2009年11月22日

あなたの部屋に死体があったら…

日本国内では、毎日のように新しい本が出版されています。
次はどんな本と交遊するのか。新たな出会い探しには、常時更新されるオンライン書店ビーケーワンの発売開始情報が便利です。
そういえば以前、奇抜なタイトルと面白そうな紹介文が添えられた作品があったことを思い出しました。
妹の部屋に見知らぬ女の死体。
動揺のあまり逃亡した妹に代わって、事件を隠蔽しようとする姉。
タイトルは『ここに死体を捨てないでください!』

誰だって動揺しますよね。自分の部屋に、誰かが勝手に死体を捨てて行ったら。これはかなり面白そうです。



ここに死体を捨てないでください!
東川篤哉 著

実際のストーリーは、出版社の紹介文から想像したのとは、ちょっと違っておりまして…

弁護士を目指す大学生の有坂春佳は、玄関から不審な物音がするのに気付きました。
もしや変質者か…いきなり扉が開かれ、見知らぬ女が飛び込んで来ました。身の危険を感じた春佳は、キッチンにあった果物ナイフを手にします。
キッチンの床に横たわる、微動だにしない女の身体。春佳は女を殺してしまったのか…動転した春佳は、アパートを飛び出しました。

シリアスな展開を期待していたところ、物語の舞台となる街の名前に、目が点。
烏賊川市…イカガワシイ、これってもしかしてバカミス
不純文學を愛する管理人、人を食ったようなバカミスは大好きであります。
こうなったら、とことん笑わせてもらおうではありませんか!

仙台へ逃亡した春佳は、姉の香織に電話して助けを求めます。
香織のアドバイスは、なんと「警察には通報するな!」。
弁護士を目指す優秀な妹を、殺人犯にしてはいけない。香織は事件を隠蔽すべく、春佳の部屋の死体をどこかに捨てようと決意します。
もちろん、死体遺棄は立派な犯罪です!
果たして有坂香織は、完全犯罪を成し遂げて、妹の危機を救えるのでしょうか?

表紙の赤いミニ・クーパーは、もちろんストーリーと関係していますよ。

(11月16日読了)


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2009年11月03日

謎、恐怖、友情…

渡辺七瀬は、作家志望の高校三年生。
七瀬が通う光陵学院高等部の桜ヶ丘寮は、三年生が卒業する春、老朽化を理由に取り壊されることになっています。桜ヶ丘寮の名残りを惜しんで、七瀬は夏休みも実家に帰らずに寮に残ることにしました。



未成年儀式
彩坂美月 著

寮に残った生徒は、七瀬を含め5人。
七瀬の幼なじみで姉御肌の、叶久美
ワンマンプレーヤーのバスケ部元キャプテン、穂積あきら
不純異性交遊に耽っていると噂の、伊吹薫
世界の終わりを待ち望んでいる少女、坂本海

光陵学院の生徒の間では、もうすぐ特別なことが起こる、いないはずの人物が寮に現れるなど、奇妙な噂が流れていました。
夏休みの初日、寮に残った彼女たちを大地震が襲います。

おなじく光陵学院に通う、果原実月日向の双子の姉妹。
妹の日向は、いつも女の子らしい姉の実月に嫉妬し、殺意を抱いていました。
今日こそ姉を殺そうとチャンスをうかがっていたそのとき、数学教師の神崎譲が女性事務職員を殺害する場面に遭遇します。
犯行現場を目撃した果原姉妹の口を封じようと、追いかけてきた神崎。姉妹が駆け込んだのは、桜ヶ丘寮でした。

大地震の恐怖に打ち震える七瀬たちに、正気を失った神崎が襲い掛かります。
さらに地震で緩んだ地盤に雨が降り注ぎ、桜ヶ丘寮の背後で土砂崩れが発生。
もともと桜ヶ丘寮は携帯電話が圏外のうえに、地震の影響で電話回線もつながりません。絶体絶命の危機を、彼女たちは乗り切ることができるのか…

この先、未読の方はご注意ください。
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2009年10月27日

出雲は、出雲だけでない(後編)



QED出雲神伝説

この先、未読の方はご注意ください。

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2009年10月26日

出雲は、出雲だけでない(前編)

