2009年03月15日

学園は事件の宝庫

少年少女が探偵役として活躍する学園ミステリは、ミステリ小説の一大ジャンルといって良いでしょう。
常識的に考えて、働いている大人が、呑気に探偵ごっこなんて出来ません。
警察庁刑事局長を兄に持ち、旅先で事件に首を突っ込むルポライターなんて、実際にはいませんよね(笑)



学び舎は血を招く

本作は『小説現代メフィスト』に掲載された、学園ミステリを集めた一冊です。
収録された作品は6編。
『メフィスト学園1』というからには、第2弾もあるのかな?

竹本健治 『世界征服同好会』
30年前の先輩たちが立ち上げた、同好会の正体とは…

楠木誠一郎 『殺人学園祭』
名門女子校の学園祭で、屋上から生徒が転落。自殺か?他殺か?

古野まほろ 『敲翼同惜少年春(センチメンタル・レヴォリューション)』
全共闘時代を思わせる舞台設定。やたらと漢字にルビを振った独特のアクの強い文体は、正直、読む気になれません…

福田栄一 『闇に潜みし獣』
夜の校舎に忍び込んだ、男女6人の高校生。その理由とは…動機も結末も(学園ミステリらしからぬ)非常にダークな作品です。

日日日 『かものはし』
日日日と書いて「あきら」と読みます。ミステリというよりは、ホラー色が強いです。

門井慶喜 『パラドックス実践』
大学でプラトンを専攻した教師が赴任したのは、その名も雄弁学園。初日から不穏な空気が…

私のお気に入りは、竹本健治氏の『世界征服同好会』。
本の山に占領された部室で、思想だの芸術だの、浮世離れしたことをくっちゃべっているだけの「汎虚学研究会」に惹かれます。こういうことって、学生時代しかできませんね。犯罪ではなく「日常の謎」を解くのも、学園ものらしくていい感じです。
異色の作品ながら意外と楽しめたのは、門井慶喜氏の『パラドックス実践』。
事件は全く起こりませんが、ロジックで読ませる小説をミステリと呼ぶなら、これも立派なミステリでしょう。

(3月10日読了)

【不純文學交遊録・過去記事】
メフィスト賞の傾向と対策


posted by 【電脳呆人】不純総合研究所 at 19:59| Comment(0) | TrackBack(0) | 文学・小説交遊会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年03月09日

東大教授は小説家

私たちの日常生活の隅々にまで行き渡ったコンピュータ。
コンピュータが人類社会にもたらしたインパクトについて、文系・理系の垣根を超えて思索を続けている研究者が西垣通氏です。
西垣氏は理論のみならず、よりリアルな人間の姿を描こうと小説作品も手掛けています。彼の小説は研究者の余技ではなく、本業の一環なのです。



コズミック・マインド

朽木庸三は、妻に先立たれて独り暮らしの、50代の元ソフトウェア開発エンジニア。
庸三は、大手電機メーカーの子会社から、大口ユーザーである倉光銀行に長期出向し、オンラインシステムの開発保守を担当していました。
しかし行内での対立から解雇され、現在は小さなソフトウェア会社の技術アドバイザーという閑職に就いています。

老舗地方銀行である倉光銀行は、大手都市銀行の住菱銀行との合併が決まっていました。
両行のシステム統合プロジェクトが発足しましたが、作業が思うように進みません。どうやら倉光銀行側のシステムに、表に出せない問題があるようです。
住菱銀行の調査部からサブリーダーとして派遣された堺朱実は、倉光銀行が裏社会を相手にした「隠し口座」ビジネスに手を染めていると直観します。

最初は「サラリーマンの人間関係を描いたビジネス小説か。つまんないな…」と思ったのですが、隠し口座の話やコンピュータ・アートを手掛ける謎の前衛芸術家が出てきたあたりから、面白みが出てきました。
タイトルの『コズミック・マインド』には、西垣氏の思い描く「コンピュータ観」が滲み出ています。

本書は、西垣氏の研究者としての著作を読んだことがない人にも、手に取りやすい作品でしょう。
ただ、私が小説に求めるものは「非日常性」なので、異国を舞台にした過去の作品の方が好みです。

デジタル・ナルシス(東京大学 情報学環・学際情報学府 西垣研究室)

(3月8日読了)

