2011年01月25日

人虎は災厄を招く

平凡な官吏で生涯を終えることを潔しとせず、職を辞し、詩人として身を立てることを決意した唐の役人、李徴。しかし夢破れた李徴は、発狂し、行方不明となり、獰猛な人食い虎へと姿を変えてしまいました。
国語の教科書でおなじみ中島敦の『山月記』は、人虎伝と呼ばれる支那の怪異譚をモチーフとしています。

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第44回メフィスト賞を受賞した丸山天寿『琅邪の鬼』の続編が刊行されました。
戦国時代を制して天下を統一した、始皇帝こと秦王政。彼の残された野望は、不老長寿の仙薬を手に入れること。秦王は、神仙の地への入り口とされる山東半島の港町・琅邪を優遇し、12年間免税としました。おかげで琅邪は急速に発展しましたが、ひと稼ぎしようと各地から人々が流入し治安は悪化。琅邪の求盗(今でいう警察官)・希仁の前に、ふたたび難題が立ち塞がります。

琅邪山の虎が里に降りて人となり、神木の下で連続殺人が起こり、始皇帝の観光台が崩壊する…これらは古代の琅邪王の祟りなのか。紀元前が舞台の作品なので、たとえ超常現象的な事件であっても許せてしまうのですが、そこはミステリらしく合理的に解き明かされます。
本作のもうひとつの魅力である、痛快なアクションシーンも健在。小剣使いの狂生、その妻で馬術に優れた桃、上海雑技団もビックリの身軽な飲み屋の女主人・蓮。三人の武術は人間離れしていますが、事件はフェアに解決されるのでご心配なく。
最後に事態を収束させるのは、狂生の兄・無心。秦に滅ぼされた韓の出身で、国家転覆を目論んでいます。私が最も好きな登場人物です。

次回作は『咸陽の闇』と予告されています。いよいよ秦の都が舞台です。
著者は邪馬台国研究をライフワークとし、日本人のルーツを探るうちに小説の構想へと至りました。徐福たちは始皇帝と対決し、琅邪の船団を率いて日本列島を目指すのでしょうか。徐福伝説と日本建国について、著者の壮大な仮説が披露される日を楽しみにしています。

(1月17日読了)★★★★

【不純文学交遊録・過去記事】
ミステリに中国人が登場したっていいじゃない
棄てられた神
【関連サイト】
丸山天寿生存日記


posted by 【電脳呆人】不純総合研究所 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 文学・小説交遊会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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