2011年10月23日

世界最古のウルシの木

1984年に鳥浜貝塚(福井県若狭町)から出土したウルシの木片が、約1万2600年前の縄文時代草創期のものと判明しました。
asahi.com 2011年10月7日
10月23日、福井県立若狭歴史民俗資料館で開催中の平成23年度特別展「縄文人の業と心−自然とともにある暮らし−」において、この世界最古のウルシの木が一日限りで公開されました(館内は撮影禁止のため写真はありません)。

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福井県立若狭歴史民俗資料館(福井県小浜市)
有栖川有栖氏の小説のタイトルにもあるように、若狭国の国府があった小浜は「海のある奈良」と呼ばれています。東大寺の正倉院を思わせるデザインの建物です。

四柳嘉章氏(石川県輪島漆芸美術館館長・漆器文化財研究所所長)による記念講演会「縄文時代の漆文化」を拝聴いたしました。
漆の赤は、血の色であり、火の色であり、そして太陽の色です。触れるとかぶれることから、漆には破邪(魔除け)の意味合いもあります。漆は実用品としてではなく、呪術的に用いられたものであり、漆を用いる文化には高い精神性が認められるのです。
漆黒という言葉があるように、漆といえば黒のイメージがありますが、黒い漆器が出土するのは日本では弥生時代の後期以降です。支那・漢代の影響と考えられます。

最も呪術性が高いのが、髪に挿す竪櫛です。櫛の上部には角のような二本の突起がありますが、これはシカの角をイメージしたものです。生え変わるシカの角は再生のシンボルであり、漆の赤とともに生命の神秘を表現します。長い縄文時代を通して、二本の突起をもった基本デザインは変わりません。今回の特別展のチラシには、ニホンジカの頭骨と漆塗櫛が上下に並んでいますが、こうした意味があったんですね。
天皇が皇女を斎王として伊勢に送り出す時は、髪に別れの櫛を挿します。角を着けることで、向こうの世界の住人となるのです。鬼の頭に角があるのも、巫者(シャーマン)が祭礼で頭に角を着けるのも、ルーツは同じだといいます。

ウルシは大陸から伝来したとされてきましたが、このたびの発見で日本列島に自生していた可能性が出てきました。ただ、縄文時代の漆製品の出土例は日本海側に多く、これはウルシが大陸から伝来した傍証であると考えられることから、結論はまだ先のようです。ウルシの木の遺伝子解析もされていますが、漆器をDNA鑑定して産地を特定することは不可能だそうです。
なお、漆器のことを英語で「Japan」といいますが、「Japan」には「まがい物」という意味もあるため、近年はそのまま「Urushi」と呼ぶようになっています。

講演が始まる前は、漆製品の技術的な話だけかと思っていましたが、漆文化を通して古代人の世界観を解き明かす内容で、大変に満足いたしました。
四柳館長は、石川県穴水町にある美麻奈比古神社の宮司でもあります。呪術性に溢れた漆製品の出土は、神道的な世界観が縄文時代にまで遡ることの物証かもしれないと、管理人は妄想を逞しくするのでした。

若狭歴史民俗資料館の常設展は、鳥浜貝塚を中心とした縄文時代、若狭国造・膳臣と古墳時代、御食国と呼ばれた律令時代、武田氏が守護となった中世、小浜藩主・酒井氏の近世と、若狭国の歴史を一望できます。また「民俗」の名が示すように、若狭地方各地に残る伝統行事に関する展示が豊富なのも特徴です。
現在、NHK大河ドラマ「江〜姫たちの戦国〜」が放映中であることから、浅井三姉妹の次女・初(初代小浜藩主・京極高次の正室)にまつわる品々も展示されています。



posted by 【電脳呆人】不純総合研究所 at 23:37| Comment(0) | TrackBack(0) | 書を捨てて街へ出る会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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