因幡の素兎、八岐大蛇(ヤマタノオロチ)など、記紀に描かれた神話の多くは出雲が舞台となっています。
しかし『出雲国風土記』では、八岐大蛇を退治した英雄・素戔嗚尊(スサノオノミコト)が、あまり活躍しません。また山陰地方には、古代の王権の存在を示す遺跡がありませんでした。そのため出雲神話は、ヤマト朝廷が王威を示すための創作に過ぎないと考えられてきたのです。
ところが荒神谷遺跡や加茂岩倉遺跡の発見によって、出雲にも強大な勢力があったことが明らかになってきました。



QED出雲神伝説
高田崇史 著

『QED』シリーズ第16弾は、出雲神話の謎に迫ります。

奈良県桜井市の初瀬川沿いにあるリゾートマンション「八雲」の一室で、女性が首を斬られて死亡していました。凶器は、部屋に飾ってあった出雲刀と呼ばれる古風な太刀。部屋は密室状態で、壁には奇妙な文様が…
マンションの所有者は島根県の財団職員・野川達夫で、被害者は彼と交際していた八刀良子でした。警察から文様を見せられた野川は、かつて存在した忍者の集団「出雲神流」のものだと言います。
実は一週間ほど前に起きたひき逃げ事件の現場にも、同じような文様が残されていました。これは忍者の末裔を名乗る、闇の組織の犯行声明なのでしょうか。あるいは、自分たちの秘密を探ろうとする者に対する警告か…

事件の取材を進めていたジャーナリストの小松崎良平は、出雲神流とは何かを知るべく、友人の桑原崇に電話しました。神社仏閣めぐりと墓参りが好きなことから、タタルとあだ名される変な薬剤師です。
いつもなら殺人事件に興味を示さないタタルですが、事件の鍵が「出雲」にも関わらず現場が「奈良」だと聞いて、自ら事件を調べたいから奈良へ行こうと言い出します。
タタルと小松崎は京都駅で棚旗奈々と合流し、まずは京都府亀岡市にある出雲大神宮を訪れました。ここは元出雲と呼ばれ、島根県の出雲大社よりも古い由緒を誇ります。そして事件の発生した、奈良県の三輪山周辺もまた、かつては出雲と呼ばれていたのです。
出雲とは、もともと出雲(島根県)にあったのか。それとも…

(つづく)

講談社BOOK倶楽部『QED』特集

【不純文學交遊録・過去記事】
旧暦10月・出雲は神在月
太陽の道
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2009年10月15日

ちはやふる…

お正月のかるたでおなじみ、藤原定家が選んだ小倉百人一首。
競技かるたを描いた『ちはやふる』が、第2回マンガ大賞に選ばれことで、興味をもった方もいらっしゃるでしょう。
私の小学校時代には毎年かるた大会があって、意味のわからないまま百枚すべてを覚えました。菅家が菅原道真で、鎌倉右大臣が源実朝と、歌の作者と歴史との関わりを知ってから、百人一首の世界を面白く感じるようになりました。



百人一首の歴史学
関幸彦 著

小倉百人一首には、六歌仙・三十六歌仙と呼ばれる和歌の名人が、なぜか全員そろっていません。一方で猿丸太夫のように、実在の疑わしい歌人が含まれています。
また、歌人の代表作とは呼べない和歌(駄作?)も選ばれています。定家自身の歌にしても「来ぬ人をまつほの浦の夕なぎに焼くや藻塩の身もこがれつつ」よりは、三夕の歌のひとつである「見渡せば花も紅葉もなかりけり浦の苫屋の秋の夕暮れ」こそが代表作でしょう。
そのため百人一首の成立過程や、歌の配列に謎を見出す人が少なくありません。

1.天智天皇、2.持統天皇…99.後鳥羽院、100.順徳院
百人一首の特徴は、天皇で始まり天皇で終わることだと、関幸彦氏は指摘します。
定家が生きたのは、源平の争乱から承久の乱に至る、貴族から武家へと政権が移った激動の時代でした。天智・持統父子は、平安京を築いた桓武天皇の皇統の始祖にあたります。そして後鳥羽・順徳父子は、承久の乱で鎌倉幕府に敗北しました。
百人一首は、定家が過ぎ去りし平安王朝へ捧げた、挽歌だったのかもしれません。