【不純文學交遊録・過去記事】
情報と生命と聖性と
日本のメディアは“杉林”
posted by 【電脳呆人】不純総合研究所 at 17:08| Comment(0) | TrackBack(0) | 文学・小説交遊会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年02月23日

メフィスト賞の傾向と対策

メフィスト賞は、数々の人気作家・異色作家を生み出してきました。
第一回受賞者で理系作家の代表格である森博嗣氏、小説の常識を逸脱した奇抜な作風の清涼院流水氏、セカイ系と呼ばれる西尾維新氏…
純文学系の賞(三島由紀夫賞)を獲得した舞城王太郎氏や佐藤友哉氏も、メフィスト賞の出身です。

講談社ノベルス『忍び寄る闇の奇譚』は、メフィスト道場と銘打って、3つのテーマで人気作家が競作しています。
カバー折り返しにはメフィスト賞の応募要項も書かれていて、メフィスト賞を目指す方への「傾向と対策」になるかも?



忍び寄る闇の奇譚

Round1・ボクのSF
はやみねかおる 『少年探偵WHO 透明人間事件』
コンビニエンスストアに現れた透明人間による強盗事件。警察とWHO少年は、とある玩具メーカーに乗り込みます。
初野晴 『トワイライト・ミュージアム』
大伯父の遺産である奇妙な博物館を相続した少年が、脳死になった少女を救出する物語。

Round2・フェティシズム・ホラー
西澤保彦 『シュガー・エンドレス』
甘味にとりつかれた男の話。序盤の文章がまどろっこしいのが難点。
真梨幸子 『ネイルアート』
インターネット掲示板の管理人を任された女性ライターが、ネット上の壮絶な遣り取りに翻弄されます。
いずれの結末も、ホラーとは恐怖ではなく「ホラ話」なんだと納得します(笑)

Round3・都市伝説
村崎友 『紅い壁』
夏休みの合宿所で起きた、女子高校生の変死事件。美術教師の失踪は、彼女の呪いなのか…
北山猛邦 『恋煩い』
少女たちのあいだで話題の、恋の願いを叶えるおまじない。それを実行してみると…

今回のお気に入りは、北山猛邦氏の作品でした。
彼は「物理の北山」の異名をとるほど、機械的な物理トリックを得意としています。物理トリックに特化した作品は、小説を読むというよりは問題を解いているようで、余り好きになれないのですが、北山氏の『『クロック城』殺人事件』はゴシックな雰囲気にあふれていて、満足できる読後感でした。『恋煩い』は、彼お得意の物理トリックではなく、意外なストーリー展開で読ませてくれます。
はやみねかおる氏の『少年探偵WHO』も、ミステリならではの仕掛けが充実していて楽しめました。

(2月22日読了)
posted by 【電脳呆人】不純総合研究所 at 20:30| Comment(0) | TrackBack(1) | 文学・小説交遊会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年12月08日

本当にキケンな源氏物語

今年(2008年)は日本文学史上の最高峰、源氏物語が書かれて1000年になります。
源氏物語を書いた紫式部は、父の藤原為時が越前守に任官したのに伴い、少女時代の2年間を越前国で過ごしました。福井県の越前市武生公会堂記念館では、源氏物語千年紀にあわせた企画展が開催され、当時の越前国府の面影を感じることができました(国府の正確な位置は、まだ判っていません)。
紫式部の紫は物語に登場する「紫の上」に、式部は父・為時の官職「式部丞」に由来します。為時も文人として名高く、時の一条天皇に詩を奉じて越前守の地位を手に入れたエピソードは、あまりにも有名です。



知られざる王朝物語の発見 神野藤昭夫 著

『源氏物語』をはじめ、平安時代には『竹取物語』『伊勢物語』など数多くの王朝物語が生まれました。
これらの著名な作品以外にも、散逸して現代に伝わらなかった「知られざる物語」群があったと考えられます。多くの作品が失われた理由には、時間の経過や作品の価値などが考えられますが、京の都を火の海にした応仁の乱の影響が最も大きいようです。

鎌倉時代初期に書かれた王朝文学論である『無名草子』は、紫式部は『源氏物語』を作った、清少納言は『枕草子』を書いたと表記しています。フィクションとノンフィクションを明確に区別しているのです。
ちなみに紫式部には、作り話を書いて世を惑わせたため、地獄に堕ちたとの言い伝えがあります。さらには地獄の貴公子・小野篁が、閻魔大王にとりなして地獄送りを免れたとの伝説も…

