2012年02月12日

チョコレートの伝説

2月14日は、キリスト教圏における聖ヴァレンタイン(ウァレンティヌス)の記念日であります。わが国では年間最大のチョコレートの消費日となっておりますが、その起源については定見がないようです(Wikipedia)。



タイトルから、最初はチョコレートの本かと思いました(笑)
表紙もゴディバを意識してか、チョコレート色ですし。

高級チョコレートとして知られるベルギーのゴディバ。その商標は、裸で馬に跨る女性像です。
イングランドの伝説によると、ゴディヴァは領主である夫の苛政を改めさせようと説得していました。度重なる妻の懇願に夫は、裸で馬に乗ってコヴェントリーの市場を端から端まで行き来したら、願いを叶えようと言います。ゴディヴァはそれを実行し、夫は約束どおり領民の税を軽くしました。
ゴディヴァが裸で馬乗りをした日、コヴェントリーの民衆は窓を閉めて見ないようにしましたが、ただ一人覗き見した仕立て屋のトムは、眼が潰れたとの挿話もあります。英語で覗き見する者を「ピーピング・トム」と呼ぶのは、この伝承に由来します。

ゴディヴァ夫人のモデルとなったゴードリヴは、11世紀のイングランドに実在した人物で、マーシアのアール(領主)だったレオフリッチの妻です。しかし「馬乗り」は全く以て史実ではありません。
実はコヴェントリーはゴードリヴ自身の所領であり、税率を決めることができたのは彼女をおいて他にいません。なにもレオフリッチに懇願する必要はなかったのです。また、コヴェントリーに民衆を苦しめるような重税はありませんでした。
裸で馬に跨るゴディヴァの伝説が生まれたのは、13世紀以降です。ゴードリヴの時代、コヴェントリーはまだ小さな農村で、伝説に語られたような街並みや市場はありませんでした。ピーピング・トムのエピソードが加わったのは、さらに後のことです。

古代史に比べてマイナーな中世史ですが、だからこそ隠された知へと至る楽しみがあります。
あの荒唐無稽な「ハーメルンの笛吹き男」は史実に基づいていましたが、ゴディヴァの馬乗りには何ひとつ根拠がなかったという事実。では信仰心篤い女領主ゴードリヴに、なぜ裸の馬乗り伝説が生まれたのか、残念ながら全くわかりません。
それでも十分楽しめました。考古学的なロマン溢れる古代史、現在の社会情勢とリアルにリンクした近代史に対し、事実と伝説とが綯い交ぜになったある種のいかがわしさが、中世史の魅力でしょうか。

(12月27日読了)★★★★★


posted by 【電脳呆人】不純総合研究所 at 23:11| Comment(0) | TrackBack(0) | 歴史・民俗交遊会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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