2011年05月04日

日本に平野はなかった

3月11日に起きた東方地方太平洋沖地震を受けて、この国のインフラやエネルギー政策はどうあるべきか、今年は国土観というテーマを掲げて書物と交遊したいと思っています。
国土というと、なんだか国家主義的で嫌だと感じる方は、日本列島と言い換えても良いでしょう。そう、日本列島のグランドデザインです。

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蹴裂(けさき)という見慣れない言葉に出会いました。
版元は建築・土木関連の書籍で知られる鹿島出版会。その名から察せられる通り、大手ゼネコン鹿島建設の関連会社です。土木工学と民俗学という異色のコラボレーション。

日本は、国土の約7割が山です。より細かく見ると、平地と水面と山地の比率(本書は国土のスリーサイズと呼ぶ)が「26:4:70」で、日本は水の豊かな国であることがわかります。さらに古代の日本は平地:水面:山地が「5:25:70」で、平地がほとんどなかったというのです。
氷河時代の地球は、気候が乾燥していました。一万数千年前に地球が温暖化すると、海面が上昇するとともに、雨が多く降るようになります。日本の平地は、かつて湖沼地帯でした。
激しい雨は山崩れや土砂崩れを引き起こし、水面を埋め立てて、現在見られる沖積平野となったのです。梅雨・豪雪・地震・津波・火山の噴火など、日本の国土は天災が生んだともいえます。

日本の湖沼を平野に変えたのは、自然現象ばかりではありません。蹴裂伝説とは、クマやカニやネズミといった野生の動物、ヤマトタケルのような神話の英雄が、山や岩場を蹴り裂いて水を流し、湖沼を平地に変えたという国土創成の物語です。
蹴裂伝説は、単に過去の天災を象徴的に語り継いだだけかもしれませんが、実際に古代の人々が行った土木工事だったとも考えられます。日本の平地が湖沼地だったのは遠い地質時代の出来事ではなく、蹴裂伝説は歴史上の事件だったのです。
日本列島の地質的な成り立ちばかりでなく、古代国家の成立過程をも解き明かそうという、学問の枠を超えた壮大な試み。発想が飛躍し過ぎでは、と感じられる記述も多々ありますが、文系読者も理系読者も楽しめる掘り出し物の一冊ではないでしょうか。

(4月29日読了)★★★★★


posted by 【電脳呆人】不純総合研究所 at 17:26| Comment(0) | TrackBack(0) | 科学技術交遊会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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