『源氏物語』の主人公・光源氏は、天皇の皇子として生まれましたが、光が皇位を継げば国が乱れるとの予言から、源の姓を賜り臣籍降下しました。
光源氏と天皇の后(藤壺)との密通によって生まれた子は、のちに天皇(冷泉帝)として即位します。そして光源氏自身は、准太上天皇の地位に登りつめました。
王権簒奪という大胆な発想を、紫式部はどこから得たのか。「日本紀の御局」と呼ばれた紫式部は、ダイナミックな王朝交替を描く支那の歴史書にも通じていたのではないかと、神野藤昭夫氏は考えます。
作中(第二十五帖「蛍」)で、紫式部は光源氏にこう言わせています。
「日本紀などはかたそばぞかし」(日本書紀なんて歴史の一面でしかない)

王朝文学の素養がない私に、本書の内容を上手く伝えることはできませんが、平安朝の人々の豊潤な想像力の一端に触れることができた気がします。

(12月7日読了)

関連サイト:源氏物語千年紀委員会
posted by 【電脳呆人】不純総合研究所 at 01:21| Comment(2) | TrackBack(0) | 文学・小説交遊会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年11月30日

ケータイ小説はヤンキー文学

2007年の書籍ベストセラーは、ケータイ小説が文芸部門の上位を独占しました。
最近では文壇の大御所・瀬戸内寂聴氏(御年86歳)が、ケータイ小説を書いたことで話題になりました。ちなみにペンネームはぱーぷる(紫式部に由来)なんだとか…

ケータイ小説の多くは、作者の体験した「実話」であることを売りにしていますが、それにしては多くのケータイ小説のプロットが似通っていたり、ありえない唐突な展開が連続したりします。
ケータイ小説に頻出するエピソードである援助交際、レイプ、妊娠、薬物、不治の病、自殺、そして真実の愛。これらを本田透氏は「ケータイ小説に描かれる7つの大罪」と呼んでいます。

「あんなものは文学じゃない!」と非難されるケータイ小説。
しかしケータイ小説に興味はなくとも、ケータイ小説が売れる社会とはなんなのか、考えてみることは面白いでしょう。



ケータイ小説的。 速水健朗 著

ケータイ小説を論じた本は数多く出ていますが、本書が興味深いのは、ケータイ小説を「ファスト風土化した郊外が舞台で、郊外に住む少女を主人公にした、郊外に住む少女を主な購買層とする、郊外型ショッピングモールの書店で売られる文学」と定義していることです。

ケータイ小説に描かれる、不幸なエピソードのインフレーション。その原型は、1990年代の少女向け雑誌の読者投稿ページにあるようです。特にレディースと呼ばれる少女暴走族の雑誌『ティーンズロード』との類似を、著者は発見します。ケータイ小説とは、新しいヤンキー文化なのです。
ケータイ小説の特徴として、情景描写がほとんどない、そして地名・学校名・商品名などの固有名詞がほとんど登場しないことが挙げられます。そんななか登場する数少ない固有名詞が、歌手の浜崎あゆみです。ケータイ小説の作者と読者は、浜崎あゆみの楽曲を通して世界を共有しているのです。そして浜崎自身、自らの少女時代のファッションが、ヤンキーの流儀に属していたことを明かしています。

ケータイ小説に描かれる暴力が、携帯電話の普及とともにもたらされたことを本書は指摘しています。いつでもどこでもつながる携帯電話は、いとも簡単に相手を束縛する凶器へと変貌します。
文章が類型的と揶揄されるケータイ小説において、携帯電話が引き起こす暴力(いわゆるデートDV)の描写は、非常にリアルです。

ケータイ小説は、浜崎あゆみの歌詞の強い影響下にありますが、多くの論者がそれに気付かないのは、ミリオンセラー曲といえども一部の人々のものでしかないことの現れです(浜崎あゆみがどんな曲を歌っているのか、私も知りません)。
華々しくメディアが採り上げるオタク文化に対し、ケータイ小説・浜崎あゆみといったヤンキー文化は、オタク文化以上の市場規模を持ちながらも批評の対象となりません。そんな「被差別文化」にスポットを当てることが、現代社会を直視する批評的行為であると、著者・速水健朗氏は結んでいます。