百人一首の歌人はほとんどが宮廷官人ですが、なかでも受領(国司)クラスの中下級貴族が多くを占めます。中下級貴族にとって、和歌や漢詩の教養は人生の浮沈を左右するものでした。
平安時代には紫式部清少納言和泉式部ら女流作家が活躍しました。彼女たちもまた受領クラスの出身です。紫式部の父である藤原為時が、漢詩の才能によって越前守の地位を手に入れたというエピソードは、よく知られています。

百首の歌には、百人の歌人の物語があります。
本書では紙幅の都合上、残念ながらすべて歌人の人生が語られているわけではありませんが、わずか三十一文字から当時の社会情勢が浮かび上がってきます。

(10月12日読了)
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2009年09月20日

あなたが王になれるとしたら…

かつて商店街だった廃墟のなかに佇む、古今東西のホラーアイテムを集めた玩具館「三隣亡」。経営するのは年齢不詳の美女・美珠と、ゾンビマニアである兄の
前作『人魚と提琴』から一年余り、石神茉莉氏の玩具館奇譚がシリーズ化されました!



謝肉祭の王
石神茉莉 著

悪魔メフィストフェレスと契約し、魂を渡すことで己の欲望を満たそうとした、ファウスト博士の伝説。ゲーテ、手塚治虫など、多くの作家を魅了し続けてきました。
本作も、その系譜に位置する物語でしょう。一年間、王となれる仮面があったら、あなたは被りますか?

デビュー当初は女子高生作家として注目を集めたものの、ヒット作に恵まれずにいるシングルマザーの林千晶。友人の作家・矢川ルイジから譲り受けた謎の仮面を持って、三隣亡を訪れます。
「この仮面を被ると一年間、王となれる。だが翌年の謝肉祭の日には、処刑される運命が待っている」
仮面を千晶に譲った直後、ルイジは失踪しました。寡作だったルイジが、にわかに流行作家となり、その後失踪したのは、この仮面のせいなのか。
千晶は、恐る恐る仮面を被ります。

これまでになく筆がはかどる千晶。作品は映画化され、千晶自身もマスコミへの露出が増えました。
しかし、映画で主役を演じた新進女優が、物語のラストシーンにシンクロしたかのような投身自殺。さらに連載ホラー小説のモデルにした家族が、物語の進行を後追いするように不幸に見舞われます。
千晶の紡ぎ出した恐怖の物語が、次々と現実化してゆく…作家としての成功と引き換えに、最後は千晶自身の命が奪われてしまうのでしょうか。
美珠は、仮面の呪いを解くことができるのか…

本作最大の謎は、いつまでも歳をとらない「三隣亡」のオーナー・美珠です。
果たして彼女は、この世の者なのか…

(9月7日読了)

【不純文學交遊録・過去記事】
人魚の歌は死の調べ
posted by 【電脳呆人】不純総合研究所 at 20:45| Comment(0) | TrackBack(0) | 文学・小説交遊会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年08月16日

チャップリンは知っていた(後編)

では最新作『六つの手掛り』の探偵役は…
黒いスーツにソフト帽を被り、ちょび髭を生やした小太りの男。その容姿を一言で表すなら、太ったチャップリン。元マジシャンで、大道芸プロモーターの林茶父(はやし・さぶ)です(そういえば、茶風林という役者さんもいましたね)。
探偵役はマジックが得意とくれば、メインとなるのはやはり物理トリックです。



六つの手掛り
乾くるみ 著

収録されているのは次の6編。
・六つの玉
乗っていたタクシーが雪道で事故に遭い、一晩の宿をとった林茶父たち。
旅芸人の青年は、なぜ死んだのか?
・五つのプレゼント
女子大生にゼミ生から贈られたプレゼントの中に、爆発物が含まれていた。
誰がどうやって送りつけたのか?
・四枚のカード
超能力マジックを披露したカナダ人教授が殺害された。
無くなったESPカードが示す犯人とは?
・三通の手紙
誤って送られてきた沖縄旅行の写真。
鉄壁と思われた、留守番電話のアリバイが崩れる?
・二枚舌の掛け軸
富豪の邸宅で開かれたパーティで、お披露目された二枚の掛け軸。
悪戯好きの富豪を殺したのは誰か?
・一巻の終わり
人気作家の自宅に集まった評論家・編集者たち。
毒舌ミステリ評論家殺害の擬装は、なぜ見破られたのか?

