2012年07月09日

ケツァルコアトルスは空を飛べたか

7月6日に開幕した福井県立恐竜博物館の平成24年度特別展『翼竜の謎‐恐竜が見あげた「竜」』を観覧しました。
翼竜は恐竜と極めて近縁の生物ですが、恐竜とは区別されています。また、鳥の祖先ではありません。恐竜と同じ時代、三畳紀から白亜紀にかけて生息していました。

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【進化のミッシングリンク、ダーウィノプテルス(世界初公開)】

翼竜には大きく二つのグループがあり、原始的なランフォリンクス類(嘴口竜亜目)と進化したプテロダクティルス類(翼指竜亜目)に分けられます。ランフォリンクス類は尾が長く、頭骨には眼窩の前に穴が二つ、首には頸肋骨があります。プテロダクティルス類は尾が短く、眼窩の前の穴はひとつ、頸肋骨はありません。
ところが近年、頭や首はプテロダクティルス類、尻尾や後足はランフォリンクス類の特徴を備えた、中間的な形態の化石が発見されました。2009年、この翼竜はダーウィン生誕200年と『種の起源』出版150周年を記念して、ダーウィノプテルスと名付けられました。その名の通り、進化のミッシングリンクとなる化石です。
ダーウィノプテルスは、卵をもった化石も発見されています。卵は鳥類のような硬い殻ではなく、爬虫類と同じく軟らかい殻で覆われていました。翼竜は孵化して間もなく、空を飛べたと考えられています。

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【胎内に卵をもつダーウィノプテルス(世界初公開)】

翼竜は鳥のように後足で助走して離陸したと考えられてきましたが、最近では前肢も利用して飛び立ったとする説が唱えられています。足跡の化石からは、翼竜が四足歩行していたことが判明しました。
最大の翼竜ケツァルコアトルスは、翼開長10m、体重200kg以上もあったと推定されており、地球史上最大の飛翔生物です。これほどまでに巨大な生物が本当に空を飛べたのか疑問も投げ掛けられていますが、飛べない生物が不必要に大きな翼を持っていたとは考えにくく、ケツァルコアトルスが飛べなかった可能性は低いとのことです。
今回の特別展は、世界初公開の化石を多数揃えたことが最大の魅力。さらに翼竜化石と同じ地域から産出した魚・昆虫や植物などの化石も一緒に展示されていて、当時の環境が想起されるのも好印象でした。普段は映像展示に目もくれない私ですが、翼竜の4本足離陸を再現したCGには見入ってしまいました。ケツァルコアトルスの生体復元模型も迫力満点。満足度の高い展示でした。

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【翼開長10m、史上最大の飛翔生物ケツァルコアトルス】

7月8日は「翼竜〜中生代の空の王者」と題して、中国地質科学院地質研究所教授の呂君昌(ル・ジュンチャン)博士が講演しました。
呂博士は中国遼寧省を中心に、竜脚類・獣脚類・翼竜の研究を行っています。ダーウィノプテルスは発見当初、別々の種類の化石を組み合わせたニセモノだと疑われたそうです。講演は、特別展の見どころを踏まえた分かりやすい内容で(博物館の研究員が通訳)、聴衆からの質問にも答えてくださいました。

Q.翼竜は長いものでは何年生きたのか
A.爬虫類と同様、20年くらい生きたと考えられている。短いものは5〜6年だろう。

Q.10mもある巨大な翼竜が空を飛べたのは、当時の地球は今よりも風が強かったり重力が弱かったり等、環境に違いがあったからなのか。
A.白亜紀末期には翼竜だけでなく、恐竜も大型化していった。当時の地球は生物が大型化するのに適した環境だったといえるが、何が生物の大型化を促したのかまでは分からない。

Q.同じ爬虫類のグループから、翼竜と鳥類という全く異なる飛行形態をとる生物が生まれたのはなぜか。
A.いい質問だが、まだ分かっていない。三畳紀に翼竜が生まれ、そのずっと後に鳥類が生まれた。最近では鳥類の祖先も三畳紀まで遡るという人もいる。三畳紀は進化の大きな飛躍が起こった時代だ。

Q.中国では、なぜ多くの翼竜化石が発見されているのか。
A.遼寧省は翼竜だけでなく、数多くの恐竜の化石が発見されている。翼竜について言えば、墜落した翼竜がそのまま化石になりやすい環境だったといえる。

Q.白亜紀末期の大絶滅で、なぜ翼竜は絶滅し、鳥類は生き残ったのか。
A.翼竜は大型化したが、鳥類は小型の種類が多く、小型の生物は環境の変化に適応しやすいため生き残ったと考えられる。

Q.一年にどれくらいの翼竜が発見されているのか。
A.中国では年に5〜6種類の新種が発見されている。

呂博士、ご回答ありがとうございました。
「翼竜の謎‐恐竜が見あげた『竜』」は10月8日まで。期間中、講演会や展示解説ツアーも予定されています。




posted by 【電脳呆人】不純総合研究所 at 00:45| Comment(2) | TrackBack(0) | 書を捨てて街へ出る会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
 プロダクティルスとありますが、プテロダクティルスのことですね。
 翼竜について質問したいのですが。
 尾の短いAnurognathusは、尾が短くても、尾が長いという特徴をもつランフォリンクス亜目ですが、もしかしたらダウノプテルスのような中間的なものではないでしょうか? また、「尾のない顎」という訳例をよくみるのですが、Anuraは無尾目すなわち「カエル(のような)顎(をもつもの)」だと思うのですが、どうでしょうか?
 恐竜や翼竜などに関心があります。横浜の恐竜展を見てますます福井に行きたくなったのですが、遠くて簡単には行かれません。東京でも、「翼竜の謎」を開催していただきたく希望します。
Posted by 松田眞由美 at 2012年08月20日 22:58
松田眞由美様、いらっしゃいませ。

文中を訂正いたしました。
Posted by 管理人 at 2012年08月27日 01:32
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