(11月24日読了)
posted by 【電脳呆人】不純総合研究所 at 13:42| Comment(2) | TrackBack(3) | 文学・小説交遊会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年11月09日

ふたりの小室サン

11月4日、音楽プロデューサーの小室哲哉氏が、詐欺の容疑で大阪地検特捜部に逮捕されました。
小室プロデューサーは、芦屋市の会社社長に806曲の著作権を10億円で売却する仮契約を結びましたが、実際には著作権は音楽出版社に譲渡されており、小室プロデューサーに売買する権利はなかったのです。
前妻が差し押さえている著作権を解除するためとして、会社社長に先払いさせた5億円は、借金の返済に充てられていました。

1996〜1997年には2年連続で高額納税者番付の4位にランクインするなど、1990年代に絶頂を極めた小室プロデューサーでしたが、近年は事業の失敗で多額の借金を抱えていたようです。
しかし私は、1990年代の彼の音楽には全く馴染みがありません。
私の知る小室哲哉とは、1980年代のTM NETWORKでの活動です(ライブを観たこともあります)。
1984年にデビューしたTM NETWORK。その楽曲の多くで作詞を手がけていたのが、シンガーソングライターで小説家の小室みつ子氏でした。なおTM NETWORK初期の作品では、西門加里(カーリー・サイモンに由来)名義になっています。
ちなみに小室哲哉氏と小室みつ子氏は、親戚ではありません。
miccos.com 小室みつ子 personal site
※「最近何してんの?」で、小室プロデューサー逮捕についてのコメントが読めます。



Actually, As Always 小室みつ子

TM NETWORKの作詞家ということで手に取った小室みつ子氏の本。なかでも面白かったのは、集英社文庫コバルトシリーズから出ていた「久里子シリーズ」でした。
推理作家アガサ・クリスティみたいな名前の女子高生、阿笠久里子(名付け親は不条理SF作家の叔父)。ドジだけどどこか憎めない彼女が、身のまわりで起こるトラブルを探偵気取りで解決します。
久里子シリーズは『シンデレラは待てない』、『スノウ・ホワイトが危ない』、『ピノキオはあきらめない』、『マーメイドは忘れない』、『ハートビートは止まらない』の5冊。表紙&本文イラストも小室みつ子氏が描いています。
5作目が出たのはTM NETWORK全盛期の1988年。音楽の仕事が多忙になったせいか、残念ながら久里子シリーズの続編は出なくなりました。
小室みつ子氏の小説作品は、大原まり子岬兄悟両氏(この2人は夫婦です)による爆笑SFアンソロジー『SFバカ本』シリーズにも収録されています。



笑壷 小室みつ子 他
posted by 【電脳呆人】不純総合研究所 at 00:57| Comment(12) | TrackBack(1) | 文学・小説交遊会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年10月27日

心霊探偵コナン

名探偵シャーロック・ホームズの生みの親、アーサー・コナン・ドイル卿。
彼はホームズのように科学的・合理的な人物かと思いきや、実は高名な心霊主義者でした。少女が撮った妖精の写真の真偽をめぐって騒動となったコティングリー妖精事件で、ドイルは写真が本物だと信じていたのです。
ヴィクトリア朝(1837年〜1901年)のイギリスは、第一回万国博覧会の開催やダーウィンによる進化論の発表など科学技術が進展する一方で、心霊主義がブームとなっていました。

さて、今回の交遊は・・・
20世紀初頭のロンドンとニューヨークを舞台に、心霊主義者コナン・ドイルが大活躍する物語です。他に登場人物は、脱出王ハリィ・フーディーニ、作家のハワード・フィリップス・ラヴクラフト、ブードゥの女王マリー・ラヴォー、魔術師アイレスター・クロウリーなど。オカルティズムに詳しい人なら涎を垂らさんばかりの豪華キャストです。



神秘結社アルカーヌム トマス・ウィーラー 著

1919年、ロンドン。
大英博物館から駆け出してきた大柄な老人が、T型フォードに跳ねられて死亡しました。老人の名はコンスタンティン・デュヴァル。各国の王侯にも影響力を及ぼす偉大なる神秘主義者です。彼は秘密結社「アルカーヌム」を組織しており、コナン・ドイルもその一員でした。
デュヴァルの死に不審を抱いたドイルは、大英博物館に乗り込みます。博物館の奥にあるデュヴァルの隠し部屋、そこにはありとあらゆるオカルトの秘宝が収められていました。しかし一ヶ所、ガラスが割られている場所があります。