面白い作品が揃っていますが、『四枚のカード』は犯行動機が曖昧なのが不満でした。文系ミステリ愛好家にとって重要なのは、物理的なトリックの切れよりも、カタルシスのある結末ですので。
最後の『一巻の終わり』は書き下ろしで、本の作りまでオチに合わせてあります。文字通り、一巻の終わりに相応しい演出です(666ページで終わる『バトル・ロワイアル』を思い出しました)。

本書はミステリ好きならずとも、どなたでも楽しめる一冊です。
乾くるみ氏に興味をもたれた方は、稀代の怪作Jの神話』にも挑戦してみては?

(8月14日読了)

【不純文學交遊録・過去記事】
チャップリンは知っていた(前編)
posted by 【電脳呆人】不純総合研究所 at 09:39| Comment(0) | TrackBack(0) | 文学・小説交遊会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年08月15日

チャップリンは知っていた(前編)

80年代のトレンディドラマを思わせる物語が、最後の2行で驚愕の真相に至る…『イニシエーション・ラブ』が評判となった、乾くるみ氏。
今回は乾氏の短編集『六つの手掛り』との交遊ですが…



六つの手掛り

トンデモ不純ミステリ愛好家としては、やはりメフィスト賞を受賞したデビュー作『Jの神話』を忘れることはできません。
新作を読む前のイニシエーション(通過儀礼)として、振り返っておきましょう。



Jの神話

妊娠していた女子高生が失血死し胎児が消えた、塔から投身自殺した少女…名門全寮制女子校で相次ぐ不可解な死。カバー裏の紹介文から、既に黒々とした闇が漂っています。
『Jの神話』を読み終えて思い出したのは、瀬名秀明氏の『パラサイト・イブ』でした。

高度な科学的知識の裏付けで、評価の高い『パラサイト・イヴ』。ただ、何十億年もの間生きてきたミトコンドリアが、なぜ現代の一青年科学者に狙いを定めたのか、あまりにも唐突で腑に落ちない読後感でした。その理由なき唐突さが、ホラー小説らしさとも言えますが。
ホラー小説では、山中に殺人鬼が現れたり、何気なく観たビデオテープが死を招いたりと、不特定の人を何の因果もなくパニックが襲う作品が多くあります。それに対して、特定の場所や人に祟るのが「怪談」でしょうか。

一方の『Jの神話』は、科学的にはトンデモ全開ですが、なぜこんな怪(珍)事件が起こったのかという因果関係は、『パラサイト・イヴ』よりもずっとスッキリしています。そこがホラーとミステリの違いでしょう。
『パラサイト・イヴ』でのミトコンドリアにあたるのが、『Jの神話』の“J”です。こう書けば、私が両作品に共通性があるという意図がお解かりになるかと思います。ネタバレになるので“J”の正体は明かせませんが。
女性視点の『パラサイト・イヴ』と言ったところでしょうか。ちなみに乾くるみ氏は、男性でございます。

小森健太朗氏は「『Jの神話』は不当に評価されており、文庫版になるときは是非とも解説を書きたい」と発言し、実際に書いています。

(つづく)

【不純文學交遊録・過去記事】
名探偵「星の君」
posted by 【電脳呆人】不純総合研究所 at 20:43| Comment(0) | TrackBack(0) | 文学・小説交遊会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年08月11日

本格ミステリとの出会い(後編)

ポルトガルの首都・リスボン。
水泳のオリンピック金メダリストだった女性が、拳銃で自殺。ほぼ同じ時刻に、2キロ離れた高級アパートで、大学教授が射殺されました。2人の心臓を貫いた弾丸は、ライフルマークが完全に一致。犯人は、元水泳選手が自殺した銃を使って、大学教授を殺害したはずです。
事件当日、通りは聖アントニオ祭で混雑しており、自動車での移動は不可能。しかし、歩いて移動したのでは、死亡推定時刻に間に合いません。これは聖アントニオの奇跡なのか…
(表題作『溺れる人魚』)



