治療には反対です。
Posted by おおくぼ at 2010年12月17日 00:04
神秘の解明は人間の業であり、べつに危険思想だとは思いませんが(笑)
ただ、世の中には「知らぬが仏」という言葉もあります。働きアリのように、遺伝子にプログラミングされた行動パターンにのみ従い、無知のまま生きていくのが幸せかもしれません(アリも何か考えているのかもしれませんが…)。
未開社会で、村人が崇めている祠を暴いて「箱の中は空っぽだ!」と言うような人は…やっぱり危険です(笑)

うつ病が、脳というハードウェアの故障ではなく、心というソフトウェアのバグなら、投薬では治療したことになりません。心と書くとなんとなく神秘主義的ですが、ソフトウェアのバグとは、要するに嫌な記憶や経験のことです。
嫌なことを薬で紛らわす効果を、一概に否定はしませんが。
Posted by 管理人 at 2010年12月19日 17:55
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。

この記事へのトラックバック
×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。