無くなっていたのは旧約聖書の偽典「エノクの書」でした。敵の目的は何なのか。エノクの書の秘密を探るべく、ドイルはニューヨークへ渡ります。
ドイルが訪ねたのは、若き悪魔学者にして作家のH.P.ラヴクラフト。やはりアルカーヌムのメンバーです。しかしラヴクラフトは、ニューヨークを震撼させている連続猟奇殺人事件の容疑者として囚われの身となっていました。
ドイルは無事ラヴクラフトを救出できるのか。
デュヴァルからエノクの書を奪ったのは何者か。
そしてエノクの書に隠された「神のあやまち」とは…
実在の人物たちが、ニューヨークを舞台に決死の冒険を繰り広げます。怒涛のアクションと精緻な時代考証に彩られた、伝奇ホラー活劇です。

本作は、訳者あとがきを先に読むことをオススメします。
冒頭でT型フォードが登場しますが、ドライバーは急ブレーキを掛けようとして3つのペダルを踏んでいます。なんだかおかしな描写のようですが、訳者によるとT型フォードは3つのペダルを同時に踏むことで最大の制動力が得られるのです。
登場人物と時代背景を理解することで、本作をより一層楽しむことができます。

著者トマス・ウィーラーは、ハリウッドの人気脚本家。これが小説デビュー作で、映画化が決定しています。
登場人物の名前が覚えにくいとか情景を想像しにくいとかで海外作品を敬遠していた人(私のこと)でも、すぐに引き込まれる魅力的な作品です。
秋の夜長のお供にどうぞ。でも夢見が悪いかもしれません…(笑)

(10月27日読了)
posted by 【電脳呆人】不純総合研究所 at 23:41| Comment(4) | TrackBack(1) | 文学・小説交遊会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年10月14日

昔話は「心のアリバイ」

「昔、昔、あるところに…」
昔話には、子供にはとても聞かせられない恐ろしい背景が隠されています。
(例えばカチカチ山には、子供向けバージョンと残酷バージョンがあります)

歴史上の人物や事件に意表をついた新解釈を加えたミステリ(バカミス?)を多く発表している鯨統一郎氏には、女子大生がグリム童話になぞらえて難事件のアリバイ崩しを展開する『九つの殺人メルヘン』という作品がありました。続編は日本の昔話です。



浦島太郎の真相 鯨統一郎 著

日本酒をワイングラスに注いで出す嫌味なバー「森へ抜ける道」。
常連客は、元刑事で探偵事務所を営む工藤とフリーライターの山内。
それにバーのマスター・島を加えた3人は、42歳の厄年トリオ(ただし前作での年齢)。
そして週に一度現れて、ひとりでグラスを傾けるのは大学でメルヘンを研究している清楚なお嬢様、桜川東子(本作では大学院生)。

工藤が抱える不可解な事件。それらはいずれも容疑者に犯行へと至る動機が見当たりません。桜川東子は犯人が秘める「心のアリバイ」を崩します。
アリバイ崩しのヒントとなるのは、いつも日本の昔話。
「浦島太郎」「桃太郎」「カチカチ山」「さるかに合戦」「一寸法師」「舌切り雀」「こぶとり爺」「花咲爺」の8つ物語に隠された、登場人物の心の闇を暴きます。
ウソだとわかっていながら、ついつい信じてしまいたくなる鯨統一郎氏の新解釈です。

厄年トリオの酒の肴は、いつも懐かしの映画やアニメなど文字通り「昔話」ばかり。
1970年代に青春時代を過ごした人は、思わずニヤリとする内容でしょう。
もちろん、わからない世代の方でも十分楽しめます。

(10月13日読了)

【不純文學交遊録・過去記事】
♪ずいずいずっころば〜し



九つの殺人メルヘン
posted by 【電脳呆人】不純総合研究所 at 19:45| Comment(0) | TrackBack(1) | 文学・小説交遊会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年08月17日