溺れる人魚

『溺れる人魚』は全くの新刊ではなく、2006年に原書房から刊行されたハードカバー版をノベルス化したものです。
書き下ろしは表題作のみで、他の3篇は既出の作品となっています。
語り手(いわゆるワトスン役)は、ハインリッヒ・フォン・レーンドルフ・シュタインオルト(長過ぎる!)。サンフランシスコ在住、ポーランド生まれのドイツ人で、職業は科学ジャーナリスト。彼の語りに登場するキヨシという名の日本人が、島田作品でおなじみの名探偵・御手洗潔です。

『人魚兵器』と『耳の光る児』は、島田氏が長年書きたかった世界史的解釈(講談社メールマガジン『ミステリーの館』より)です。前者はナチス・ドイツ、後者はソビエト共産党の陰謀を、御手洗潔が推理します。
もちろん完全なフィクションでしょうが、ノンフィクション作品も手掛ける島田氏の世界史的解釈となると、つい信じそうになってしまいます。いくらナチスでも、ここまで残酷なことをしただろうか?、と思うほどに暗澹たる読後感です。
ちなみに、この2作品には島田氏が愛するポルシェ(356とカイエン)が、脇役として登場します(初出は自動車評論集である『名車交遊録』)。

最後の『海と毒薬』は、アンデルセンの人魚姫をモチーフにしてはいますが、ファンサービスで書いた「自作自演の同人誌」的な作品ですね…

(7月30日読了)

【不純文學交遊録・過去記事】
本格ミステリとの出会い(前編)
posted by 【電脳呆人】不純総合研究所 at 22:22| Comment(0) | TrackBack(0) | 文学・小説交遊会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年08月10日

本格ミステリとの出会い(前編)

今でこそ、新本格にカテゴライズされるミステリや、メフィスト賞作品を愛読しておりますが…実は私、推理小説って嫌いだったんです。
小道具を使って鍵を掛けて密室にしたり、時刻表でアリバイを見破ったり…そんなものはクイズであって、読み物じゃねえよ!、という具合で。



溺れる人魚

島田荘司 著

そんな私をミステリの世界に導いたのが、島田荘司氏でした。
本作は、講談社ノベルス7月のラインナップです。作品の紹介に入る前に、ここで私とミステリとの出会いを…
私が最初に読んだ島田氏の文章は、小説ではありません。社会批評や自動車評論でした。ミステリに対する「人間が書けていない」との批判に反論していた島田氏。そんな彼の描く「本格ミステリ」とはいかなる文学なのか、興味をもったのです。
事件の解決を通して世の中の不正を糺す「社会派推理小説」が全盛だった時代、島田氏は純粋に謎解きの魅力を追及する「本格ミステリ」の復権を唱えます。

島田氏は、推理小説とミステリの違いを、次のように説明しています。
公演中のプリマドンナが殺されました。当然ながら公演は中止となり、警察がやってきて捜査が始まります。これは「本格推理」の展開です。
ところが死んだはずのプリマドンナが、再び演技を始めたとしたら…
幽霊かと思いきや、実は双子の姉妹がいた。これが「本格ミステリ」です。本当に超常現象だったら「ホラー小説」になります。
本格ミステリは、事件が合理的・論理的に終結するだけでなく、詩的で幻想的な謎が必要なのです。

「本格ミステリは推理小説ではなく、幻想小説である」
この主張に賛同した私は、2時間ドラマ的な推理小説・警察小説とは違う、奇想に満ちたミステリの世界へと足を踏み入れました。ちなみに最初に読んだ新本格ムーブメントの作家は、綾辻行人氏ではなく毀誉褒貶の激しい麻耶雄高氏(『翼ある闇』)でしたが、全く抵抗なく受け容れることができました。
作り話よりもノンフィクションが好きで、「事実は小説よりも奇なり」を座右の銘とする私にとって、小説に求めるものは「日常の延長」ではありません。作家の奇想が紡ぎ出す「異世界との遭遇」であり「非日常的な体験」なのです。

(つづく)
posted by 【電脳呆人】不純総合研究所 at 23:59| Comment(5) | TrackBack(0) | 文学・小説交遊会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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