陰陽師・明智光秀

天下統一を目前にした織田信長が、明智光秀の謀反に遭って生涯を閉じた本能寺の変は、その真相をめぐっていまだ議論が絶えません。

ふと何か変わった小説が読みたくなり、当blogで何度か紹介した神道・陰陽道研究家の戸矢学氏が、小説も書いていたことを思い出しました。
彼の作品の主人公は明智光秀。智略に優れ有職故実にも通じた光秀は、実は天才的な陰陽師だったという物語です。
一介の浪人に過ぎなかった光秀の前半生は、謎に包まれています…



天眼 戸矢学 著

ときは今 あめが下しる 五月かな
これは光秀が、本能寺の変の決意を詠んだ歌だと言われています。
「時」はチャンスというだけでなく「土岐」、つまり土岐氏(清和源氏で美濃国守護)の末裔である明智光秀が天下を取るという意味が込められているとの解釈です。

戸矢氏が描く光秀は、東漢(やまとのあや)氏の出身となっています。
東漢氏の祖は渡来人・阿智使主(あちのおみ)です。蘇我氏に仕えて崇峻天皇を暗殺した、東漢直駒(やまとのあやのあたいこま)が知られています。光秀の豊かな教養は、渡来人技術者集団の秘伝に由来するとの設定です。物語において光秀は、まず朝廷の陰陽寮に出仕する「阿智桃丸」という名で登場します。

明智光秀は山崎の戦いで死なず、僧侶・天海となって徳川家康のブレーンを務めたとの伝説があります。
本書も「光秀=天海」説に基づいています。小説等でよく使われるモチーフであり、目次にも書かれているので、ネタバレのうちには入らないでしょう。

さて物語の読みどころは、やはり本能寺の変へと至った真相です。これまで怨恨説、野望説、黒幕説などが唱えられてきました。
個人的な怨恨のエピソードは後世の創作の疑いが強い一方、計画的であったにしては余りにあっけない光秀の最期。
戸矢氏はどう描いたのか、これは読んでのお楽しみ。決してぶっ飛んだ動機ではなく、過去に提出された説を踏まえています。

本作品のどこまでを史実として、どこからをフィクションとして書いたのか、非常に気になる一冊です(もしかして全部?)。

(8月16日読了)

【不純文學交遊録・過去記事】
邪馬台国は、ここにある。
消えた(消された?)神様
posted by 【電脳呆人】不純総合研究所 at 12:22| Comment(2) | TrackBack(0) | 文学・小説交遊会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年08月11日

名探偵「星の君」

私がこれまで交遊したミステリ小説で、最も独創的かつ最も許せないトリックを用いた作品は、小森健太朗氏の『ローウェル城の密室』です。
少年と少女が中世ヨーロッパを描いた漫画の世界に入り込み、王城で起こった密室殺人事件に遭遇するというもの。史上最年少の16歳で、江戸川乱歩賞の最終候補作となりました。
小森氏は東京大学卒。ミステリ作家としては寡作な部類に入るのでしょうが、神秘思想に造詣が深く翻訳書もいくつか出しています。

『ローウェル城の密室』には、知を司る「星の君」なる女性が登場し、延々と密室講義を繰り広げます(実際に作品で用いられたトリックは、密室講義が全く意味をなさない「独創的」なものでしたが…)。
その「星の君」を彷彿とさせる人物が、探偵役を務める作品が『星野君江の事件簿』です。



星野君江の事件簿 小森健太朗 著

7つの事件が収められた短編集。
チベット、インドを舞台にした事件では、異国の風土ならではのトリックが登場します。
抜群の推理能力を発揮して真相に到達する星野君江嬢ですが、事件は彼女のあずかり知らぬところで解決している…というオチがたびたびあって、笑えます。

本書には、実際に小森氏が遭遇した不思議な出来事に基づいた作品が含まれています。
池袋駅近くのトイレで、一時間半以上にも渡って同じ位置で立ち続ける男子中学生。誰かを見張っているのかと思いきや、その位置から外の景色を見ることはできず、トイレの外から彼の姿を確認することもできません。小説の結末は、小森氏の想像です。
1994年頃の出来事だそうです。小森氏はより合理的な解決案、あるいは事の真相を知っている方を募集しています。
みなさんも考えてみてはいかがですか?

(8月11日読了)
posted by 【電脳呆人】不純総合研究所 at 23:05| Comment(0) | TrackBack(0) | 文学・小説交遊会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。